tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

麺屋NOROMA(奈良市南京終町)の鶏白湯ラーメン!

2015年09月30日 | グルメガイド
前回、「麺屋やまひでの台湾まぜそば」を当ブログで紹介したところ、大きな反響をいただいた。主な声は「こんな便利な場所に、こんな良い店があるとは知らなかった」「もっとほかの美味しい店も紹介してほしい」というものだった。

ご期待にお応えし、今回もラーメン店を紹介する。奈良のラーメン好きの間ではつとに有名な「麺屋NOROMA」(奈良市南京終[みなみきょうばて]町3-1531)である。旧国道24号「大安寺南」交差点の少し南のところにある。例によって「究極のラーメン 2016 関西版」の記事を紹介すると、

 究極のラーメン 2016 関西版 (ぴあMOOK関西)
 今年の必食531杯
 ぴあ

昨年の鶏白湯GP(とりパイタン グランプリ)受賞店。至高の一杯を堪能
関東・関西の有名店で修業し身に付けたラーメンテクがハンパない名店。臭味のないまったりとした鶏白湯スープ、豚の旨みが詰まった低温調理チャーシューは格別。一口食べれば、一昨年の新人準GP受賞や昨年の鶏白湯GPにも納得できるはずだ。自家製杏仁豆腐もおすすめ。



麺は、中太の平打ちストレート麺

私が訪ねたのは平日の、しかも開店15分前の11:15。それでも長蛇の列ができていて、45分ほど並び、食べ終わってお店を出たのが12:30。つまり、1時間15分を1杯のラーメンに費やしたのだが、これはそれに値する以上のスグレモノだった。


平日ランチ限定のギョーザセットを注文。鶏そば750円にプラス250円だ

とにかくスープがすごい。一見、あっさりしているようだが、実はこってり・トロリとしていて、鶏の旨味を十分に引き出している。臭味もない。チャーシューもあくまで柔らかくて美味。そこに中太の平打ちストレート麺が絶妙にからむ。それで1杯750円なのだ。「よくこんなユニークなラーメンを作り出したものだ」と、ほとほと感心する。

やや「天下一品」のスープを連想させるものがあるが、「麺屋NOROMA」は、はるか上を行く。奈良のラーメンのレベルの高さを象徴するお店である。皆さん、行列は必至ですが、ぜひいちど「麺屋NOROMA」をお訪ねください!(今日は水曜日ですので、定休日です。ご注意を)
※食べログは、こちら
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奈良まほろばソムリエの会「シリーズ講演会」(第3回)、好評裡に閉幕!

2015年09月29日 | 奈良にこだわる
晴天に恵まれた9/27(日)、NPO法人奈良まほろばソムリエの会は「なら記紀万葉を味わい楽しむシリーズ講演会」の第3回として、「講演会と万葉歌ライブ」(13:30~15:30 於:桜井市立図書館)を開催した。午前中は「ガイド付きウォーク」(2コース)や「名物ランチと等彌神社参拝」など、それぞれ工夫を凝らしたイベントが行われた。なおこれらの催しは、県の補助事業(「記紀・万葉」県民活動支援補助金採択事業)に選ばれている。


この写真は、雑賀耕三郎さんのブログから拝借

私は「名物ランチと等彌神社参拝」のコースに参加した。11:00、桜井市のグルメスポットとして知られる「一語一笑(いちごいちえ)」に集合し、当会のカリスマ観光ガイド・雑賀耕三郎さんの卓話「春日大社と神鹿」とランチを堪能した。雑賀さんのお話の内容は、すでにご自身のブログにアップされているので、ぜひご覧いただきたい。


一語一笑の「六角弁当」

余談として、雑賀さんから面白い「おまじない」を教えてもらった。あたかも「ご真言」のように聞こえる。「オン ニコニコ ハラタテマイゾ(腹立てまいぞ)ソワカ」。キレそうになったとき、これを唱えて心を静めるのだそうだ。


等彌神社は佐藤宮司にご案内いただいた(トップ写真とも)


