tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

2010今井町並み散歩 回顧

2010年05月30日 | 奈良にこだわる
5月15日(土)と16日(日)、第15回今井町並み散歩(奈良県橿原市)が開催された。本格的に2日間開催とするのは初めてだったが、約3万人(例年は1~2万人)の人波で町は大いに賑わった。
※第15回今井町並み散歩は、5/15~16です!(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/417404da2d821814cd9ee286619c267d

今朝(5/30付)の読売新聞奈良版「商店街物語」が、この町と「町並み散歩」を紹介している。見出しは《歴史の町 保存へ情熱 町家600軒 催し2日間3万人》だ。《16日には、町出身の商人で茶人の今井宗久にちなみ、着物や茶人姿の住民ら約30人が町中を練り歩く茶行列や、200店が出店する「六斎市」などがあり、2日間で観光客約3万人が訪れた》。イベントのお手伝いには、町民だけでなく、奈良女子大学の女学生(5人)や、はるばる千葉大学から9人もの学生が泊まり込みでやってきたそうだ。「むかし町」は、若者も引きつけるのだ。


蘇武橋たもとの案内所



「町並み散歩」については、毎日新聞奈良版(5/17付)も報じている。タイトルは《今井町並み散歩:宗久、信長が茶行列》。《国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている橿原市今井町で16日、恒例の「今井町並み散歩」が開かれた。江戸時代の雰囲気を色濃く残す町並みは、多くの観光客でにぎわった》。
http://mainichi.jp/area/nara/news/20100517ddlk29040269000c.html


表千家奈良支部同門会による献茶式(5/15 於:称念寺 撮影は吉田遊福さん)


同 上

《今井町の魅力を多くの人に知ってもらおうと、地元住民らで作る「今井町町並み保存会」(若林稔会長)が毎年開き、今年で15回目。国重要文化財や県指定文化財に指定されている住宅や寺がすべて公開されたほか、室町、江戸時代に月6回開かれていた「六斎市」をフリーマーケットとして再現した》。

《このほか、今井町出身の茶人で、堺で財を成した商人でもあった今井宗久にちなみ、宗久や織田信長、豊臣秀吉などにふんして町内を練り歩く「茶行列」もあり、訪れた人たちは盛んに写真を撮っていた》。


町のそば屋さんも、大繁盛

《今年は今井宗久生誕490年に当たり、15日には称念寺で献茶式や記念講演会を開いた。若林会長は「今井宗久と今井町のつながりが次第に浸透し、充実した行事ができた」と話した》。



私は5/15(土)の1日だけ、このイベントに参加した。午後1時30分から、称念寺本堂で行われる作家・火坂雅志氏の講演会を聞きたかったのだ。同日、このお寺では午前10時から、今井宗久顕彰会と表千家奈良支部同門会による「献茶式」も行われた。

講演会の前に、まずは腹ごしらえ。順明寺の境内では、NPO法人泉北そば打ち普及の会により、「温かい手打ちぶっかけそば」400円が振る舞われていた。この会は、1992年(平成4年)3月、泉北そば打ち同好会として発足、2004年(平成16年)4月にNPO化された。


鮮やかな手つきでそばを切る(泉北そば打ち普及の会)

会の設立趣旨には《中高年の間でそば打ちを趣味とする人が年々、益々、増加してきていますが、高度経済成長時代の真っ只中にあって自己時間を充分に持てなかった人々の目覚めであろうか。そば打ちに限らず登山や旅行や陶芸など多方面で積極的に行動している姿が目立ちます。そばは、「粗にしてぜいたく」という言葉がありますが、作り手と食べ手がともに楽しみ喜び合える時間を共有できることに、そば打ちの特徴があるように思います。そば打ちを通じて仲間づくりと地域づくりを進めることによってより豊かな人格形成を目指したいと考えております》とある。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~soba/


テントの下でそばをいただく

「奈良の会員さんもおられますよ」とのことだったが、柳生や桜井のイベントにも協力されている。大勢のお客を手際よくさばき、ほとんど待ち時間なしでそばにありつけた。


温かい手打ちぶっかけそば(400円)

