カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

亜樹

2013年03月30日 | 京都
「そしておそらくは、此れが最後の、牡蠣フライ。」

牡蠣に始まり牡蠣に終わった此の冬の外食、と言う程ではないにせよ、シーズンの終わりに近づく程に、其れは頻繁になり、毎週個人的な休みの度、其れ毎に、先ずは一食、牡蠣料理を戴いていた、其れはまったく言い過ぎではない、大袈裟ではなく、およその事実である。

そしておそらくは、これが今季最後に戴く牡蠣フライになるであろう、此の洋食屋、亜樹に到着した訳であるが、通常通りであれば営業時間帯であるにもかかわらず、その夜、どうしたことか、其の扉は閉じられたままである。

張り紙を見ると、今夜は19時からの営業であるとのこと、つまり、今日の夜営業は正味一時間強であるということになる、故に、其の客入りも知れたものだろうと思いきや、実際オープンして数分の後には、相席も含めて其の席は全て埋まってしまい、外に数名の待ちまで出る有様である、むしろ平日の四条烏丸という立地の人通り、恐るべしである。

其の客層はと言えば、おそらく其のおおよそが独り客であり、仕事帰りのサラリーマン、OLの類であり、もしかすると学生が一人、そして我々夫婦がひと組という、よく見れば、場違いとさえ気付かされる其の状況であった。

そう、此処はきっと、人伝に噂を聞いて訪れ、其の常連になるような心積もりのない人物が、興味本位にのこのことやって来る処ではおよそないのだ、そのように感じられ、況してや京都観光の序でに来るべき処では勿論ない、そのように思える。

其の常連で店が混むのは仕方のないことだとしても、食通気取りの人物が、其の査定のようなつもりでじろじろと覗いて、彼らの食事の邪魔をするようなことがあっては決してならない、きっと此処は、温かい家庭料理に今夜はどうにもありつけそうもない、そんな人たちの、数少ない其の日最後の憩いの場なのであろう、其のやさしい風味の料理の数々は、まさに心癒される、何処までも中庸な、どのような主張も強制もない、そんな味付けであった。

中でもあえてと注文してみた海老ライスは、本当にどのような心持ちをも邪魔することのない、奥床しく仄かな味付けで、だがしかし、其れを不足に感じさせるようなこともおよそなく、何なら卓上のソースをたっぷり滴らせて戴いても許される、そんな労わりの心に溢れている、其れはきっと気のせいではないだろう。

ハンバーグも、ポーク・ソテーも、クリーム・コロッケも、そして牡蠣フライさえも、其の別なしに全てがやさしく、何ひとつ否定することはない、そんな安らぎを心に抱かせてくれる。

やはり此処は、決して余所者が其の邪魔をしに来てはならない、まさに独り者にとっての、擬似家庭料理、そのような風情の味、そして雰囲気を味わわせてくれる、稀有で貴重な場処なのではないだろうか。

亜樹洋食 / 四条駅(京都市営)烏丸駅大宮駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5