僭越ながら、私が代表参拝させていただいた(近藤則人さんの撮影)

美味しい食事と珈琲のあとは、等彌(とみ)神社へ。ここでは佐藤宮司のご案内でお参りするという有り難い趣向である(12:30~13:00)。ユーモアたっぷりの宮司のご説明に、ご参拝の皆さんは感心しておられた。私はあらかじめ「代表参拝を」とのお話をいただいていたので、上着とネクタイ着用でお参りしたが、これは暑くて大変だった。



13:30~14:00は、ジャスシンガー・芝山真知子さんの「万葉ジャズライブ」。ジャズに乗せて朗唱する万葉歌は、また格別の趣がある。圧巻は、バックスクリーンに映し出された明日香村などのビジュアル。芝山さんご自身の撮影だそうだが、本当に森の中などで聞いているような錯覚を覚えた。見事な演出だ。





ジャズライブのあとは、いよいよ本命・奥村和美さん(奈良女子大学教授)によるご講演「桜井市の万葉歌碑」。歌碑に登場する万葉歌に関するさまざまな解釈(訓読)を比較しながら、その意味を読み解いていくという、スリリングなお話だった。



額田王の「三輪山を然も隠すか雲だにも心あらなも(なむ)隠さふべしや」の「なも」と「なむ」の違いなど、興味深くお聞きした。なお万葉集の訓読に関する最新の研究成果は、岩波文庫の『万葉集』(2013年1月刊)に出ているということを初めて知った。これは買わなければ…。



午後のイベントには、ざっと数えて170人ほどの方が参加されていた。今回のイベント成功の陰には、奈良まほろばソムリエの会の多くの役員・会員さんのご努力があった。関係者の皆さんには、厚く御礼申し上げる。


奈良まほろばソムリエの会・小北理事長の閉会挨拶

参加された皆さん、次回は12/19(土)で、朝からガイド付きウォーク、午後一番からは橿考研・学芸課長の講話(記紀絵画)、そのあと長岡理事と私の研究発表(弘法大師・空海に関する肩の凝らないお話)、そのあとは懇親会(忘年会)と、盛りだくさんな内容である。ご興味のある所だけ、ご参加いただければ結構かと。

皆さん、次回もどうぞよろしく!
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アートディレクター・北川フラム氏の講演会、10月5日(月)開催!(2015 Topic)

2015年09月28日 | お知らせ
奈良市は「東アジア文化都市」事業の、第3回(2016年)「日本国内候補都市」に選ばれた。この事業は、日中韓の文化・芸術による発展をめざす都市が、現代芸術や伝統文化・生活文化に関連する文化芸術イベント等を開催し、それを通じて交流を深めるという国家的プロジェクトである。

これにちなみ奈良市は、「東アジア文化都市2016奈良市」アドバイザーの北川フラム氏(アートディレクターで、瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクター)を招いて講演会(職員養成塾・市民公開講座)を開催する。参加は無料・要申込で先着100名だ。概要を奈良市のHPから拾うと、

職員養成塾は、職員の勤務時間外に行う自主研修形式の講座です。市民の皆様も一緒に、奈良市のことを考えてみませんか。

今回のテーマ
「東アジア文化都市 ~古都奈良から多様性のアジアへ~」

講師:「東アジア文化都市2016奈良市」アドバイザー 北川 フラムさん

【と き】平成27年10月5日(月)午後6時00分~午後8時00分
【ところ】奈良市役所 中央棟6階 正庁
【内 容】講演と質疑応答  ご案内(チラシ=PDF)
【受講料】無料
【定 員】先着100名 
【申込方法】電話またはFAX・Eメール(講座名、住所、氏名、電話番号、質問事項があれば記入)で人事課へ 電話0742-34-4706 FAX0742-34-9237 Eメールjinji@city.nara.lg.jp


そもそも、「東アジア文化都市事業」とは何か。奈良市のHPによると、

2014年から日本・中国・韓国3か国において開催されている「東アジア文化都市」事業の2016年(平成28年1月~12月)第3回日本国内候補都市に「奈良市」が選ばれました。

