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緊急搬送について考えた夜。in ザンビア

2013年06月26日 | TICO ザンビア
すっかりご無沙汰してしまいました。
ザンビア事務所の瀬戸口です。

日本は空梅雨のようですね
こちらは朝晩ぐっと冷え込み、ヒーターや湯たんぽが大活躍です

さてTICOザンビア事務所では安全な妊娠出産をサポートする事業を実施しています。

出産は新しい命が生まれる素晴らしい出来事なのですが、
お母さんと赤ちゃんによる、まさに命がけの協働作業でもあり、
非常にリスクを伴う状態でもあります。

だからこそ、安全な妊娠出産を支援するスローガンは
No woman should die while giving life
(命が生まれるときに、命を落とす女性がいてはならない)
と謳っています。

特に異常もなくスルっと生まれて来る赤ちゃんがたくさんいる一方で、
すぐに救急車や一般車両が利用できる状態にないザンビア(特に農村)では
危険な状態に陥ってしまうと、それが母子の生死に直結してしまうのです。


昨日、事業地であるモンボシでの仕事を終え、
帰宅の途につきかけた私たちを呼び止めるヘルスポストスタッフ。

「赤ちゃんが出てこない」

まだ転院を判断するには情報が足りないタイミングではありましたが、
この日のヘルスポストには熟練スタッフが不在で、若手スタッフしかいなかったため、
万一に備えて私たちの帰宅途中にあるヘルスセンター(※)に送り届けることにしました。
※ヘルスポストよりレベルが一つ上の医療機関

ヘルスセンターまで車で40分。
無事に送り届け、経験豊かな助産師に対応してもらうことが出来たのですが、
実はそのヘルスセンターの分娩室には先客が・・・。


前回、帝王切開で出産した妊婦さんです。
本当はヘルスセンターではなく病院で出産しなければならないのですが、
なぜだかヘルスセンターに来てしまい、もう子宮口も完全に開いた状態。

同伴の家族に、ヘルスセンタースタッフが
「前回、帝王切開で産んでるんだから病院に行かなきゃだめじゃない!」と
口ぐちにお説教をするものの、時すでに遅し。

いつ生まれて来てもおかしくない
でも、赤ちゃんが無事に出てこられるか分からない

という切迫した状態に、私たちは再び立ち会ってしまったのです。

病院と私たちの帰路は正反対の方向です。

本来であれば、その病院から救急車を要請する(*)か、
患者自身が車を手配せねばなりません。
*ヘルスポストに救急車はありません。

車を手配するにはかなりのお金(数千円)がいるし、
救急車がすぐに駆け付けたとしても
患者が病院にたどり着くまでには倍の時間がかかります。
(病院→ヘルスポストで患者ピックアップ→病院へ搬送という経路になるので)


放ってはおけず、病院まで送り届けることにしました。
私たちの車なら40分で病院に着きます。
ぎりぎり間に合うだろうという助産師の判断でした。



そして病院までの道中・・・・。
なにやら人だかりを発見。

横転しているバス。

交通事故です。

警察が状況検分と救助活動を実施しているところでした。


徐行運転で現場を通過しているところを呼び止められ

「警察の車がいっぱいだ。軽傷の患者を病院まで乗せて行ってくれないか。」

もう、乗りかかった船です。
さらに軽傷患者を3人乗せて病院へひた走ります。
このとき1台しかない病院の救急車は、事故現場と病院をピストンで患者輸送していました。



やっとの思いで病院に到着し、患者をそれぞれの科に送り届けて任務完了。
すっかり日は落ちて、空には満月がのぼっていました。


私たちが昨日、モンボシに行っていなかったら
変わっていた運命があったのかもしれません。
緊急搬送の重要性をまさに目の前につきつけられた一日でした。


文責:ザンビア事務所(瀬戸口)