tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

外国人観光客の増加で活況を呈する奈良県。県下各地では、美味しい飲食店も激増中です。ぜひあなたも「どっぷり奈良好き」人に!

2016年の美味しかった!ベスト5

2016年12月31日 | グルメガイド
今年(2016年)も、いろんな美味しいものを食べ歩いた。特に食べ物を意識した訳ではないが、旅先などでたまたま出てきたものがビックリするほど美味しかったり、食べたあとで美味しさがじわじわと広がってきたり…。なかでも印象に残った食べ物を挙げてみると、

1位 よしなやの天然鮎の塩焼
2位 あんどの芋煮
3位 ホテル杉の湯の大和茶麺(やまとちゃめん)
4位 天好園のぼたん鍋(猪鍋)
5位 吉野山ハム
次点 柿バターと柿けーき


堂々の1位は、よしなや(吉野郡大淀町桧垣本1334)の天然鮎の塩焼だ(1,250円=トップ写真)。このお店の料理は、何でも美味しい。うどんもトンカツも柿の葉寿司も…。同町ご出身の平田進也さんとも、このお店の話題で盛り上がった。私はここには何度も通っているが、この鮎には驚いた。かつて夏の夜に京都の高級料亭の軒先で、炭火で焼きたての鮎もいただいたが、これほどの味ではなかった。今年、私がいただいたのは「天川産」とあり、おそらく天川村を流れる天ノ川(熊野川)の鮎だったのだろう。あの清流がこんなに美味しい鮎を育てたのだ。もちろん焼き加減もいい具合だった。



2位は安堵町の「あんどの芋煮」。この料理は、これまで県の「あったかもんグランプリ」で過去に優秀賞(2席)と特別賞(3席)を獲得したことがある。私は審査員として2回ともいただいたが、審査の場ではたくさんの鍋物を短時間で食べて審査するし、少し冷めているので「本当の味はどうなのだろう」とずっと思っていた。それで今年は10月29日(土)の「あんど芋煮会」に足を運び、ホンマモンをいただいた。お値段は1杯200円。これがとても美味しかったのだ!





大きな器に2杯もいただき、しかも残ったお汁を使って作られた「特製カレーうどん」まで平らげてしまった(もちろんカレーうどんも美味しかった)。これは驚きの「エコ料理」だ。安堵町には、よほどスゴい料理プロデューサーがいらっしゃるのだろう。


レストラン山吹の夏限定「天ざる茶麺」1,080円。麺は大盛りにしたかも

3位はホテル杉の湯(川上村迫)や付属のレストラン山吹で出てくる「大和茶麺」。温も冷もいただいたが、どちらも美味しかった。温のツユはダシがよく利いている。ホテルの売店やお隣の道の駅ではツユのついた半生麺(3人前 1,080円)も販売しているので、こちらはお土産にピッタリだ。大和高原の粉末茶とモロヘイヤを練り込んでいて、そば粉は使っていない。「一般社団法人 奈良県日本調理技能士会 考案」とある。



4位は「たかすみの里 天好園」(東吉野村平野689)のぼたん鍋(5,775円)。新鮮な猪肉を使い、脂身までとても美味しい。天好園の敷地は1万坪。そこのコテージ風の日本間でこの鍋をつついた。あれは至福の時だった。女将の池田美砂子さんのおもてなしも抜群だった。



5位は、ご存じ「吉野山ハム」。よく「吉野・山ハム」とおっしゃる人がいるが「吉野山・ハム」である。もと県職員の橋田茂さんが作る渾身の逸品だ。ヤマトポークをヤマザクラの木で燻製して作る。吉野町の「ふるさと納税」のお土産品にも選ばれている。田中利典師もお気に入りのハムである。



