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『人をつくる教育 国をつくる教育 -いまこそ、吉田松陰に学べ!』小室直樹、大越俊夫

2007年04月04日 | 教育関連書籍


人をつくる教育 国をつくる教育.jpg


安倍政権が発足してほぼ半年、支持率も低下してしまい、どことなく表情も暗い気がします。まだ大きな失政はないと思うのですが、さすがに “ナントカ還元水” の松岡農相はまずい。それこそ “なんとか”してもらいたいです。


他にもイラク戦争を批判した久間防衛庁長官との連携問題や、柳澤さんの失言だのなんだのと閣僚の問題が次々と報じられて、再浮上のきっかけをつかむのが難しいようです。

ただ、今月は都知事選をはじめとした統一地方選挙がありますし、中国温家宝首相が来日しますからそれも大注目だし、自身の訪米、ブッシュ大統領と初の日米首脳会談もあります。そして何といっても、教育改革!しっかりやっていただきたい。


その安倍氏が小泉政権で自民党幹事長に大抜擢された時、初の衆議院の代表質問で緊張しつつ述べたものの中に、明治維新の志士、そして故郷長州の先輩である、吉田松陰の言葉、「天下の大患はその大患たるゆえんを知らざるにあり」がありました。

“世の中の一番大きな問題は、その大きな問題があることを知らないことにある” というような意味ですが、覚えておられますか。その後もいろいろなところで引用しているようです。


吉田松陰、どんな印象をお持ちでしょう。本書の副題も「いまこそ、吉田松陰に学べ!」です。


著者の小室直樹氏はいわずと知れた大学者で、あの宮台真司氏が尊敬する師であり、確か竹村健一氏は小室氏を 「日本で一番頭が良い」 と評していたと思います。実際に本書でも、他の著作を読んでみても、底なしの知識を持っているなぁと感じます。

大越俊夫氏は不登校や中退生を相手にした塾を運営しています。本書は大越氏が運営している塾の生徒やその父母たちを前に、小室氏や、大越氏が語った教育論が紹介されています。


さて、松蔭のどこを学ぶのでしょう。松蔭自身は尊皇攘夷思想の持ち主で、安政の大獄で、29歳で処刑されたという事実関係だけだと、塾の生徒たちに何を強調するのだろうと思って本書を読みました。

吉田松陰.jpg


松蔭自身はいわゆる天才肌の少年だそうですが、典型的な貧しい下級武士の出で、普通、国家のことなどを考えるような立場ではなかったようです。

ですが、ご存知のように、松下村塾を作って木戸孝允高杉晋作久坂玄瑞伊藤博文山県有朋など、維新の中心人物を多数排出しています。しかも彼らはもともとエリートとして集められたわけではないということですが、それが松蔭の教育によって明治の日本を導くような傑出した人物に成長しました。


どうしてこんなことができたのか。著者によれば、松蔭の教育の姿勢は、相手がたとえ、10歳の子どもであれ、病人であれ、貧しい人であっても、命がけで教育をするというものだったそうです。宗教では常に奇跡が語られるように、教育というのも奇跡を起こさせるのが目的であると。その人物を変えるという奇跡です。


ペリーの黒船に手こぎボートで乗り込み、渡米を懇願するも失敗、結果獄中につながれてしまうのですが、そこでも囚人相手にまた看守にまで講義をします。逆に相手の得意なものを見つけると、今度は自ら生徒になって学んだそうです。


本書での、黒船に乗り込んだ事件に対する説明は「日本のために命をかけた」。無断で国外に出ることは死罪に相当することを知っていながら、自分が犠牲になってでも、その文明を吸収しなければ、アヘン戦争で清がそうなってしまったように、日本も欧米にずたずたにされてしまうと恐れたわけですね。


当時が日本にとっての危機であることを明確に意識した行動だと指摘します。そして現在の日本(2002年の出版)も危機。にもかかわらず、教育界だけでなく官僚、そして政治家にも、松蔭のように命がけで日本を守ろうとする人物が少ないという苛立ちのようなものを感じます。


経済が不振で、たとえ銀行がつぶれようが、大企業が倒産しようが、教育さえしっかりしていれば、日本は大丈夫だが、肝心の教育が危機に瀕しているという認識です。戦後の日本の問題を典型的に表わすのは、アノミー(無秩序、無連帯、無規範)だと。


アメリカは日本に戦争で勝ったが、日本人を皆殺しにしたり、奴隷にしなかったどころか天皇すら残した。そのかわり二度と戦争させないように、徹底して連帯を壊した。戦前に迫害されていたマルクス主義者たちを利用したら、日教組やマスコミが予想以上に頑張って、驚くほどうまく行ったという分析です。


戦前の教育を受けた人々の数が減って、いよいよ日本に連帯がなくなってしまった。誰も命がけで、他人のために、国のために何かをしなくなる。そういう国は滅びるのであるという歴史観です。現在のチベットを救える人がいないように、日本に何かあっても、国連か何かが助けてくれるというのは幻想だと言います。


大越氏は “不登校になったら赤飯を炊きなさい” とまで言い切ります。子どもに学校のいかがわしさを感知できるだけの能力があることの証明だというわけです。学校なんか行かなくても良い。やりたいことを見つけたら、その歴史を学び、自分の存在理由を確認し、とことんやって下さいと、親と本人に伝えます。


命がけで、教育をし、命がけで学ぼうという姿勢こそ、今の日本に必要だということです。厳しい意見ですね。私も、塾で働いておりますので、本当に “命がけかどうか” 大いに考えさせられ、参考になりました。

人をつくる教育 国をつくる教育

日新報道

詳  細



P.S. 松陰先生が弟子たちによく言ったのは、『 暇があったら本を読め!』 だそうです。

         ここでは、ちょっと軽いけど(笑)、『 本を読もう!VIVA読書!』 なんです。



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『人をつくる教育 国をつくる教育 -いまこそ、吉田松陰に学べ!』小室直樹、大越俊夫
日新報道:319P:1680円

 



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (milesta)
2007-04-04 17:19:33
この本は知りませんでした。読んでみたいです。

産経新聞で連載中の『ひとすじの蛍火』お読みになっていますか?吉田松陰の伝記です。
本当に人を惹きつける魅力と、人を見る目と、人を育てる力があったのだなぁと思います。
私は女性ですので、教え子への言葉だけでなく、妹千代への助言にも心を打たれました。
http://www.sankei.co.jp/culture/bunka/070220/bnk070220000.htm

人間は一人でできることは限られているけれど、吉田松陰のように人を育てたら、世の中を変えることもできるんですよね。教育がうまくいけば、国も良くなるに違いありませんね。


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milestaさん (VIVA)
2007-04-04 20:30:04
貴重な情報ありがとうございました。まったく知りませんでした。これだけでも記事をUPしたかいがあったというものです(笑)。

本書ももちろん興味深いからこそ、紹介したのですが、生徒や父兄と向けですしから、教育の話が多いですし、対話形式ですから、体系だったものではないのです。生徒たちをはげましながら、わかりやすく話している印象です。
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Unknown (tetu)
2007-05-09 09:05:31
本読んでみました。流されず自分の生き方に、まっすぐな人は、すがすがしいです。
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tetsuさん (VIVA)
2007-05-09 12:47:35
おっしゃるとおりですね。流されないということ、自分で考えるというのは、簡単そうで、実はかなりの精神力と知力が必要ですね。

コメントありがとうございます。
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