これは美味しい。吟味されたそば粉を使い、そば打ちの腕前も確かだ。ツユも良い。これで400円とは信じられない安さだ。で、この日、講演会終了後にもう一度ここに戻り、もう一杯いただいた。


称念寺の前で火坂氏に遭遇(トップ写真は、講演会後の火坂氏たち)


琴の生演奏で聴衆をお出迎え

火坂氏は、NHK大河ドラマ『天地人』の原作者として著名だが、今井宗久を主人公にした『覇商の門』も書かれている。Amazonの「商品の説明」によると、この本は《戦国擾乱(じょうらん)の世。無一物の若き今井宗久(いまいそうきゅう)は、虎視眈々と世に出る機会を窺っていた。折しも足利幕府が衰退し、天下盗りの争いも苛烈さを増していた。いち早く火縄銃の威力に着目した宗久は、武将相手の商売で大勝負を打つ。やがて、新進の武術・織田信長の力量を誰よりも先に見抜いた宗久は……。千利休と並ぶ戦国の茶人にして豪商・今井宗久の、覇商への道!》とある。


火坂雅志氏。長身・長髪に着流し姿がよくお似合いだ

90分のお話のうち、今井町や宗久にまつわるお話が60分、あとの30分で、火坂氏ご自身の悲喜こもごもの人生が紹介された。火坂氏が学生時代にサークル「早稲田大学歴史文学ロマンの会」に入られたきっかけや、そこで発見された司馬遼太郎の面白さ。出版者勤務を経て作家として独立した経緯、その後の「生活が苦しいので、次々と小説を書きました。ざっと60冊ほど書きましたが、あまり売れませんでしたね」という暮らしぶり、そして『天地人』が大河ドラマ原作と決まってからの生活の一変…。講演後のサイン会では、たっぷり用意された『覇商の門』が、またたく間に売り切れた。


サイン会には長蛇の列。私が写真を撮っている間に、本が売り切れてしまった

今井町では、銀とき子さんの姿もあった。銀さんのブログ「独語力。」に、当日の様子が活写されている。《今井町町並み保存会会長の若林さんから、「是非着物でいらしてください」とお誘いがあり、着物仲間&旦那とで橿原の今井町に行って来ました!!! 9時半、八木西口に集合して、真っ先に今井まちなみ交流センター華甍へ。『語りの書展』を堪能。墨の独特のかすれと内容にほのぼのしつつ、大和茶をご馳走になりました。お茶菓子も美味しかった♪》。
http://cherry.blog.eonet.jp/tokiko/2010/05/post-dcdb.html


せんとくんの人気は年齢層を問わない


泉北そば打ち普及の会のおじさんも、記念撮影

《尾崎家で、明日の茶行列で使われる衣装をじっくり見て、12時、今井まちや館で茶粥タイム。美味しかった~♪ 最近奈良漬の味を覚えました。食後は、稱念寺境内で、せんとくん撮影会 初2ショット!! お手手つなぎたかったんだ~ 順明寺の呈茶席で 『宗久饅頭』、境内でやっていた 手打ちそばも食べました。茶粥を食べたばかりですが、美味しいのでペロリでした。食べまくりです》。


お抹茶を売る屋台「にない茶屋」


銀とき子さんの横で撮影。向かって右から、称念寺ご住職、若林さん、銀さんのお連れさん

《13時半。稱念寺に戻って、天地人原作者の 火坂雅志氏講演会。とっても面白い内容で、早速書籍を購入してサインをもらいました♪ 稱念寺の大修理のための瓦寄進を皆でして、スタンプラリーをして参加賞をもらい、河合さんちであらしぼりを試飲、お漬物を買って、はにわ饅頭を買って、…ぶらぶらしたらあっという間に16時半になりました。3度目の今井町ですが、丸一日楽しんじゃいました♪ とっても楽しくて、全てが満足です!!!》。