何とか5位以内に入れたかったのだが、惜しくもはみ出したのが石井物産(五條市西吉野町八ツ川458)の「柿バター」(648円)だ。全国の地方新聞社で作る「47CLUB」の「こんなのあるんだ!大賞2016」で、最優秀賞を受賞している。パンやクラッカーに塗っていただく。お土産にも重宝する。なお「柿けーき」(1,080円)は以前から販売されている商品だが、最近久しぶりに食べてみたところ、以前より飛躍的に美味しくなっていて、びっくり仰天した。




新バージョンの柿けーき。柿のようかんが入っている

以上、意識してはいなかったが、すべて奈良県内、それも中南部のものばかりになってしまった。まあそれだけ私がせっせと県中南部に足を運んだということなのだ。

まだまだ書き切れなかった食べ物はたくさんあるが、きりがないのでここまでにしておく。「奈良はうまいものばかり」。来年も美味しいものを食べ歩くぞーっ!
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吉野の桜と権現信仰 by 田中利典師

2016年12月30日 | 奈良にこだわる
クリスマスイブの12/24(土)、「桜とともに生きる~吉野・生命と再生の聖地~ in 奈良」という素晴らしいシンポジウムを拝聴した。その模様はまた日を改めて紹介したいが、蔵王権現と吉野山のシロヤマザクラのことを考えているうち、田中利典師(金峯山寺長臈、修験者)が最近になってブログに書かれた文章を思い出した。2014年11月22日、東京日本橋三越前の「奈良まほろぼ館」での講話である。
※写真はいずれも、利典師のFacebookから拝借

それは連続講演「伝えたい世界遺産『吉野』の魅力」の第6回だ。思い起こせば第1回はこの私が「入門!古事記・吉野・神武東征」というお話をした。紀州九度山に生まれ、母が吉野郡大淀町、父方の祖母が五條市の出身なので、吉野には子どもの頃から思い入れが深い。なのでこんなお役目を引き受けたのだが、お歴々の中で、よくまあこんな無謀なことをしたものである。それはともかく、以下、利典師の全文を引用する。

 体を使って心をおさめる 修験道入門 (集英社新書)
 田中利典
 集英社

※名著『体を使って心をおさめる 修験道入門』。これまで2回、当ブログで紹介!(1回め2回め)。

「権現とご神木の山桜」
日本では仏教が伝来してきて、最初少し蘇我氏と物部氏との争いがありますが、基本的に神様と仏さまは仲良くやって参りました。日本人は元々仏さまを神様として受け入れたんです。それは『日本書紀』を読むと、外来から来た仏さまのことを「アダシクニノカミ」、「蕃神(ばんしん)」と書いています。元々、仏さまと神様を分けていなかった。仏ではなく新しく外国から来た神様なのです。そして元々いる神様と外国から来た神様で仲良くなっていくわけであります。

で、仲良くなっていって「本地垂迹」という日本独特の考え方が、ここで生まれてくるわけであります。月の光が湖や沼や水たまりに映るさまような、この場合本体の月が「本地」=仏さんであるとすると、その池に映った月というのは「垂迹」つまり神様。神様と仏さまは、実はそういう関係にあって、同じものである、そういう考え方です。

吉野には釈迦・観音・弥勒の権化である蔵王権現、熊野には熊野三所権現。本宮の家都御子神(けつみこのかみ)様が阿弥陀如来。ですから本宮は阿弥陀浄土ということで、時宗の一遍上人がそこでお悟りを開かれたといわれます。それから、新宮速玉の神様は薬師如来。那智の夫須美の神様は千手観音、というような権現といいますか、神様と仏さまを融合させた信仰が生まれた。



羽黒は、羽黒権現は、これは観音さんの本地。白山は、白山妙理権現、これは十一面観音尊が本地。富士山は浅間(せんげん)大菩薩、これは大日如来が本地。京都には愛宕神社、愛宕権現というのは、これは地蔵菩薩の権化。江戸は徳川家康が死んで、東照大権現になった。これは薬師如来の権化というような、神様と仏さまを融合させたそういう信仰。それが権現信仰です。

