約5か月ぶりに「同時進行…」第9弾をお届けする。前回(6/9)以降の大きな動きといえば、やはり「平城遷都1300年記念事業実施方針案」の決定・発表だろう。
この「案」の前提には、荒井知事が国土交通省に要望すると公表(5/30)した「大極殿回廊」と「朝堂院」(ちょうどういん)の復原、および宮跡の「国営公園化」という3点セットがある。
「案」の概要は8/3付の同協会ニューズレター(第7号)に掲載されているが、その後の情報も合わせて、以下に紹介する。
※参考:平城遷都1300年記念事業協会ニューズレター
http://www.1300.jp/newsletter/index.html
1.記念事業の構成
記念事業は、宮跡の国営公園化と記念イベントで構成。イベントは「平城宮跡事業」(宮跡で行う事業)と「広域連携事業」(県内各地とタイアップして行う事業)に大別する。
(1)平城宮跡事業
・第一次大極殿(=すでに工事中)、大極殿回廊、朝堂院などの施設を復原し、そこで古代衣装・食・音楽等を楽しみながら実体験できる場や機会を提供。
・記念式典をはじめ、催事・展示・物販・飲食、参加体験等の祝祭フェアなどを季節リレーで展開。
(2)広域連携事業
・平城宮跡をゲートウェイ(玄関)として、年間を通じて充実した広域ネットワーク型イベントを開催。
・市町村、社寺・博物館、企業・団体等の多くの人の参加を得て、秘宝・秘仏等の展示・展覧会、伝統行事、国際的なコンベンション・シンポジウムなどのイベントを実施、あるいはコーディネート。
2.推進スケジュール
(1)国営公園化
概算要求(8月)→政府予算案(12月)→国予算成立(3月)→閣議決定(4月)
(2)記念事業実施計画
実施方針の決定(9月)→実施計画案とりまとめ(12月)→県民からの意見募集・関係機関との調整(1~2月)→実施計画決定(3月)
あらましは以上だが、要するに知事が交代して方針が変わり、仮設パビリオンの建設ではなく「復原施設の活用」「国営公園化」をベースとした事業を行うということである。
これに対し、朝日新聞から疑問の声が上がった。9/19付夕刊の《荒井知事「国営公園化」で波紋 遷都祭に完成困難》という記事だ。
《パビリオンを造らず、国営公園として古代宮都の中枢部を復元するとしたが、開会までの工事完了は難しい状況。担当者は頭を抱える》《予想入場者を下方修正し、近鉄奈良線につくる予定だった臨時仮設駅構想も撤廃したため、計画変更後の総事業費もはじき出せないでいる》《県庁内では「年度内に(会場の)設計ができないと間に合わない」と焦りの声も出始めている》
ただ予算面では、8/29には平城宮跡の「国営公園化」が国土交通省の来年度予算の概算要求に盛り込まれ、また10/19には、遷都1300年を機に観光交流を促進しアクセス道路や公園を整備するという事業に、国交省からの補助金(地域自立・活性化交付金)の交付が決まった。タイムスケジュールを別とすれば、知事の目論見は一歩一歩実現に向かって進んでいると言えるだろう。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/02/021019_.html
先日、同じ朝日新聞に、知事へのこんなインタビュー記事が載った。見出しは《小滝ちひろ記者が奈良県知事 荒井正吾さんに聞く》(10/27付)。
《お金の算段はできる。時間については完成とはいかなくてもそこそこはできる》。「盛り上がりが見えない」という記者の問いには《前もって高ぶらなくて大丈夫。粛々と祝います。事業は奈良の展示力(案内、動線、説明)とは何かを探し、発見する作業》。
しかし、それは《全く完成されていない》《宗教的な精神性の高いものが多い奈良の素材には失礼かも知れないが、おもしろみを加えることに欠けていないでしょうか》と知事は語る。
記事の末尾で小滝記者は、東大寺大仏殿の柱の穴くぐり(=大仏さまの鼻の穴の大きさにくり抜いてある)に行列ができていることを例に、《ちょっとした遊び心をあちこちで形にすれば、展示力の強化はそう難しくないように思えるのだが、どうだろうか》と読者に問いかけている。
この問いは、私がいつも引用する観光コンサルタントの話「女子供を軽んじるな」「東京ディズニーランドに学べ」と、再びダブって頭に響いてくる。
新薬師寺で売っていた200円の絵はがき(バサラ大将像のCG復元画像)には、元画像掲載サイトへの無料アクセス権がついていた、西大寺の大茶盛は、巨大な茶碗でお抹茶をいただくというミスマッチが面白かった、薬師寺の天武忌(於:明日香村)では、菊の御紋のクッキーをいただいた(もらった全員が紙に包んで持ち帰った)、正倉院展では、展示よりミュージアムショップの正倉院グッズに引きつけられた、など、高尚なものからちょっとズレたところが印象に残っている。
観光客を引きつける勘所は、「大仏殿の柱くぐり」のようなちょっとした仕掛け・遊び心にあるのかも知れない。この記事は、奈良への誘客を考える良いヒントになった。
※同時進行!平城遷都1300年(8)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/1051e96909c74e7f374e36456c6814b7
