監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、 ガイ・ピアース
※第83回アカデミー賞作品賞
『英国王のスピーチ』、観ました。
幼い頃からずっと吃音に悩んできたジョージ6世。そのため内気な性格だったが、
厳格な英国王ジョージ5世はそんな息子を許さず、さまざまな式典でスピーチを
命じる。ジョージの妻エリザベスは、スピーチ矯正の専門家ライオネルのもとへ
夫を連れていくが……。
観終わって、チャップリンの『独裁者』が頭に浮かんだ。両作品共、物語の
背景に第二次大戦があり、主人公の長いスピーチで完結する。『独裁者』が
ナチスドイツの軍人目線で描かれたものだとすれば、この『英国王の~』は
イギリスの王族目線で描かれている。両者には約70年のタイムラグがあるが、
ある出来事をひとつの通りを挟んで、こちら側とあちら側から見た“表裏の
関係”だ。未見の方のため、補足させて頂くと、『独裁者』は大戦中、名も無き
ユダヤ人の理髪師が、時のドイツ皇帝に間違えられ、あれよあれよと国の
最高位まで登りつめていく物語だ。一方、この『英国王の~』は、生まれながらに
伝統ある英国王室の血を引く主人公が、吃音のため周囲から冷たい目に晒され、
転げ落ちるように(主治医からは“対等の身分”とまで言われ)失墜していく。
そして、最終的には両作品共、お鉢が回ってくるが如く、主人公が本来自分の
役回りでない大役を任せられ、一世一代の大スピーチを打って出る訳だが、
その内容が対照的だ。皮肉にも、そこで『独裁者』の皇帝は「戦争はもう終わりに
しよう。皆が助け合い、争いのない世界に変えていこう」と言い、片や本作の
英国王は「これより戦いに突入する。互いが力を合わせ、この困難を乗り越えよう」と
演説する。。。しかし、考えてみれば、そうなのだ。この英国王の言う通りだ。
今現在、確かに国家間が争う“直接的な戦争”の脅威は去ったが、代わりに
様々な諸問題が複雑に絡み合い、この世界のあちらこちらに山積している。
絶えない紛争と宗教問題、大国間同士による覇権争い、そして、長引く不況……、
我々はそれらの、出口が見えない問題に対して、正面から戦いを挑まなくては
ならないのだ。“世紀の6分間”とまで言われた『独裁者』のそれに対して、
この英国王のスピーチにサプライズはない。更に、そこで彼はライターの書いた
文面を“ただ間違えずに”読むだけだ。しかし、その一語一句が深く心に
染み渡り、これほどまでに感動的に感じられるのは何故だろう。それは、
一人の身分ある男が、紆余曲折を経験し、逃げることなく困難に立ち向かい、
それを克服した姿があったからではあるまいか。最後に、本編中にも引用された
“ある有名な一文”をもって本レビューを締めくくる。
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。
どちらが気高い心にふさわしいのか。
非道な運命の矢弾をじっと耐えしのぶか、
それとも怒涛の苦難に斬りかかり、戦って相果てるのか。
死ぬことは――眠ること、それだけだ。
眠りによって、心の痛みも、肉体が抱える数限りない苦しみも、
終わりをつげる。それこそ願ってない最上の結末だ。
死ぬ、眠る。
眠る…、おそらくは夢を見る――そう、そこでひっかかる。」
W・シェークスピア『ハムレット』より
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