ですから権現というのは、神でもあり仏でもある。その権現様を役行者は祈りだした時に山桜の木に刻んでお祀りしたところから、吉野では山桜は蔵王権現の御神木として、千年単位に人々が大切に守ってきまして。

そして、山を埋め、谷を埋め、千本桜ー花の名所になっていったわけでありますが、先ほど申し上げましたように、江戸の八代将軍吉宗の時に始まった庶民の花見より、はるかに以前に信仰の形で吉野では花がたくさん植えられてきて、それを人々が見るようになってきた。権現信仰あるいは金峯山寺というお寺の関係と、この山桜、吉野の桜というのは、大変深い関係があるわけであります。

連続講演「伝えたい世界遺産『吉野』の魅力」(第6回)平成26年11月22日
奈良まほろぼ館講座「吉野と嵐山の縁(えにし)~後嵯峨/亀山上皇と吉野と嵐山~」より


 奈良大和路の桜 (奈良を愉しむ)
 田中利典/桑原英文
 淡交社

このように吉野山の桜(主にシロヤマザクラ)は「権現信仰」のたまものである。吉野町のHPにも、

日本全国の多くの桜の名所では、近代になってから桜並木を整備したり、古くからある古木を大切に 保護したり、いわゆる「花見」のために桜を植栽・管理しています。しかし、吉野の桜はそれらのものと は異なり、「花見」のためではなく、山岳宗教と密接に結びついた信仰の桜として現在まで大切に保護されてきました。

その起源は今から約1300年前にさかのぼります。その当時は、山々には神が宿るとされ、吉野は神仙の住む理想郷として認識されていました。のちに修験道の開祖と呼ばれる役小角(役行者)は、山上ヶ岳に深く分け入り、一千日の難行苦行の果てに憤怒の形相もおそろしい蔵王権現を感得し、その尊像こそ濁世の民衆を救うものだとして桜の木に刻み、これを山上ヶ岳と吉野山に祀ったとされています。

その後、役行者の神秘的な伝承と修験道が盛行するにつれて、本尊を刻んだ「桜」こそ「御神木」としてふさわしいとされ、またそれと同時に蔵王権現を本尊とする金峯山寺への参詣もさかんになり、御神木の献木という行為によって植え続けられました。また、吉野にはその桜に惹かれて、多くの文人墨客が訪れています。


吉野山の桜は、これまで何度も見てきたが、何度見てもまた見たくなる。人が多くて大変なのだが、山上で1泊して、早朝にじっくり桜を見るのがいい。来年も平日をねらって出かけたい。




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邪馬台国はどこだ?/おもしろ歴史フェスティバル2016 回顧

2016年12月29日 | 奈良にこだわる
今年は邪馬台国畿内説(纒向説)にちなんだツアーの組成やガイドの依頼がたくさん寄せられた。おかげでたくさんの本を読み、また纒向遺跡周辺を何度も訪れた。ツアーは2月、9~10月、12月と3回(計7本)実施され、私は3本のツアーでメインガイドを務めた。勉強のため10月12~14日には、高島忠平氏率いる邪馬台国九州説のツアーにも参加した。

私が教えを請うたのが雑賀耕三郎さん(NPO法人奈良まほろばソムリエの会理事)。いろんな本をご推薦いただき、また現地も案内していただいた。雑賀さんのおかげで桜井市立埋蔵文化財センターとのつながりもできた。ソムリエの会では私の方が先輩なのでいばっているが、実は雑賀さんは私より6歳も年長である。

雑賀さんは本年10月9日(日)、歴史バトル「邪馬台国はどこだ?」に出演された。その模様は当ブログでも紹介したが、今朝(12/29)の奈良新聞に特集記事として大きく紹介された。冒頭部分を抜粋すると、