■東アジア文化都市とは?
日本・中国・韓国の3か国において、文化・芸術による発展を目指す都市を選定しその都市において、現代の芸術や伝統文化、また多彩な生活文化に関連する様々な文化芸術イベント等を各それぞれの都市が1年を通じて行い、交流を深める国家的プロジェクトとして実施するものです。2011年1月に奈良市で開催された「第3回日中韓文化大臣会合」において日本が提案し、翌年5月の同会合で2014年1月からの開催が決定されました。

2014年(平成26年)横浜市(日本)、泉州市(中国)、広州広域市(韓国)
2015年(平成27年)新潟市、青島市、清州市
2016年(平成28年)候補 奈良市、未定、未定
2017年(平成29年)候補 京都市、未定、未定
※毎年開催される日中韓文化大臣会合によって、正式決定されます。

■東アジア文化都市事業
日中韓3か国において、選定された各都市での現代の芸術文化から伝統文化、また多彩な生活文化に関連する様々な創造的なイベント等を実施。これにより、東アジア域内の相互理解・連帯感の形成を促進するとともに、東アジアの多彩な文化の国際発信力の強化を図ることをめざします。

■奈良市で開催することの意義
奈良は、日本という国の制度が始めて整った地というばかりではなく、シルクロードを通じて東アジア文化が渡来した歴史的・文化的な意味をもった都市です。現在の東アジアの緊張状態に風穴をあけられるのは「文化の力」です。東アジアの安定は世界平和にとって重要な要素であり、奈良は多様性を受け入れる寛容の精神によって東アジアの平和構築に貢献できるものと考えます。

奈良市は先人が守り抜いてきた文化遺産を今後も継承するとともに、このたびの「東アジア文化都市2016奈良市」によって、未来に向けて継承すべき新たな文化の創造に取り組み、伝統と創造の響き合うまち奈良をめざします。


東アジア文化圏の中で育まれた天平文化、そして日本の文化。その意味を確かめるためにも、奈良が「日本国内候補都市」に選ばれたのは意義のあることだ。皆さん、お申し込みはお早めに!

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神様が持たせてくれた弁当箱 by 岡本彰夫氏

2015年09月27日 | ブック・レビュー
 神様が持たせてくれた弁当箱
 岡本 彰夫
 幻冬舎

「何かオモロイ事を致します」とおっしゃってこの6月末で勇退された春日大社・元権宮司の岡本彰夫さん。このたび『神様が持たせてくれた弁当箱』(幻冬舎・新書版190ページ。定価1000円)を出版された。これはやさしい言葉で書かれているが、現代人が置き忘れてしまった「日本人の心」のありようを説いた貴重な本である。私は一気に読んでしまった。奈良新聞(9/16付)《水野南北の「言葉」解説 元春日大社権宮司 岡本さんが新著》によると、

元・春日大社権宮司で帝塚山大学特別客員教授の岡本彰夫さん(60)が、新著「神様が持たせてくれた弁当箱」(幻冬舎、新書版190ページ。定価1000円)を出版した。江戸時代の観相家・水野南北(1760~1834年)が著した「南北相法極意相法修身録」の中で、自身の心に響いた言葉を抜き出して簡明に解説。食べ物を大事にすることや、正直に生きる意味など、豊かな時代を生きる現代人が忘れてしまった事柄の大切さを訴えている。

水野南北はさまざまな職業経験を基に、人の顔から性格・気質などを知る「観相学」を究めた「南北相法」を完成させた。「修身録」は伊勢神宮の外宮にこもって記したもので、運気を改善するためのさまざな方法が挙げられている。観相学に興味を持った岡本さんは約30年前に修身録を知り、幼いころに母や祖母に聞かされた内容に合致していることに感銘。心に響いた語句を抜き書きして座右の銘にしていた。今回、多くの人に知ってもらおうと、原文とともに分かりやすい事例や独自の解釈を加え、出版した…