ウチの親戚である澤井薬局(橿原市今井町1丁目11-8)に立ち寄った。HPには《江戸時代より今井町の地で地域医療に貢献するため、微力ながら医薬、医療に従事しています》とあるが、藩主に仕えた御典医(ごてんい)として、医師と薬剤師を兼ねていた。だから、こんな薬の処方や解剖学の本が残っている。
http://www.narayaku.or.jp/pharmacy/index.php?no=125







それにしても、良いイベントだった。都合で1日しか訪ねられなくて残念だったが、1日だけでも存分に楽しめた。順明寺ではお抹茶とお饅頭をいただき、お土産には醤油(恒岡醤油醸造本店)や日本酒(河合酒造)などを買わせていただいた。


5/16に行われた茶行列と呈茶席。撮影は吉田遊福さん(以下すべて)







若林さんの個人HPには《第15回今井町並み散歩好天に恵まれ盛大に行う事が出来ました。ご来町者は2日で3万人、人気のコーナーは超満員、うれしい悲鳴を上げていました。町はまた、しばしの静寂に戻りますが、町の人の会話がいつもよりずーっと弾んでいます。またひとつ良い宝物が残りました。ご来町の皆さん有難うございました。そして来年の今井町並み散歩に帰ってきてください》とあった。
http://homepage3.nifty.com/syodou-yamakitiman/







賑やかな今井町もいいが、本領は静かな今井町だ。ぜひ皆さん、世界遺産をめざす素晴らしい今井町の町並みを楽しんでいただきたい。そして、来年の「町並み散歩」では、ぜひ「賑やかな今井町」をお訪ねいただきたい。

若林さん、今井町の皆さん、そして協力された関係者の皆さん、感動を有り難うございました。
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Topic 口蹄疫原因に「中国産稲ワラ」説

2010年05月29日 | お知らせ
地球環境の事件簿 (岩波科学ライブラリー 170)
石 弘之
岩波書店

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環境学者の石弘之氏が、「口蹄疫の流行と循環型稲ワラ文化の崩壊」という興味深い記事を書いていると、同僚のNくんから教えてもらった。日経BP社の「ECO JAPAN」(「日経エコロジー」のサイト)で読める。概略を抜粋する。
※口蹄疫の流行と循環型稲ワラ文化の崩壊(「地球危機」発 人類の未来)
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20100525/103897/

《宮崎県の口蹄疫の流行は最悪の事態になり、最終的に処分されるウシやブタは20万頭を超え、補償額は1000億円に達するともみられる。病気を起こしたウイルスのDNA分析から、大陸から侵入してきたことは確かなようだ。日本に飛び火した原因は、さまざまな説が飛び交っている。そのなかで、状況証拠から、中国から輸入した稲ワラが口蹄疫ウイルスで汚染されていた可能性が指摘されている。この背景には、稲ワラまでも輸入に頼るようになった農業の構造にある》。

《かつて農家の軒に積んであった稲ワラに代わって、いまは農業機械が幅をきかせている。機械化、省力化のためにコンバインで刈り取られた稲は、脱穀と同時に細かく切り刻んでそのまま土に鋤き込まれたり、焼却されたりしてきた。農水省によると、国内で生産される稲ワラは約870万tあるが、このうち「飼料用」として利用されているのは3.9%にすぎない》。

《稲ワラはウシやブタの飼育には欠かせない。畜舎を清潔に維持するためには、敷きワラが必要だ。ウシでは飼料にする。ブランド肉は、肉の赤身と脂肪が分離して細かい脂肪が赤身に入り込んだ「霜降り肉」が定番だ。しかし、穀物が原料の配合飼料や青草だけだと、ビタミンA(βカロチン)が多く、それが肉質に影響を与えて「サシ」が入りにくい。稻ワラは、刈り取られ風雨にさらされて栄養分が抜けているので、サシが入りやすいことになる》。

《動物衛生研究所(旧農水省家畜衛生試験場)などによるDNAの分析結果では、宮崎の口蹄疫ウイルスと中国のウイルスは99.22%、韓国とは 98.59%の遺伝子が一致した。時期的にみて宮崎県の口蹄疫はこのどちらかの国から侵入した可能性が高い。有力視される感染ルートとしては、家畜や人の移動、畜産物や飼料の輸入、黄砂などだが、もっとも疑われているものの1つに、中国や韓国から輸入した稲ワラがある》。