第5回おもしろ歴史フェスティバル 歴史を愉しむ
邪馬台国はどこだ? 近畿VS九州 白熱のバトル 歴史ファン、2会場に結集


第5回おもしろ歴史フェスティバル「歴史を愉しむ」(同実行委員会主催、奈良新聞社・国営飛鳥歴史公園・国営吉野ヶ里歴史公園共催、飛鳥京観光協会・県立万葉文化館・NTT西日本奈良支店協力)が去る10月9日、明日香村の県立万葉文化館と佐賀県吉野ヶ里歴史公園で開かれ、インターネット回線で結んで実況中継された。奈良会場は約350人、佐賀会場には約200人の歴史ファンが参加した。

第1部は、昨年9月に続く2回目の歴史バトル「邪馬台国はどこだ?」を開催。邪馬台国の所在地を巡り、研究者や歴史愛好家が論争を繰り広げた。進行は前県立橿原考古学研究所調査課長の今尾文昭さんが担当し、奈良会場では邪馬台国近畿説の石野博信・香芝市二上山博物館名誉館長が、佐賀会場では九州説の高平忠平・佐賀女子短期大学名誉教授がそれぞれ持論を展開し、歴史愛好家それぞれ2人の合計4人が応援する意見を述べた。

石野さんは「纏向遺跡にはよその地域の人が住み着いていったことが土器の出土で分かり、都にふさわしい」と指摘した。高島さんは「九州説が歴史を総合的に理解するうえで合理的」とし、その根拠として大分県日田市のダンワラ遺跡で出土した卑弥呼時代のものと推定される鉄鏡を紹介した。

第2部は、キトラ古墳壁画体験館オープン記念「キトラ古墳と王塚古墳」をテーマにしたフォーラムが開かれた。奈良会場は石野さんと阪南大学教授の来村多加史さんが「キトラ古墳と高松塚古墳の壁画世界」で、佐賀会場は高島さんと元九州歴史資料館学芸第二課長の石山勲さんが「装飾古墳の魅力」でそれぞれ講演し、意見交換した…。


バトルの中で、雑賀さんはどんな発言をしたか。記事から拾ってみる。見出しは「他地域の土器多く 交流盛ん」だ。



纏向遺跡は広さが約300ヘクタールあり、箸墓古墳やホノケ山古墳が含まれています。出土した土器は地の地域からの搬入土器が多く、農工具はほとんど出土しなくて、土木用の多くの工具が出土しました。纏向遺跡は計画的に造られた最初の都市と考えます。この地は、ヤマト王権発祥の地であり、さらには邪馬台国が存在したとしても不思議ではありません。

纏向遺跡から出土した大型建物が注目されます。直径32センチメートルの太い柱が5メートル間隔で5本並び、間口が20メートルもありました。当時の最大の建物です。さらにこの大型建物と合わせて、3棟の楯のもが中軸線を一直線にして並んでいました。また、建てられた年代は200年代初めで、250年くらいまで建っていたと推定されています。卑弥呼が即位したのが180年ごろ、亡くなったのが247年とされていますので、卑弥呼の宮殿だったと考えることもできます。

近くにある黒塚古墳からは、三角縁神獣鏡が33枚、画紋帯神獣鏡が一枚出土されており卑弥呼が受け取ったとされる鏡が含まれていると考えられます。また古墳の石室の北側から出土したU字型鉄製品は魏から届けられた黄幢との見方もあります。纒向遺跡を邪馬台国としてみることができる地下からの証拠が出ており、総合的に考えると、邪馬台国は現在の纒向遺跡の地にあったと考えます。




私も雑賀説に基づき、纒向を案内している。昨今はちょっとした邪馬台国ブーム再来の様相である。来年も纒向ツアーのガイド依頼が舞い込んでくるだろう。もちろんメインガイドは雑賀さんにお願いしたいが、ある程度分担も必要だろう。

邪馬台国については読みかけの本だけでも5冊。お正月休みを利用して、何とか片付けたいところだ。雑賀さん、来年もどうぞよろしくお願いいたします!