岡本さん。「第3回観光力創造塾」(1/22)で

奈良の情報ブログ「鹿鳴人のつぶやき」も、この本を紹介しておられた。ちょっと意外なタイトルだが、そのココロは「神様は生まれたときから1人1人に見合った『幸せの弁当箱』を持たせてくれている」「中身を粗末にしたり、むやみに食べ過ぎると大事なときに無くなってしまう」ということだ。Amazonによると、

内容紹介
私たち日本人が捨て去ってしまった、もう一度拾い上げるべき大切なものとは?
神道とは悠(とお)くて広くて深いもの。日本人が日本列島に住みついて、約二万年をかけて醸成し、理想の姿を追い求めた信仰の精華といえましょう、故にわからぬ事が山ほどあるのです。それを読み解くには、自然・歴史・文学・民俗・芸能・芸術など、あらゆる事柄を究めたうえでないと、わからないといいます。(本文より)

2001年から2015年まで春日大社権宮司を務めた著者が、江戸時代の観相家・水野南北先生の名著『修身録』を解説しながら、心に思うことを書き加えていったのが本書。どうすれば、平穏で幸せに暮らせるのか? 今の時代に失われつつある神道を読み解くよすがとなる一冊です。

もくじ
第1章 天が教えてくれる幸せの法則
天は催促もされず、しかも見逃しもされません ほか
コラム:水野南北とはどんな人?
第2章 自分の役割を知る人は幸福になれる
正しい判断をなすには、冷静に自分を見つめる場所が必要です ほか
コラム:相学とは
第3章 物を大切にすると運が良くなる
お金を大切にする人は、お金からも愛されます ほか
コラム:お金あれこれ

内容(「BOOK」データベースより)
なぜ「少食」「正直」「親孝行」の行いで幸せになるのか?あせらず、欲ばらずとも、道は開かれる。日本人が子々孫々伝えてきた神様に愛される生き方・考え方。

著者について
神主、帝塚山大学特別客員教授。昭和29年奈良県生まれ。太延または聴斎と号す。昭和48年奈良県立郡山高等学校卒。昭和52年国学院大学文学部神道科卒。同年春日大社へ奉職。2001年から2015年まで権宮司を務める。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
岡本/彰夫
1954(昭和29)年奈良県生まれ。1977(昭和52)年國學院大學文学部神道科卒業後、春日大社に奉職。2001(平成13)年より2015(平成27)年まで春日大社権宮司。1993(平成5)年より2007(平成19)年まで、国立奈良女子大学文学部非常勤講師。1998(平成10)年より2004(平成16)年まで、帝塚山大学非常勤講師。現在、帝塚山大学特別客員教授。宇賀志屋文庫庫長


文章はいつもの岡本さんの調子で、流れるように語りかけてくれる。若い人から年輩の方まで、ぜひお読みいただきたい。皆さん、この本はおススメですよ!

コメント (2)
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デービッド・アトキンソン氏の講演録 観光地奈良の勝ち残り戦略(101)

2015年09月26日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
 新・観光立国論
 デービッド・アトキンソン
 東洋経済新報社

これまで「目からウロコ! 新・観光立国論」および「奈良県観光への提言!」の2本の記事で、デービッド・アトキンソン著『新・観光立国論』の内容を紹介してきた。まさに意表をつく提言だった。シルバーウィーク中の産経抄(産経新聞 9/23付)にも、こんな一節があった。

経済効果の観点から、GW同様に秋の大型連休の定着を望む声も上がるかも知れない。もっとも、元経済アナリストで、日本の伝統美術の修復を請け負う会社の社長でもある、イギリス人のデービッド・アトキンソンさんは、GWを含めた大型連休の廃止を提言している。

短期間に大量の観光客をさばいて、年間の売上げの多くを稼ぎ出す。こうした供給側の都合ばかりを優先する制度が、観光産業の隆盛への道を阻んできたというのだ(『新・観光立国論』東洋経済新報社)


そんなアトキンソン氏が9/13(日)、奈良市で講演されたということを奈良の情報ブログ「鹿鳴人のつぶやき」で知った。詳細が「奈良市観光協会 デジタルかわら版 (VOL.77)」に出ているという。以下、デジタルかわら版から転載する。