※写真は興福寺東金堂。室町時代の再建だが、天平当時の姿をよく再現している(07年6月撮影)。
この「案」の前提には、荒井知事が国土交通省に要望すると公表(5/30)した「大極殿回廊」と「朝堂院」(ちょうどういん)の復原、および宮跡の「国営公園化」という3点セットがある。
「案」の概要は8/3付の同協会ニューズレター(第7号)に掲載されているが、その後の情報も合わせて、以下に紹介する。
※参考:平城遷都1300年記念事業協会ニューズレター
http://www.1300.jp/newsletter/index.html
1.記念事業の構成
記念事業は、宮跡の国営公園化と記念イベントで構成。イベントは「平城宮跡事業」(宮跡で行う事業)と「広域連携事業」(県内各地とタイアップして行う事業)に大別する。
(1)平城宮跡事業
・第一次大極殿(=すでに工事中)、大極殿回廊、朝堂院などの施設を復原し、そこで古代衣装・食・音楽等を楽しみながら実体験できる場や機会を提供。
・記念式典をはじめ、催事・展示・物販・飲食、参加体験等の祝祭フェアなどを季節リレーで展開。
(2)広域連携事業
・平城宮跡をゲートウェイ(玄関)として、年間を通じて充実した広域ネットワーク型イベントを開催。
・市町村、社寺・博物館、企業・団体等の多くの人の参加を得て、秘宝・秘仏等の展示・展覧会、伝統行事、国際的なコンベンション・シンポジウムなどのイベントを実施、あるいはコーディネート。
2.推進スケジュール
(1)国営公園化
概算要求(8月)→政府予算案(12月)→国予算成立(3月)→閣議決定(4月)
(2)記念事業実施計画
実施方針の決定(9月)→実施計画案とりまとめ(12月)→県民からの意見募集・関係機関との調整(1~2月)→実施計画決定(3月)
あらましは以上だが、要するに知事が交代して方針が変わり、仮設パビリオンの建設ではなく「復原施設の活用」「国営公園化」をベースとした事業を行うということである。
これに対し、朝日新聞から疑問の声が上がった。9/19付夕刊の《荒井知事「国営公園化」で波紋 遷都祭に完成困難》という記事だ。
《パビリオンを造らず、国営公園として古代宮都の中枢部を復元するとしたが、開会までの工事完了は難しい状況。担当者は頭を抱える》《予想入場者を下方修正し、近鉄奈良線につくる予定だった臨時仮設駅構想も撤廃したため、計画変更後の総事業費もはじき出せないでいる》《県庁内では「年度内に(会場の)設計ができないと間に合わない」と焦りの声も出始めている》
ただ予算面では、8/29には平城宮跡の「国営公園化」が国土交通省の来年度予算の概算要求に盛り込まれ、また10/19には、遷都1300年を機に観光交流を促進しアクセス道路や公園を整備するという事業に、国交省からの補助金(地域自立・活性化交付金)の交付が決まった。タイムスケジュールを別とすれば、知事の目論見は一歩一歩実現に向かって進んでいると言えるだろう。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/02/021019_.html
先日、同じ朝日新聞に、知事へのこんなインタビュー記事が載った。見出しは《小滝ちひろ記者が奈良県知事 荒井正吾さんに聞く》(10/27付)。
《お金の算段はできる。時間については完成とはいかなくてもそこそこはできる》。「盛り上がりが見えない」という記者の問いには《前もって高ぶらなくて大丈夫。粛々と祝います。事業は奈良の展示力(案内、動線、説明)とは何かを探し、発見する作業》。
しかし、それは《全く完成されていない》《宗教的な精神性の高いものが多い奈良の素材には失礼かも知れないが、おもしろみを加えることに欠けていないでしょうか》と知事は語る。
記事の末尾で小滝記者は、東大寺大仏殿の柱の穴くぐり(=大仏さまの鼻の穴の大きさにくり抜いてある)に行列ができていることを例に、《ちょっとした遊び心をあちこちで形にすれば、展示力の強化はそう難しくないように思えるのだが、どうだろうか》と読者に問いかけている。
この問いは、私がいつも引用する観光コンサルタントの話「女子供を軽んじるな」「東京ディズニーランドに学べ」と、再びダブって頭に響いてくる。
新薬師寺で売っていた200円の絵はがき(バサラ大将像のCG復元画像)には、元画像掲載サイトへの無料アクセス権がついていた、西大寺の大茶盛は、巨大な茶碗でお抹茶をいただくというミスマッチが面白かった、薬師寺の天武忌(於:明日香村)では、菊の御紋のクッキーをいただいた(もらった全員が紙に包んで持ち帰った)、正倉院展では、展示よりミュージアムショップの正倉院グッズに引きつけられた、など、高尚なものからちょっとズレたところが印象に残っている。
観光客を引きつける勘所は、「大仏殿の柱くぐり」のようなちょっとした仕掛け・遊び心にあるのかも知れない。この記事は、奈良への誘客を考える良いヒントになった。
※同時進行!平城遷都1300年(8)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/1051e96909c74e7f374e36456c6814b7
※写真は興福寺東金堂。室町時代の再建だが、天平当時の姿をよく再現している(07年6月撮影)。