* ワークマンという企業のスゴサは30年ほど昔の,現役の時代にボクが注目した企業である、
ユニクロの今年度の売上は2兆円を突破する見込み。対してワークマンの年商見込みは800億円と20分の1程度しかない。ZOZOにしても流通額は2800億円。2社にとってワークマンは相手にもされない異業種の小さな会社といってもいい存在といえる。
しかし、それでも私はワークマンが実店舗とネットの両業界にとって厄介な伏兵企業になっていくことを予想している。
その根拠はワークマンが新たに展開する『ワークマンプラス』という店舗がとても“したたか”な戦略をとっているからである。
アウトドア、スポーツユーザーが「作業服」を買う
「調べてみたら来店客の2割が一般客だったんです」
そう話すのは一般客向けのカジュアルウエアを販売する新業態『ワークマンプラス』を取り仕切る土屋哲雄常務。3年ほど前にワークマンの来店者を調べたところ、作業員以外にもサラリーマンや女性客が増えていたことが判明。
さらに調査を進めてみると、作業着をアウトドアウエアやスポーツウエアとして購入している人が増えていることが分かった。
「作業着の丈夫で安くて長持ちというイメージが定着し始めたんだと思います。これはチャンスだと思って一般客向けの商品を強化することにしたんです」
手始めに地味な作業着に派手目な色をラインナップ。加えてデザインをスタイリッシュにしただけで作業着が一般客にいきなり売れ始めた。
「うちの会社は作業着ばかり作ってきたから、アウトドアウエアやスポーツウエアの専門家がいなかったんです。しかもリサーチするスタッフもいないから、市場で何が流行しているのかも知る術がありませんでした」
しかし、ここからがワークマンの凄いところ。自社の商品がどのようにお客様に使われているのかをネット検索して調べ始めた。すると、ワークマンの作業着をアウトドアやスポーツウエアとして使っている人たちのSNSやブログがあることを発見。
土屋常務はその人たちに声をかけてワークマンに来てもらい、作業着をどのようにリニューアルすれば専門メーカーの作った商品に勝てるのか徹底的にヒアリングを行ったのである。
しかし、ワークマンのようにブロガーやインフルエンサーの声を商品開発にフィードバックできるほど、今の専門メーカーに柔軟性はない。それが異業種から参入するワークマンの強みと言える。
自社の商品がどのようにお客様に使われているのかをネット検索して調べ始めた。すると、ワークマンの作業着をアウトドアやスポーツウエアとして使っている人たちのSNSやブログがあることを発見。
土屋常務はその人たちに声をかけてワークマンに来てもらい、作業着をどのようにリニューアルすれば専門メーカーの作った商品に勝てるのか徹底的にヒアリングを行ったのである。
ブロガーやインフルエンサーの意見を参考にして作ったウエアは次々にヒット商品としてブレイク。消費者目線の商品が売れるのは当たり前といえば当たり前。しかし、ワークマンのようにブロガーやインフルエンサーの声を商品開発にフィードバックできるほど、今の専門メーカーに柔軟性はない。それが異業種から参入するワークマンの強みと言える。
さらに一般客向けの商品の相乗効果として、本職の作業着のほうも好調に売れ始める。
従来であれば作業現場では地味な作業着を着るのが常識。しかし、古いしきたりを貫き通していると若手スタッフが「格好がダサい」と仕事をすぐに辞めるようになってしまっていた。
そのような人材不足の背景もあり、近年の作業現場ではスタイリッシュな作業着が増えてきている。それがワークマンの一般客向けにデザインしたウエアの販売時期と重なり、若手の作業員が好んでワークマンのウエアを着るようになったのである。
作業着が一般客に売れ始めて、一般客向けに作った商品が作業現場の人たちに売れ始める――この相乗効果によってワークマンの一般客向けの商品は初年度売上30億円から60億円へと倍増。今年度は120億円の売上を見込むほどの勢いで急成長している。
今年の9月、ワークマンが一般客向けの商品を揃えた店舗『ワークマンプラス』がららぽーと立川立飛にオープンした。
そこには常識外れな低価格商品がズラリと並ぶ。防寒機能付きのアウトドアウエアが3900円、ストレッチ素材のスポーツウエアが1900円、軽量シューズが980円と、同じららぽーとのフロアにあるアウトドアメーカーやスポーツウエアメーカーの半額から10分の1程度の販売価格で商品が販売されているのである。
もちろん専門メーカーが開発した商品のほうが性能的には上回る。しかし、カタログのスペックを見て、さらに実際に商品を手に取ってみると価格差ほどの性能差はないように思われる。また、実際に試着もしたが作業着のようなゴワゴワ感はなく、10倍の値段がつく専門メーカーのウエアと比較しても遜色はないレベルに仕上がっている。
そして何より感心したのがデザインだ。作業着のようなモサッとした無骨な雰囲気はみじんも感じられず、シルエットは非常にスマート。普段着として着用してもまったく問題がないレベルである。
土屋常務に尋ねたところ、海外の協力工場の大量生産によるコストダウンに加えて、ワークマンならではの利点があることを教えてくれた。
「一般的なアパレルメーカーはデザインが古くなるとすぐにセール販売をして無理矢理売ろうとするんです。しかし、我々は取扱い商品があくまで機能性を重視した作業着。デザインが多少古くなったからといっても翌年もしっかり売れてくれます。
だからワークマンはセール販売に頼ることをしないから、その分の経費や手間を商品の価格に反映させて圧倒的な低価格商品を実現することができるんです」
ワークマンの4~6月期の決算では売上高210億円に対して利益は30億円。約14%の利益率。これはユニクロの利益率13%にも匹敵する数字である。この低価格で売ってもしっかりした利益が出せる価格競争力が、いずれ既存のアパレルメーカーの脅威の存在になっていくのではないかと想像してしまう。