《宮崎県の調査によると、今回最初に口蹄疫が発生した3例目までの農家は、いずれも中国産稲ワラを使っていた。ただ、流通経路は複数に分かれているという。中国産稲ワラの輸入条件には、ウイルスを死滅させる加熱処理が義務づけられているが、それが不十分だったことも考えられる。近年の中国から輸入した一連の食品汚染をみると、そのような疑問もぬぐえない。畜産が盛んな九州では稲作農家が少なく、もともと稲ワラをほかから買っていた。国産が手に入らなくなって外国産のワラを使うようになった》。

火山噴火・動物虐殺・人口爆発 (歴史新書y)
石 弘之
洋泉社

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《ただ、現段階では稲ワラが原因と決めつけるだけのデータはない。農水省の疫学調査チームは、最初の発生例とされた都農(つの)町の農家で飼育状況や敷きワラ、飼料などについて調査したが、その後は感染拡大防止の作業に農家が追われているために、十分に調査ができてない》。

《どこか日本がおかしくなっている、という思いに駆られる人も少なくないだろう。「瑞穂の国」とは、みずみずしい稲穂が実る国という意味である。その国が、長年にわたって生活資材として利用してきた副産物の稲ワラを、回収コストが引き合わないとして処分していまい、一方で身近に入手できなくなったといって輸入に頼っているのである》。

《「白砂青松」もかつては日本の海岸美の形容詞だった。だが、海面の埋め立てや道路や空港の敷設、いたるところにつくられたダムのために、土砂の流入が止まって白砂の砂浜が消えてしまった。いまや、青松に代わって醜悪な消波ブロックや防潮堤がのさばっている。そして、建設用の砂や砂利の多くは調達が容易な中国、台湾、ベトナム、カンボジアなどから輸入してきたものだ》。

《東京の新お台場公園の砂浜の白砂も輸入品である。予算が足りず、白砂を半分しか撒けなかったので白と黒の二色浜になった。この海洋国で砂まで輸入してきたバカバカしさを笑い話ですませてしまってよいのか。口蹄疫は目先の過度な効率優先への警鐘ではないのか》。

何とも空恐ろしい話である。「木の国」といわれるわが国で、国内の森林ではどんどん木が茂っているのに、切り出しコストが高いからといって海外から木を輸入し、「森林破壊だ」「地球温暖化を促進している」と諸外国から非難されているのと、同じ構図が透けて見える。

一方、一連の「中国産稲ワラ」報道には、中国ネットユーザーが反発している。「サーチナ」(旧「中国情報局」)というニュースサイトが紹介している。《感染拡大が続く宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題で、一部の日本メディアが『口蹄疫ウイルスは中国もしくは韓国が感染経路だった可能性がある』と報じたことに対し、中国ネットユーザーが激しく反論している》。
※口蹄疫は中国が感染経路だ!日本メディア報道に中国が猛反発!(5/27)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0527&f=national_0527_016.shtml

《一部日本メディアは25日、宮崎県で確認された口蹄疫ウイルスは、中国および韓国で発見されたO型タイプの口蹄疫ウイルスとほぼ一致すると報道したほか、3月に中国を旅行した宮崎県の農場オーナーが中国からウイルスを持ち帰り、消毒せずに農場に入ったことで日本での感染源となった可能性があると報じた》。

《日本で「感染源・経路は中国、韓国の可能性」と報じられると、日本の一部ネット上では中国に対するバッシングが始まった。感染源・経路が断定されていないにもかかわらず、中国が感染源と断定するような悪意のある書き込みが多く寄せられた。日本人ネットユーザーの書き込みが中国メディアによって報じられると、中国ネットユーザーは激しく反論、環球網の関連記事には500を超える反論のコメントが寄せられた》。

感染源・感染経路の特定は急いでいただきたいと思うが、稲ワラまで輸入に頼るという「豊葦原瑞穂(とよあしはらみずほ)の国」の構造は、やはり変だ。この国のあり方を、きちんと問い直すべき時ではないか。
コメント (10)
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奈良さわやかさんぽ