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冬眠人間だった!私

2016年12月28日 | 意見
毎年この時期になると、夜にお腹がすいてやたら甘いもの(炭水化物)が食べたくなる。昨年まではお餅を焼いて食べていたが、今年はもっぱら食パンだ。はじめは山崎製パンの「ダブルソフト」で済ましていたが、同じ職場のNさんに、やや値が張るがとても美味しい食パン(近鉄奈良駅前「capital」の石窯パン)を教えてもらったので、これは当分やめられそうにない。
※トップ画像は「がくげいイラスト素材集」より

それだけではなく、やたら眠くなり、珍しく夜に十分な睡眠をとった日でも午後になるとまた眠くなる…。ネットをいろいろ検索していてやっと分かった、これは「冬眠」(冬季うつ)なのだそうだ!AllAboutによると、

秋から冬にかけて、食事量が増えて睡眠時間が長くなるというのは、何かに似ていませんか? クマなどの冬眠する動物の行動と同じですね。

多くのうつ病は、季節と関係なく気持ちがふさぎこむのが一般的ですが、ある決まった季節だけに発症するうつ病があり、「季節性感情障害」と呼ばれています。夏に起こるものもありますが、ほとんどは秋から冬にかけて憂うつな気分にとらわれ、春になると自然に治る「冬季うつ病」です。

冬季うつ病に特徴的な症状は、食欲増加、体重増加、睡眠時間の増加。普通のうつ病の場合、食欲がなくなって体重が減り、昼夜を問わず眠ろうとしても眠れなくなります。しかし、冬季うつ病の場合は逆で、特に午後~夜に炭水化物や甘いものが欲しくなります。また、夜の睡眠時間が長くなり、日中の眠気も強く、昼寝や居眠りが増えます。

通常のうつ病と同じく、冬季うつ病の場合も、気分の落ち込みや、それまで興味があったことへの関心の薄れなどが見られます。また、集中力や意欲、精力が低下し、疲れやすくもなります。


明るい光を浴びて治療する方法もあるそうだが、春になると自然に治るということだし、幸いヤル気の低下はない(そんなことを言える状況ではない)ので、特に心配してはいないが、問題は体重の増加だ。今までは「餅太り」「正月太り」と軽く考えていたのだが。そういえば、お腹の脂肪が少し増えてきたような…。

「冬季うつ」と言われるといやな感じだが「冬眠」と考えると「まぁ仕方ないか、冬だから」と気楽になれる。この機会に、普段めったに食べない食パンをいろいろと買い込んで「食パングルメ」をめざすのも悪くない、とブログには書いておこう。





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インバウンドの今後/観光地奈良の勝ち残り戦略(112)

2016年12月27日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
南都銀行グループの地域シンクタンク、一般財団法人南都経済研究所の「ナント経済月報」2016年11月号に、興味深いレポートが掲載されていた。特集「奈良県におけるインバウンド(訪日外国人旅行)の現状と今後の方向性」で、筆者は研究員・太田宜志(たかし)さん。A4版で8ページもの大レポートで、全文はこちら(PDF)に掲載されている。以下、要点だけを抜粋して紹介する。

[リード文]人口減少社会に突入したわが国では、経済活動の縮小が懸念されている。一方、日本を訪れた外国人旅行者数(訪日外客数)はここ4年間で急増し、今年中の年間2,000万人達成が確実視される中、3兆4,771億円と推計される旅行消費額はわが国経済に好影響をもたらしている。

全国平均を上回るスピードで少子高齢化が進む奈良県においても、人口減少に伴う消費減少を補う上でインバウンド・ツーリズム(訪日外国人旅行、以下インバウンド)誘致による経済活性化が有効と期待されるが、現状は日帰り観光が中心であるため県内経済への効果は限定的と見られる。本稿では奈良県経済活性化の可能性を探るべく、インバウンドの現状と今後の方向性を考えたい。

