カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

月餅家 直正

2011年05月18日 | 京都
「凝視、必至。」

前衛芸術的な先鋭性を、その外面に表出しつつ、
実は材料が何であるのか、それがおおよそわかる我々は、
その風味が、おおよそ伝統的なものであろうことも、
予め理解することが出来る。

そしてその期待は裏切られることなく、
品の良い甘さの漉し餡によって、上質を証明され、
大量生産のそれとは比較にならない、
満足、納得の結果を、心静かに我々は得ることが出来る。

あえて、同じ和菓子で、
食べ物としての質的な満足度を言うならば、
例えば、桂離宮の南側にある、中村軒の質実さにも劣らない。
しかし、それにプラスして、
その外見は、少々方向性は違えども、
塩芳軒クラスの繊細さを持ち、
しかも、お値段は庶民的に、半額と言っても過言ではない。

塩芳軒の和菓子のデザインが、
やや、美味しそうであること、食べ物であることに、
多少のバイアスがかかっているのと比較して、
此処、直正は、その点、容赦なく、
むしろ、この和菓子が食べられる物であるとは思えない、
この美しい造形物が、食べられる物だなんて、
思いもかけなかった儲けものだとさえ思わせる、
それ程に、デザイン性に、特化している。

しかし、どのような類の物であれ、
得てして、外見の美しさ、その価値を軽んじる風潮のあるこの国で、
やはり、この御店が評価される最も有名な和菓子といえば、
成り行き、わらび餅である。

だが、店内では数少ない、地味な外見のわらび餅は、
例えば、鞍馬口の茶洛で所望すれば、見栄えに頓着する必要もなく、
嫌という程に、その質感のみを味わうことが出来るのであって、
やはり、この御店、直正が、あえて他と比して、
何に突出した御店なのかと問われれば、そのデザイン性に尽きる、
そのように直感されるのである。

都合により、ウィンドーから眺めるだけで、
味わう機会が、もしなかったとしても、
その純粋な造形美、それだけで、
観る者の心を別の世界に連れて行ってくれる、
そんな和菓子が、三条木屋町の高瀬川沿いには、在る。