2010年05月28日 | ブック・レビュー
奈良さわやかさんぽ

山と渓谷社

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『奈良さわやかさんぽ』という便利なガイド本をご存じだろうか。ならの魅力創造課(県庁の地域振興部文化観光局)の人気ウォーキングサイト「歩く・なら」と連携した本である。
※県のウォーキングサイト「歩く・なら」
http://www.pref.nara.jp/miryoku/aruku/

人気のサイトが本になるよと、早くから新聞などで紹介されていた。朝日新聞奈良版(09.11.27付)では、《県HPサイト「歩く・なら」が本に》《県がホームページで展開しているウオーキングコース紹介サイト「歩く・なら」が、山と渓谷社(東京)から来年4月、「奈良さわやかさんぽ」のタイトルで出版される》。
http://www.pref.nara.jp/secure/34698/sawayakasanpo.pdf

《サイトは20コースを紹介し、制作中のコースも30ある。この50コースの中から、橿原・飛鳥の古墳群や伊勢本街道など20コースを厳選。地図と写真を載せ、落語家の桂歌之助さんによる伊勢本街道、作家の玉岡かおるさんによる国宝巡りなど、複数のライターが紀行文を書く》。

《同社の「さわやか散歩」シリーズ9冊目で、関西のコース紹介は初めて。サイトを作っている県ならの魅力創造課が5月、同社に売り込んだ。川崎深雪・副社長は「地元の人にしかわからないポイントが丁寧に紹介されている。平城遷都1300年をPRする一翼を担いたい」とコメントしている。A5判、144ページ。1680円(税込み)の予定。問い合わせは同社出版部(03・6744・1911)へ》。



3月の発刊以降、奈良日日新聞が出版に至る経緯を含め詳しく報じたほか、5月には、読売新聞奈良版が「記者ならでは」(5/17付)のコーナーで、「歩く・なら」サイトの「推奨ルート」と、『奈良さわやかさんぽ』を大きく紹介した。タイトルは《地図頼り歩く歴史舞台》だ。
※『奈良さわやかさんぽ』完成(県の報道資料)
http://www.pref.nara.jp/secure/41810/sawayakasanpo.pdf

《桜の取材のため分け入った吉野山で、人通りのない林道に迷い込み、一人でさまよったことがあります。「あの時、この地図があればなあ」。そう思わせる、読みやすく使いやすい地図があるのを知っていますか。万葉集の舞台を巡る山の辺の道、金峯山寺から紀伊山地へ続く修験の道など歴史や自然を満喫できるルートを紹介した地図です。国土地理院の2万5000分の1の地形図にルートを記し、観光スポットや道を間違えやすい個所は写真付きで掲載。トイレやバス停なども一目でわかり、出発地点までの公共交通機関の案内も添えています》。

《実はこれ、県職員が手作りしたもの。観光振興を目的にした県の事業「歩く・なら」に基づき、情報収集したウオーキングルートを職員が自ら歩いて確かめ、推奨の44ルートの地図を作ったのです。目的地から目的地への移動を車や電車ですませる観光もありますが、その道程の随所に歴史遺産や名所があるのが奈良の魅力。この魅力を生かそうとする取り組みです》。


※「歩く・なら」推奨ルート
http://www.pref.nara.jp/miryoku/aruku/walk_route/index.htm

《ただ、ウオーキングを楽しむ人の多くは弁当と水筒を持参。地元の飲食店や土産物などの観光産業にはあまり寄与しないように思えますが、ならの魅力創造課の谷垣裕子・課長補佐は「まず人に来てもらうことが大事。たくさんの人が集まる場所になることで、そこに『もてなし』が生まれ、商売にもつながれば」と期待します。そして、「それより大事なのは、歴史の舞台となった道を歩き歴史を追体験できること」。谷垣さんも、斑鳩から明日香までの太子道を歩き、聖徳太子の愛馬・黒駒の駒塚古墳などを目にして、「聖徳太子が本当にここを通ったのだ」と感慨に浸ったそうです》。