[はじめに]期待されるインバウンド消費
観光庁「訪日外国人消費動向調査」(2015年)によれば、外国人旅行者1人あたりの旅行支出は17.6万円であることから、定住人口1人減少分の年間消費額を補うには、年間7人の外国人旅行者を新たに誘致することが必要と算出される。

またインバウンドの増加は、経済面にとどまらず様々な好影響をもたらす。例えば、異文化の相互理解が進み国際親善の増進につながる、地域の魅力が外国人旅行者から評価されることで住民にとって愛着や誇りの醸成につながる、等の副次効果が考えられる。



Ⅰ.世界から見た日本の国際観光競争力
1.日本の旅行・観光競争力指数は世界9位
日本の旅行・観光競争力指数(TTCI)2015は世界9位、アジア太平洋地域では豪州に次ぐ2位であった。固有の文化遺産(2位)等の豊富な文化資源(6位)、鉄道等の効率的な陸上輸送(17位)・航空輸送(19位)インフラ、充実したICT環境(9位)、高品質な顧客対応を実現する人的資源(15位)等が評価された結果である。一方で、物価が高く価格競争力(119位)は低いと指摘されている。

2.日本の国際観光収入は対名目GDP比で低水準
名目GDPに占める国際観光収入の割合を見ると、日本は0.6%と米国(1.1%)や欧州各国の水準(概ね1~2%前後)に比べて低く、成長の余地を残していると考えられる。

Ⅱ.全国のインバウンドの現状
1.訪日外客数の推移
2015年の訪日外客数は2010年比で約2.3倍に増加し1,974万人となった。国籍別に内訳をみると、中国(499万人)が全体の約4分の1を占め、韓国(400万人)、台湾(368万人)の順に多い。

これまで掲げていた「2020年に2,000万人」という目標を前倒しで達成することが確実な情勢となったことを受け、政府は「2020年に4,000万人」と倍の目標を新たに設定。

2.訪日外国人旅行消費額の国籍別内訳
国籍別の内訳をみると、中国(1兆4,174億円)が全体の約4割を占め、次いで台湾(5,207億円)、韓国(3,008億円)の順に多い(図表5)。旅行消費を特定の国に依存することはリスクが大きく、多様な国々から旅行者を受け入れることが重要である。

3.訪日前に最も期待されていること
全体では「日本食を食べること」(26.0%)、「ショッピング」(17.0%)、「自然・景勝地観光」(14.9%)の順となった。このほか、中国・韓国・米国・フランスの4か国別に回答傾向を見ると、中国は「ショッピング」(25.9%)が1位、韓国では「温泉入浴」(15.5%)が2位と他の国に比べてニーズが高い。米国・フランスでは「日本の歴史・伝統文化体験」(米10.9%、仏9.3%)が3位に入っていることが特徴的である。

4.外国人に人気の観光スポット
1位の「伏見稲荷大社」は参道の千本鳥居が、3位の「厳島神社」は満潮時に海上に浮かぶ鳥居が、日本らしさの感じられる美しい情景として外国人旅行者に人気が高いと見られる。これら社寺のほか、「サムライ剣舞シアター」(剣舞の鑑賞・体験施設)や「アキバフクロウ」(フクロウと触れ合えるカフェ)、「ギア専用劇場」(国籍問わず楽しめるノンバーバル(=言葉に頼らない)パフォーマンス)等がランクインしていることから、自国にはない非日常的な体験ができるコンテンツが人気であることがうかがえる。

奈良県からは東大寺(4位)・奈良公園(7位)が上位にランクインしているが、これは「大仏と鹿」というコンテンツが外国人にわかりやすく、高い評価を受けているためと考えられる。



Ⅲ.奈良県のインバウンドの現状
1.奈良県訪問外客数(推計)の推移
2015年の奈良県訪問外客数(推計)は1,033千人で、前年(664千人)比55.7%増となった。訪問外客数が全国3位の大阪府(同91.7%増)や同4位の京都府(同63.8%増)が急速に訪問外客数を伸ばす中、両府県から交通アクセスの良い奈良県にもその一部が流入していると見られ、奈良県訪問外客数は全国13位と高い水準となっている。

