NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は、毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「ディスカバー!奈良」を連載している。昨日(12/21)掲載されたのは「かぎろひを観る会 宇陀市の万葉公園」、筆者は同会の名物男・雑賀耕三郎さんである。雑賀さんは岐阜のご出身で、今は桜井市阿部にお住まいである。
※写真はすべて雑賀さんのブログ「奈良・桜井の歴史と社会」から拝借
「かぎろひを観る会」は、旧暦11月17日に開催されている。次の「第46回かぎろひを観る会」は、年をまたいで2018年1月3日(水)午前4時から開催される。
さて雑賀さんは私からツッコミが入ることをご承知の上で「ディスカバー!奈良」の記事を書かれているのだが、柿本人麻呂の万葉歌(巻1-48)「東野炎立所見而反見為者月西渡」は、最新の研究によれば、「東(ひむがし)の野(の)にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」とは読まない。
「東の野良(のら)にけぶり(煙)の立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」と読むのである(岩波文庫『万葉集(1)』2013年1月16日刊)。この歌(短歌=反歌)が詠まれたのは、付属する長歌によれば「み雪降る」冬の夜だ。冬の夜にはかぎろひ(陽炎)は見えないし、「かぎろひ」は「燃ゆ」であり「立つ」とは言わない。従って「炎」は「かぎろひ」ではなく「けぶり」(煙=狩猟に関わるのろし)なのである。詳しくは当ブログ記事「野良にけぶりの立つ見えて」をご参照いただきたい。
この話、念のため信頼のおける万葉学者に確かめてみたところ「ああ、あれは岩波の怠慢です。前から(けぶりと)分かっていたのに長年、改版しなかったのですよ」、とあっさり認めておられた。閑話休題。最後に雑賀さんの記事全文を紹介する。
「ひむがしの野にかぎろひの立つみえて かえりみすれば月かたぶきぬ」誰しも聞いたことのあると思う柿本人麻呂の万葉歌です。「かぎろひ」とは、日の出前に東の空が赤紫色に染まる現象です。東の空にかぎろひを見て、振り返れば西の空には月が見える。この歌は旧暦の11月17日に詠んだとされています。
その日に合わせて「かぎろひを観(み)る会」が来年1月3日午前4時から、かぎろひの丘万葉公園(宇陀市大宇陀)で開催されます。早朝から万葉歴史講話が行われ、大きなたき火を囲み、温かいくず湯をいただきながら、かぎろひの出現を待つのです。万葉集と万葉の時代に思いを寄せる新年の朝をご一緒いたしましょう。
[メモ]駐車場として大宇陀地域事務所や阿騎野人麻呂公園が利用できます(奈良まほろばソムリエの会理事 雑賀耕三郎)。
※写真はすべて雑賀さんのブログ「奈良・桜井の歴史と社会」から拝借
「かぎろひを観る会」は、旧暦11月17日に開催されている。次の「第46回かぎろひを観る会」は、年をまたいで2018年1月3日(水)午前4時から開催される。
さて雑賀さんは私からツッコミが入ることをご承知の上で「ディスカバー!奈良」の記事を書かれているのだが、柿本人麻呂の万葉歌(巻1-48)「東野炎立所見而反見為者月西渡」は、最新の研究によれば、「東(ひむがし)の野(の)にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」とは読まない。
「東の野良(のら)にけぶり(煙)の立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」と読むのである(岩波文庫『万葉集(1)』2013年1月16日刊)。この歌(短歌=反歌)が詠まれたのは、付属する長歌によれば「み雪降る」冬の夜だ。冬の夜にはかぎろひ(陽炎)は見えないし、「かぎろひ」は「燃ゆ」であり「立つ」とは言わない。従って「炎」は「かぎろひ」ではなく「けぶり」(煙=狩猟に関わるのろし)なのである。詳しくは当ブログ記事「野良にけぶりの立つ見えて」をご参照いただきたい。
万葉集(1)岩波文庫 | |
佐竹昭広ほか校注 | |
岩波書店 |
この話、念のため信頼のおける万葉学者に確かめてみたところ「ああ、あれは岩波の怠慢です。前から(けぶりと)分かっていたのに長年、改版しなかったのですよ」、とあっさり認めておられた。閑話休題。最後に雑賀さんの記事全文を紹介する。
「ひむがしの野にかぎろひの立つみえて かえりみすれば月かたぶきぬ」誰しも聞いたことのあると思う柿本人麻呂の万葉歌です。「かぎろひ」とは、日の出前に東の空が赤紫色に染まる現象です。東の空にかぎろひを見て、振り返れば西の空には月が見える。この歌は旧暦の11月17日に詠んだとされています。
その日に合わせて「かぎろひを観(み)る会」が来年1月3日午前4時から、かぎろひの丘万葉公園(宇陀市大宇陀)で開催されます。早朝から万葉歴史講話が行われ、大きなたき火を囲み、温かいくず湯をいただきながら、かぎろひの出現を待つのです。万葉集と万葉の時代に思いを寄せる新年の朝をご一緒いたしましょう。
[メモ]駐車場として大宇陀地域事務所や阿騎野人麻呂公園が利用できます(奈良まほろばソムリエの会理事 雑賀耕三郎)。