《地図に加え、それぞれの道に適した靴などのアドバイスも掲載したインターネットサイトへのアクセスは昨春以降で30万件を超えました。3月には地図を紹介した「奈良さわやかさんぽ」(山と渓谷社、A5版)が出版され、4月には紀行ライターら17人が奈良を歩いて書いたエッセーも掲載されました》。

この『奈良さわやかさんぽ』が類書と大きく違う特徴は、かゆいところに手が届くキメの細かさだ。詳しいコースと所要時間が載っているのはもちろんのこと、沿道のみどころや、「歩きやすさ」、「昼食等」のとりかた、温泉や花の「おたのしみ」など、実際に歩いた人しか書けない情報がたっぷり紹介されている。

例えば「下ツ道(しもつみち)」(所要約3時間10分)の「歩きやすさ」では《中級者向き ほぼ全ルートが舗装路。歩きやすい運動靴で行こう。距離はやや長いが、近鉄橿原線がルートのすぐ西側を走っているので、体力にあわせて利用するといい》、「昼食等」は《駅周辺、国道24号線沿いにはコンピニやスーパー、食事処が多数ある。飲み物の自動販売機も各所にある》、といった具合だ。私が当ブログで紹介した「平宗 奈良店」「喫茶 卑弥呼庵」などのグルメスポットも載っている。県のHPでは、なかなか踏み切れない芸当である。
※平宗 奈良店(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/697eb3efc27aa5f17736a3d6f5bd7298
※喫茶 卑弥呼庵(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/50d2663e1216a5ca4b30c7f08a904fe6

JTBの「るるぶ」とは、「見る 食べる 遊ぶ」のことだが、私は常々「奈良のるるぶ」は、「巡(めぐ)る 食べる 喜ぶ(=感動する)」だと言っている。ぜひ『奈良さわやかさんぽ』で、奈良・大和路を巡る喜びを満喫していただきたい。
コメント (4)
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奈良のお宿の春日さん

2010年05月27日 | ブック・レビュー
奈良を舞台にした楽しいマンガ本がある。『奈良のお宿の春日さん』という本だ。毎日新聞奈良版(5/8付)にも紹介された。《奈良のお宿の春日さん 静岡のさえきさん、奈良舞台の初マンガ出版》《静岡県焼津市のイラストレーター、さえきまなさん(35)が、奈良を舞台にした初のマンガ「奈良のお宿の春日さん」(実業之日本社)を出版した。知人が経営する「奈良ウガヤゲストハウス」(奈良市奥子守町)をモデルにした宿で、奈良ゆかりのキャラクターたちが出会うという設定。巻末にはさえきさんが取材したガイドマップもあり、歩いて奈良を楽しめる内容になっている》。

《実業之日本社の編集者がウガヤゲストハウスを訪れた際、さえきさんが書いたポスターを見てマンガの出版を提案。さえきさんは昨年6月から、物語のあらすじやキャラクターを考え、取材のため何度も奈良を訪れた。今年に入って仕上げ作業に入り、すべて手書きで完成させた。物語は、子ジカの「春日さん」が主人公で、奈良の町並みが描かれる。さえきさんは「奈良はゆっくりと歩くととても癒やされる場所。奈良の人にもその素晴らしさを改めて感じてもらうきっかけになればうれしい」と話している。A5変形判。104ページ。840円(税込み)。全国の書店で販売中。問い合わせは同社販売本部(03・3535・4441)》。


さえきさんは、中学の修学旅行で天平仏のファンになり、仏像と鹿を求め、何度も奈良に旅された。子鹿キャラの「春日さん」は、春日大社公認のキャラクターだそうだ。
※コンペイトウ書房の立ち読みブログ
http://ameblo.jp/konpeitoshobou/theme-10019624220.html

冊子『かぎろひの大和路』編集人のかぎろひさんも、ブログで詳しく解説されている。《主人公は「春日さん」という子鹿。ウガヤそっくりのゲストハウスを中心に繰り広げられる、ドタバタ、ホノボノ…としたお話。このゲストハウス、普段は「ヘルパーさん」なる「おかん系男子」が切り盛りしているが、オーナーは実は大仏さんという設定》。
http://kagiroi.narasaku.jp/e21515.html