写真は荒井知事とアトキンソン氏(9/13の講演会)。2枚とも県のHPから拝借

デービッド・アトキンソン氏
9月13日、デービッド・アトキンソンさんの講演を聞いてきました。奈良県大芸術祭の文化セミナーのひとつとして計画されたもので、アトキンソン氏の著書である「新・観光立国論」も読ませていただき楽しみに行ってきました。以下に彼のお話の中で気になったところ、共感したところなどをご紹介します。

1.日本がこれからの国の発展を成し遂げてゆくには「観光」を産業として育成するしか方策はない。
日本のGDPを維持するには、人口を増やすか、観光の誘致により一時的な海外からの顧客を呼び寄せるしか方法はない。GDPは労働力の大きさ(人口)に依存しており、日本が人口を増やす施策は、出生数を増やすことか移民による労働力を受け入れることしかない。出生数の増は40年前に手を打つべきことで、すでに手遅れ。また、移民の受け入れは治安の問題など複雑な問題がありお勧めできない。残るは「観光による外客の誘致」のみ。

2.観光大国になりえる国の条件とは
◆気候……日本は亜熱帯の沖縄から冷涼な気候の北海道まで多様性に満ちている。
◆自然……日本の1平方キロメートルあたりの自然の多様性は世界一。イノシシとクマとサルを同時に見ることができる国は日本くらいのもの。
◆歴史文化……まったく問題ない
◆食……和食が世界遺産に認定される。日本には世界中の食を楽しめるインフラがあるので問題なし。
4条件を満たす国は世界中を見渡しても10か国程度。日本は非常に高い潜在能力を持っている(が活かしきれていない)。

3.日本の誘致活動の陥っている誤りについて
多くの日本の地域や団体は「日本の良さを知ってほしい」「○○の良さを知ってほしい」という誘致活動を行っている。顧客は日本を楽しむためにやってくる。楽しみたいポイントは顧客によって違うため、情報発信側の都合で「知ってほしいもの、体験してほしいもの」を限定してしまうことは相手の立場で考えていないことにならないだろうか。つまり押し付けになっていると考える。

4.また、「おもてなし」「治安の良さ」があたかも海外の顧客にとって大きな誘因になるような錯覚があるが、おもてなしや治安では顧客は呼べない。日本の皆さんだって旅行先を決める優先事項が治安やおもてなしではないと思う。

5.ホームページ等の多言語化がいろいろな場面で進められているが、14か国のHPを造るのであれば、英語だけでいいので14倍の情報を載せるということも考えても良い。例えば、京都の二条城は明治維新に関わる重要な施設であるにもかかわらず、その重要性が全く解説されていない。施設の管理は文化財の保護という視点が強すぎて、観光の視点での取り組みができていない。海外からやってきた顧客には、二条城が歴史上どんな意味があるのか理解できないまま、二条城を後にすることになる。結果として、「古い空っぽの日本建築を見てきた」という口コミにもつながりかねない。

6.今までの日本の観光は「顧客を捌く」という視点で取り組まれていた。
日本人の多くは盆暮れ・ゴールデンウィークなど旅行の時期が集中しており、こういったやり方が中心だと思う。これからの考え方としては「顧客にお金を落とさせる」という視点で考えるべき。日本でひとりあたり23万円を消費する中国の顧客は、アメリカでは66万円消費している。

アメリカは観光を産業としてとらえ、顧客にお金を落とさせる仕組みがしっかり出来上がっている。一例を挙げれば「奈良に一週間顧客を滞在させるためには何をすべきか?」といったことを考えるべきだろう。また、宿泊の場面では、顧客の一日は24時間。睡眠に8時間、食事に3時間、昼間の行動に8時間、残り5時間のアイドルタイムを日本の事業者は見落としている。ビジネスチャンスを逃していると考えている。

