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『数学嫌いな人のための数学 - 数学原論』 小室直樹

2007年07月07日 | 科学

 

数学嫌いな人のための数学.jpg


“数学の本質は論理である!” と帯にあります。副題が数学原論。私は “数学嫌いな人” ではなく、むしろ好きな方ですが、小室直樹氏の名前にひかれて読んでみました。

以前、『人を作る教育 国を作る教育』 の記事の中で触れましたように、小室氏のことを日本一頭が良いと、竹村健一氏が評していました。確かに ウィキペディア でその経歴を読むと、なるほど勉強好きなんだなぁと感心します。

 ⇒ 小室直樹(Wikipedia)


本書では “なぜ数学を学ばなければならないのか” ということなどを説明しています。

日本語は曖昧な言語だと言われますし、日本人には数学嫌いが多いとも聞いたことがありますが、数学ができない国民がこれほど科学技術を発展させられるとも思えません。“和算” という伝統もあり、偉大な数学者を輩出していますし、学力低下が言われる現在でも、数学オリンピックで、日本人の生徒たちは活躍していますよね。


小室氏は、数学のパワーがどれほどすごいものなのかを理解していないために日本人は中国人や韓国人と論争できないと語っています。日本人が理論を使うのがヘタだということです。

私は日本人が理論を理解していても、それを説得に使うとか、直接ぶつけるというディベートのような習慣が欠如しているのではないかと思っていますが、どうでしょう。氏は、ゆとり教育の名のもとにさらに数学的論理を学ぶ機会が減少することを嘆いてもいますが、その通りですね。  


そもそも数学は神との対話、論争のために生まれた学問であり、ユダヤ教を持つイスラエルの頑民が生んだのだそうです。ご存知でしたか、こんな数学史。

 “神は存在するのか” その一点から論争は始まったというのです。その時、“もし神が存在しないのなら” という仮定を用いて現実の矛盾などを指摘。結局、神が存在することを民衆に納得させた。つまり背理法です。こんなことから本書は始まります。


以下が目次です


 数学の論理の源泉―古代宗教から生まれた数学の論理

 数学は何のために学ぶのか―論理とは神への論争の技術なり

 数学と近代資本主義―数学の論理から資本主義は育った

 証明の技術―背理法・帰納法・必要十分条件・対偶の徹底解明

 数学と経済学―経済理論を貫く数学の論理



このあとはアリストテレスの論理学から日韓関係のとらえ方、ケインズの経済学に至るまで、数学の応用範囲を広げて語っています。数式はほとんど出てきませんので、数学の専門知識は必要ありませんが、易しいというわけではありません。

世の中のしくみやできごとを数学的(論理的)にとらえるという習慣の有用性を語っているのですが、本書の作り方自体、論理的というより、エッセイ風でもあり、会話が突然入ったりしています。繰り返しもあったり、別に読みにくくはないのですが、体系的ではなく、非論理的だなぁ~と思った次第です(笑)。


本書とはおもむきは異なるのですが、以前ご紹介した 『数学ができる人はこう考える(シャーマンスタイン)』 も数学の有用性や不思議さを魅力的に取り上げていました。また、野矢茂樹氏の 『論理トレーニング101題』 も論理学をわかりやすく教えてくれる大変貴重な一冊です。

フェルマーの最終定理(サイモンシン)』 や 『博士の愛した数式(小川洋子)』も数学に対するロマンにあふれた名作でしょうね。
 
逆にいくら論理的に考えても、株は儲からないよ、理不尽だよということを 『天才数学者、株にハマる(ジョン・アレン・パウロス)』 は示してくれました(笑)。


また直接、数学云々ということではなくても、日本人全体に “論理的思考” が欠けていると指摘する本として、『なぜ勉強するのか(鈴木光司)』 プロ弁護士の思考術(矢部正秋)』 『人生と投資のパズル(角田康夫)』 などを取り上げましたが、いずれも私には忘れられない一冊です。


本書は、これらの本のどれとも異なり、世の中は数学が支配しているとでも語っている印象です。我々が日々直面する問題は、数学のようにはすっきり答えの出ないものがほとんどですが、見方を広げるとそこには数学的論理が存在しているというような感想を持ちます。

本書は今上に挙げたいくつかの本同様、数学嫌いな人どころか、算数・数学の先生などにもぜひお読みいただき、授業の中でネタに使っていただければ、生徒をぐっとひきつけられると思わせる一冊でした。


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数学嫌いな人のための数学―数学原論

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
街中の案山子さん (VIVA)
2007-07-10 14:28:09
そんな経験したことない(笑)。きっと勉強不足ですね。がんばります!
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私の場合・・・ (街中の案山子)
2007-07-10 10:35:40
国立大学は1期、2期の頃。だから共通一次もセンター試験もなく文科系でも数学も理科も記述式。そして社会科は2科目でした。
その日、数学の試験問題が次々に解けるのです。大問5問中4問半が、明らかに正解と思われる解にたどり着くことができました。一問一問クリアするごとに、身体が軽くなっていく感覚、今でも覚えています。
前日は宿泊所で熱が出て、嘔吐もしており、体調が最悪だったのに…。知恵熱だったようです。
ということで、最高に気分良い思い出が残っています。
でも、進路は文科系…、合格には役立ったけれど、そこまででした(笑い)。
ウン十年前のお粗末な話です。
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Danさん (VIVA)
2007-07-08 11:56:43
そうですね、昨日のビジュアル英文解釈で触れたとおりで、英語も数学も高校で一気に内容が増えて、しかも高度になり、まるで別の科目になったかのように難しくなりますからね。私も一気に分からなくなりました(笑)。

中学受験の算数は場合によってはそれ以上にむつかしそうなのがありますからね。普通の大人はできないように作られております。はい。
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数学ができるように (Dan)
2007-07-07 23:25:44
数学が出来る方を心から尊敬します。私はいつから数学が出来なくなったのだろう・・・と昔を振り返ってみると、そう、高校生になってからです。1年生までは何とかついていけました。2年生、かなり勉強しないと大変な状況に。3年生、数Ⅲで玉砕・・・。共通一次の数学の点数なんて目も当てられない!そういう私ですが、出来ればもう一度、数学をきちんと勉強したいと思っています。数式を見て、時には「美しすぎる」と感じます。この本も興味深いのですが、今の私にはまだ難しすぎるような・・・。数学嫌いではないのですが。数学ができるようになりたい!と思いつつ、息子の解いている算数の問題でさえ、もうお手上げ状態です。とほほ。
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