《みろくちゃん、あしゅらちゃんといった仏像キャラクターも登場する奇想天外な展開ながら違和感なくすっと入り込めるのは、大らかな奈良が舞台のせいかも。もちろん、作者のさえきまなさんの手腕によるところ大にはちがいないけれど》。

《『奈良のお宿の春日さん』発行にいたるストーリーも、1編のドラマのようだ。四国88か所の歩き遍路の道中で、いーぴんさんとさえきまなさんは出会う。その後、いーぴんさんはウガヤゲストハウスを始め、さえきまなさんはイラストレーターの才能を開花させる!さえきさんがウガヤのチラシなどを作成していたところ、たまたまここに宿泊した「コンペイトウ書房」(実業之日本社)の編集者さんの目にとまる。という何とも不思議なご縁が結ぶ1冊なのだ》。

《作者の奈良への愛も感じられる。背景の寺社や風物などのスケッチも見逃せない。たとえば、奈良好きにははずせない二月堂からの夕景。巻末に「春日さんのてくてく奈良ガイドマップ」が付く。全て手書きという労作はため息モノ。足でかせいだという情報はもとより、こんなフォントがあってもいいなと思うような文字やイラストも楽しい》。



とにかくドジな「春日さん」が、かわいい。ゲストハウスのマスコット・みろくちゃん、仏像界のアイドル・あしゅらちゃん、ゴージャスなあすかべさん(法華寺の十一面観音がモデル)、説教好きのきちでん爺などのキャラクターも、うまく描き分けられている。向出醤油醸造元、植村牧場、(すでに閉鎖された)大門市場、奈良豆比古(ならづひこ)神社なども登場して、地元民にはとても楽しい。

同書の「おわりに」(春日さんの独白)が泣かせる。《奈良はのんびりしてておおなぁ》《奈良はでかいねぇ…って、お客さんによう言われるんやけど、お寺や神社だけやなくて、住んでる人たちの心も、ゆったりでっかい気がするな。ゆうえんちみたいな楽しさとはちゃうけど、散歩してるだけで、いろんな想像がムクムクわいてくる奈良が、うちは大好きなんや》《この本を読んでくれた、少しでもたくさんの人たちに、奈良へ行ってみたいと思うてもらえたら、うちもうれしな》。

巻末には、ゲストハウスの皆さんが足で稼いだ情報を載せた「春日さんのてくてく奈良ガイドマップ」もついていて、奈良散策に活用できる。またこの本には、吉野産木材の利用に貢献する「吉野3.9(サンキュー)ペーパー」が使用されている(表紙の見返しに「3.9マーク」と「吉野ハート・プロジェクト」のロゴが印刷されている)。

ほのぼのとしたマンガを楽しんでいるうちに心がなごみ、自然と奈良が好きになる。皆さん、ぜひお読み下さい!
奈良のお宿の春日さん
さえき まな
実業之日本社

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坂乃茶屋

2010年05月26日 | グルメガイド
※このお店は、休業しています!

岡寺門前に、「坂乃茶屋(さかのちゃや)」という雰囲気抜群の茶店がある。昨年、朝日新聞(明日香「食」マップ)でも紹介されていた。タイトルは《坂乃茶屋 時代劇に出そうな茶店》である(09.4.16付)。



《岡寺への急な坂道の途中にある、時代劇に出てきそうな雰囲気の茶店。大蔵成一(しげかず)(76)、好(よし)(81)夫妻が笑顔で迎えてくれる店内は、観光客が残した色紙で埋め尽くされており、中には漫画家さくらももこさんのデビュー前の物もある》。



さくらももこの「あの日の奈良」(『さくらえび』所収)によると、彼女はデビュー作の掲載誌が発売される5日前、短大の研修旅行でこの店を訪れ、イラストを書き残していった。「『りぼん』よんでね。さくらももこ」と書き、それが新人漫画家さくらももこの第一号色紙となった。


