肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『白いリボン』、観ました。

2012-01-17 19:55:04 | 映画(さ行)

監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:クリスチャン・フリーデル、レオニー・ベネシュ、ウルリッヒ・トゥクール、 ブルクハルト・クラウスナー
※第62回カンヌ国際映画祭パルム・ドール
※第67回ゴールデングローブ賞外国語映画賞
※2010年キネマ旬報ベストテン第4位

 『白いリボン』、観ました。
1913年夏、北ドイツのある村。張られた針金が原因でドクターが落馬したのが
発端だった。翌日にはその針金が消え、小作人の妻が男爵家の納屋で起きた
事故で命を落とす。秋、収穫祭の日、母の死に納得できない息子が、男爵の畑の
キャベツを切り刻む。その夜、男爵家の長男ジギが行方不明になった。一方、
牧師は反抗的な自分の子供たちに“純心”の象徴である白いリボンを腕に巻かせる。
犯人がわからないまま、不信感が村に広がっていく――。
 長らく今日のこの日まで、ミヒャエル・ハネケ監督に対する苦手意識(?)もあって、
この映画の鑑賞を見合わせていた。更に、モノクロ映画であり、2時間をゆうに
超える上映時間(144分)も躊躇(ちゅうちょ)させた要因だ。しかし、いざ覚悟を
決めて観てみれば、時間の長さも、重苦しいモノクロ映像も全く苦になることなく、
一気に映画を観終わった。いや、その語り口の巧さと濃密な内容もさることながら、
映像の素晴らしさと技術の高さにも魅了されることしきり。中でも、ダンスシーンの
流れるようなカメラワークは、魔法のよう。また、モノクロにしたことで強調された
陰影部分が“心の闇”となって浮かび上がり、“人間の本性”をあぶり出すことに
成功している。恐るべし、ミヒャエル・ハネケ。他の作品はともかく、この映画だけは
素直に認めざるを得ない。評判に違(たが)わぬ傑作だ。
 子を持つ一人の親として、身につまされる想いがした――。同時に、いま現在、
社会的立場にある者として、深く考えさせられた――。映画は、ミステリー形式で
犯人捜しの要素を含んではいるが、主題はそこではない。一見、平穏そうに
みえる村も、その裏側に回れば人々の心に“不満”が根付き、“嫉妬”や“妬み”が
渦巻いている。《富》とは遠い無縁の場所にあるその村では、聖職者、地主、
医師ら、一部の権力者が強い(絶対的な)発言力を持ち、実行支配しているのだ。
もっと言えば、彼らは“敬意”や“尊敬”を受けてその地位を得たのではなく、村民に
“圧力”をかけて統治しているだけに過ぎない。そして、そこの子供らもまた
彼らの顔色をうかがいながら、不満を胸に隠して暮らしている。“自由”は抹殺され、
その瞳に輝きはない。映画に、それを象徴するシーンがある。神父に強く叱られた
その娘が、大事に飼っていた(神父の)鳥を殺す場面だ。思うに、神父にとっての
娘は、“鳥かごの中の鳥”と同じだ。鳥かごという圧力を掛けて、手元に置いている
ペットと何ら変わりはない。翼はあっても、飛べる空がない。自由がないのだ。
娘がその鳥を殺したのは、「自分は父のペットにはなりたくない」という“心の叫び”
だったんだろう(涙)。このレビューも終わりに近づいたが、ここではあえて犯人の
名は出さないでおく。それについて述べたところで、無意味だからだ。ひとつ
言えることは、《白いリボン》は“純心”の象徴なんかじゃない。“子供の、自由な心を
縛る重い鎖”だ。そして、がんじからめにされた心は、行き場を失う‥‥。これは、
遠い時代の遠い国で起きた小さな村の物語だが、現在の我々にも至極身近で、
不変のテーマを扱った大きな問題だと思う。

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