2.奈良県訪問外客数(推計)の国籍別内訳
中国(36.3%)、台湾(19.0%)、韓国(12.3%)の順で多く、全国と比べて中国が多い。対人口比奈良県訪問率をみると、香港(0.996%)や親日家が多いことで知られる台湾(0.834%)で高く、これらの国・地域では総人口の約1%に相当する旅行者が2015年の1年間に奈良県を訪れた計算になる。また、絶対数は少ないもののフランス(2.0%)やイタリア(1.4%)が構成比では全国を大きく上回っている。これら欧州からの旅行者は日本の歴史や文化に関心が高く、奈良県に所在する伝統的建築物にも興味があると考えられる。

3.奈良県の1人あたり旅行消費単価は全国最低
外国人旅行者の旅行消費額(推計)は56.9億円と全国24位であった。1人あたり旅行消費単価が5,505円(同最下位)と低いことが影響しており、その理由の一つは、大阪府や京都府からアクセスの良い東大寺や奈良公園等への日帰り観光が中心で、県内での宿泊を伴う滞在型観光につながっていないためである。実際、訪問目的を観光・レジャー目的に限ると、奈良県を訪問した外国人の平均泊数は0.5泊と全国46位で、千葉県(0.3泊)に次いで少ない。

4.1人あたり旅行消費単価は欧米系が高い
訪問外客数では下位にある豪州やドイツは1人あたり旅行消費単価が高い。総じて欧米からの旅行者は1人あたり旅行消費単価が高く、宿泊を伴った滞在型観光を行っていると見られる。一方で韓国や香港は、訪問外客数が多いものの1人あたり旅行消費単価は低水準にある。これらの国・地域は地理的に日本と近く、日本の歴史や文化に興味が高くないためと考えられる。



Ⅳ.奈良県が歩むべき今後の方向性
1.旅行消費額の増加に向けて
(1)1人あたり旅行消費単価の上昇が課題
奈良県訪問外客数は66.4万人(14年)から103.3万人(15年)へと増加した。外国人旅行者のもたらす消費は魅力的に映るが、1人あたり旅行消費単価の低さから旅行消費額の増加は約20億円にとどまると見られる。人口減少に伴う消費減少をすべて外国人旅行者の消費で補うことは難しくとも、県内経済活性化に向け1人あたり旅行消費単価を上昇させることが課題である。

(2)日帰り観光を宿泊へ繋げる工夫が重要
2015年の奈良県における外国人宿泊者は前年比78.0%増加した(観光庁「宿泊旅行統計調査」)が、その中には大阪府・京都府での客室不足に伴い、奈良県に流入した宿泊者が含まれると考えられる。大阪府・京都府での客室数増加により不足が解消されると、宿泊者の流入は減少する。

こうした中、奈良県は外国人旅行者の滞在を促すため、2015年7月に外国人観光客交流施設「奈良県猿沢イン」を開業。外国人旅行者向け観光情報の提供や観光ツアー商品の取次販売の他、日本文化を気軽に体験できる催しを開いている。外国人旅行者の滞在時間を延ばし、宿泊を促す取組みとしては、ライトアップイベントや飲み歩きツアー等も有効と考えられる。

2.個人旅行の獲得に向けて
(1)団体旅行から個人旅行へのニーズの変化
観光・レジャー目的で日本を訪れた中国人旅行者のうち、個人旅行者(団体旅行以外の旅行者)の割合は28.5%(2012年)から43.8%(15年)へと高まっている(観光庁「訪日外国人消費動向調査」)。眼前の団体旅行者に対して滞在時の満足度を高めることが、将来、個人旅行者として長期滞在してもらう布石となると考えられる。