「りぼん」発売5日前、さくらももこがお店を訪ねたときの色紙

デビューから16年経って、すっかり有名になった彼女は坂乃茶屋を再訪した。応対した大蔵好さんは本人だと気づかず「これはうちの家宝だ」と説明し、さくらは大感激したという。


16年後、再訪したときに書いた色紙

《自慢は、添加物なしのだしを付けて食べる三輪そうめん。こしの強さにこだわり、3年ものの「大古物(おおひねもの)」だけを使う。冬は温かいにゅうめん、夏はそうめんだが、季節の変わり目は両方出す。「坂乃茶屋定食」(700円)は、そうめんとワラビ飯、フキ煮の3点セット。わらび餅(400円)や葛きり(同)も人気だ。午前11時~午後4時。不定休。明日香村岡1210。電話0744・54・3129》。


絹谷幸二の色紙

もっと以前には同紙の「(週刊まちぶら 通りをゆく)明日香村の岡地区・岡寺参道」でも紹介された(05.8.15)。《岡寺参拝で立ち寄りたいのが「坂乃茶屋」だ。名物「坂乃茶屋定食」はワラビご飯にフキのつくだ煮、添加物一切なしのだしが絶妙な冷やしそうめん。冬場は温かいにゅうめんになる。突然訪れた料理研究家の服部幸應氏が「これがそうめんだ」と絶賛したという歯ごたえ、のどごし。わらびもちや黒蜜のかき氷も人気だ》。



私が訪ねた日は、カンカン照りの暑い日だった。山の緑が見渡せる奥のテーブル席に陣取った。木造のお店はひんやりと涼しかったが、火照った身体を冷ますため、「坂乃茶屋定食」(700円)の冷やしそうめんバージョンを注文。それがトップ写真である。


まん中に、吉村作治の色紙が見える

まずはそうめんをひと口。なるほど、服部幸應が絶賛しただけのことはある。とりわけ天然ダシのツユがいい。ワラビご飯もフキのつくだ煮も昔懐かしい味で、しみじみと味わった。

以前(5/16)、吉野山で葛きりを出す店で働いておられたたというヨシノさんが、ご自身のブログ「まほろば(奈良・大和路)」で葛きりを絶賛されていたのを思い出し、「古代食 葛きり」(400円)を注文した。

ヨシノさんは《見た目からしてもうやられました。おいしそう♪ 葛きりの上にはミカンと瑞々しくて綺麗な緑色の葉がちょこんと乗っています。その横には温かいお茶^^ さっそく葛きりを一口食べるとこれまたビックリ!黒蜜は甘すぎず、葛きりもちょうど良い歯ごたえでめちゃくちゃおいしい☆》。
http://narayamatoji.blog105.fc2.com/blog-entry-215.html



《私は一時期吉野山の葛きりのお店で働いていましたが、そのお店に負けず劣らずのおいしさです。普段は飲んだりしない黒蜜も、全部飲み干してしましました…。(飲み干せるくらいさっぱりしていておいしかったんです。)ここの葛きりは個人的にかなりオススメです!》

確かに味も歯ごたえも弾力も黒蜜も抜群、これは絶品である。私の大好物、「わらび餅」(400円)も、もちもちの食感で、きな粉も香ばしく、葛きりと甲乙つけがたい美味しさである。



驚くべきことに、坂乃茶屋には「坂乃茶屋ファン倶楽部」という私設公認サイトまでできている。たくさんの人に支持されているのは、料理の美味しさや雰囲気だけでなく、大蔵成一さん・好さんご夫妻の、温かいおもてなしのおかげだろう。
※坂乃茶屋ファン倶楽部
http://sakanochaya.hp.infoseek.co.jp/



こんなお店のあるところが奈良県の良さである。皆さん、いちど坂乃茶屋をお訪ねになり、この「癒しの空間」を満喫していただきたい。

所在地:奈良県高市郡明日香村岡1210
電話:0744-54-3129
営業時間:おおむね11:00~16:00頃
定休日:不定休(12月中旬から2月は土日祝のみの営業)
※YAHOO!グルメ
http://restaurant.gourmet.yahoo.co.jp/0005321457/
コメント
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