アトキンソンさんの話を聞いて、著書に書かれたお考えを直接の言葉を聞くことでより深く理解できたように思います。日本全体のことが中心で、戦略論の講演ではありましたが、戦略の共有から戦術への落とし込みを行ってゆくことは十分できることだと感じています。新しい刺激をいただき、貴重なお話をお伺いすることができました。実務に生かす
ことが私の役割だと思っています。(鷲見)




この日は講演のあと、荒井知事とのトークセッション「世界に通じる奈良の文化」があった。「鹿鳴人のつぶやき」から抜粋させていただく。

デービッド・アトキンソンさんは羽織袴姿で、ほとんど横文字を使わないでなめらかな正確な日本語でお話しになりました。

知事:奈良の売りは何か?
アトキンソンさん:本質が大切、楽して儲けたいというのはいけない。奈良の良さはわかりやすい。

知事:リピーターが大切。たとえば東京の下町の澤の屋さん。奈良にもかつて日吉館があった。サービスが大切。
アトキンソンさん:伏見稲荷を一から見直して神職さんと魅力づくりをした。リピーターがほんとに大切だ。

知事:スイスも100年前までイタリアに比べて歴史遺産もなかったが、山、雪、スキーを磨き上げて有数の観光地になった。
アトキンソンさん:北海道のニセコもたいへん人気がある。奈良も十分そうなる可能性がある。人は楽しいから行くのであって、楽しくないところには行かない。日本は禁止事項が多すぎる。むしろ増えている。イギリス貴族はひそかにやぶる。
知事:同じことを言っても、アトキンソンさんがいうと皆さん聞いてくれますね。(笑い)


荒井知事はよく「澤の屋」を例に引かれるが、奈良にも「旅館松前」という外国人客が8割という素晴らしい旅館があるので、早く気づいていただきたいものだ(どなたか側近がアドバイスしていただけないものか)。また日はさかのぼるが、7/27(月)、同氏の講演に参加された星乃勝さんがご自身のブログ「関西観光応援団」に紹介されていた。

1つ目は、歴史・文化を目的とする観光客の話です。イギリスは歴史・文化で観光客が来るのが80%(イタリアは100%)、日本は23%にすぎない。観光客が求める歴史・文化の説明は、年代や作者、歴史背景など詳しい説明ではなく、何故、伏見稲荷は朱色で飾るのか、何を祀っているのか、なぜ狐を祀るのか、などだといいます。観光客が求めている説明と、知ってもらいたいという提供者側の思いによる説明のミスマッチ。顧客が求めているものを提供できていないものが日本に多いとの指摘でした(私の質問に対する要約した回答)

姫路城がトリップアドバイザーで激しいバッシングを受けているとの紹介もありました。改修前は、姫路城の中に入れば、多くの展示物があったが回収後は、建築物としての姫路城を見てもらうことに力を入れており、場内には展示物がほとんどないとのことです。

二条城の例も話されました。観光客は建物の中に入れず、レプリカの襖絵を見、建物の中には何もない二条城を見物する。アトキンソンさんは、幕末から明治に日本が大きな方向転換するときに会見された場としての説明をするべきとの指摘でした。何を見せて、何を説明するかは、観光客の多様性からいうと一つに限定する方が危険でしょうが求めているものと、説明側のミスマッチは見直す必要があると感じました。

2つ目は、IR(統合リゾート)に関する話です。大阪でIRを推進しようとしている。大阪もIRより文化の振興に力を注ぐべきではないかとの質問に観光客は多様だ。
・文化財で集客できるのは、2000万人までだろう
・歴史で集客できるのは、数百万人までだろう
・食で集客できるのは、1000万人までだろう
歴史文化を好む人もいれば、好まない人もいる。コンベンションに来日して、IRを楽しみながら、歴史文化に触れてみたいと思う人もいる。人は多様なので、多様なニーズに応えるのが産業としてみたときの観光の要諦。IRも吸引力の大きな観光インフラになる。との回答がありました。


いかがだろう。アトキンソンさんの思いがビンビンと伝わって来ないだろうか?未読の方には、ぜひ『新・観光立国論』を読まれることをお薦めします!
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