(2)狙いを絞った誘致活動と観光コンテンツの充実
欧米系旅行者は、近隣のアジア諸国に比べて絶対数は少ないものの、個人旅行が約9割を占め、1人あたり旅行消費単価が高く、奈良県にとっては理想的な顧客と言える。

奈良県内での滞在型観光を増やすためには、奈良県に所在する歴史・文化的な遺産に関心が高く、かつ時間に余裕のある個人旅行を好む層に狙いを絞った誘致活動が必要である。加えて、個々のニーズに合わせた、日本や奈良県らしさの感じられる観光コンテンツを充実させる必要がある。

(3)地域一体となった観光戦略の策定と実行
個人旅行者の獲得も含め、インバウンドの誘致にあたっては、観光関連事業者や交通事業者、自治体等の多様な関係者間で目標を共有し、明確なコンセプトのもと地域が一体となって戦略を策定・実行していく必要がある。また、県北部地域に集中する観光客を中南部へ誘導する等、地域間の連携も求められる。

一方で、外国人旅行者に限らず観光客の増加を歓迎しない住民も存在する。多様な関係者間で複雑な利害関係を調整しつつ、中長期的な観点から地域の観光戦略を練り、積極的に取り組むことが必要となるが、個別的な取組みには限界がある。そこで注目されているのが、DMO(Destination Management Organization)である。

DMOとは、観光経済の最大化を実現するため観光を中心に据えた地域づくりを担う法人である。DMOには多様な関係者間で合意を形成し、着地型旅行商品の企画・販売や、ランドオペレーター業務※等の機能を果たすことが期待されている。(※旅行会社の依頼を受け、旅行先のホテルやレストラン、ガイドやバス・鉄道等の手配・予約を¬行うこと。)

奈良県内市町村を対象としたDMOとしては、一般財団法人奈良県ビジターズビューロー、一般社団法人高野吉野路ツーリズムビューロー(仮称)が候補法人として観光庁に登録されている(2016年10月現在)。今後、これらDMOを核として観光地域づくりが進展し、消費拡大による県内経済活性化を果たすことが望まれる。

[おわりに]東京五輪後を見据えた観光戦略を
これまでの五輪開催国の状況から、2020年の東京五輪開催まで訪日外客数は増加すると予測されている。しかし、その反動で翌年以降来訪が落ち込まないとも限らない。奈良県においては「2020年がピークだった」とならないよう、顧客ニーズをとらえた満足度の高いコンテンツ作りとリピーター化に努めることが求められている。奈良県が国際観光都市として一層輝きを放つことができるかは、これからの取組みにかかっている。 


このレポートで改めて気づかされたのが、Ⅳ.(3)の「DMO」だ。これが奈良県は弱い。全県一丸となったヨコの連携が少ないので、お客は奈良市だけを半日回り、大阪や京都に泊まりに帰ってしまう。私が会社帰りに近鉄奈良駅から電車に乗ると、車内は大阪や京都に泊まりに行く(帰る)外国人観光客ですし詰め状態である。車内ではにこやかに鹿と撮った写真などを眺め合っているが結局、おカネを落とさずゴミだけ落として奈良を離れるのだ。

DMOを県ビジターズビューローに丸投げしていては何も進まないし、高野吉野路ツーリズムビューローは、今のところ何の動きも見えない。故郷(紀州九度山)に帰ると、たくさんの外国人観光客が高野山をめざす姿が目につく。宿坊での宿泊や精進料理、早朝のお勤めなどが「異文化体験」といて支持されているのだ。大阪→高野→吉野→飛鳥→奈良、という観光コースを整備すれば、多くの(内外)観光客が利用することだろう。

今回の特集記事は、日本と奈良県のインバウンドの状況と今後めざすべき方向性がよく示されたレポートだった。幸か不幸か「爆買い」バブルがはじけ、これからはコンテンツで勝負する時代、奈良県の本領を発揮する時だ。


 
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