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同時進行!平城遷都1300年(34)祭典の成功に学ぶ

2011年05月15日 | 平城遷都1300年祭
「平城遷都1300年祭」(2010年)は、空前の大成功に終わりました。今年(2011年)の元旦、私は当ブログに《後世、奈良県の歴史は「戦前・戦後」ならぬ「1300年祭以前」と「ポスト1300年祭」(祭前・祭後)に区分されることになることでしょう。このお祭りで、奈良県の対外イメージは、著しく改善・向上しました。何より県民の意識が変わり、自信がつきました》云々と書きました。この成功体験を踏まえ、最近になって3人の有識者が提言を書かれました。いずれも傾聴に値する貴重な意見ですので、以下に要点部分を引用させていただきます。
※写真はすべて、今年の平城京天平祭(4/29)

1.「奈良の観光振興への3つの視点」 奈良県立大学教授 麻生憲一氏
※南都経済センター「センター月報」11年5月号「Opinion」欄
平城遷都1300年祭は、当初の予想を大幅に上回る来場者を迎え、無事成功裏に終えることができた。開催期間中の県内全体の総来場者数は延べ2140万人、主会場の平城宮跡では363万人を数えた。記念事業協会では、来場者全体の消費支出を約1280億円と推計し、全国への経済波及効果を約3210億円、県内では約970億円に上ると算出した。



今後、この成功を奈良の観光振興にどのように結びつけていけばよいのだろうか。それには3つの視点が必要であろう。

第一に、県内の観光拠点の広域連携を充実させることである。1300年祭では、「巡る奈良」をテーマに広域事業を展開し、来場者が県内を回遊できる道筋を作り上げてきた。今後、この連携をより強固なものとして、南部地域をも取り込んだ回遊システムを作り上げていけば、来場者の滞在時間は拡大し、宿泊者も増え、観光消費も拡大していくのではないだろうか。

第二は、人的交流を促進させることである。今回、県内地域のイベント会場では、来場者とスタッフ、ボランティアの人たちとの交流がこれまで以上に活発に行われ、来場者に喜んでもらえるもてなしを提供することができた。全国の成功事例をみると、多くの観光地では、これまでの「視察型観光から体験交流型観光」へと脱皮しており、地元民との人的交流により多くのリピーターが根付いている。奈良でも、いまその転換期を迎えているのではないだろうか。



第三は、観光地に対する住民意識の醸成である。

観光地としての住民の自覚があればこそ、来場者に対するもてなしの心も自ずと持つことができる。奈良の観光資源をより魅力的なものに磨き上げていくためには、行政や観光業者の力だけでは不十分であり、住民レベルでの観光に対する意識醸成が必要である。


[tetsuda私見]
《県内の観光拠点の広域連携を充実させること》は、ポスト1300年祭の最優先課題である。北和の宿泊施設の人たちは「大阪・京都に近いから泊まってくれない」という。南和の人たちは「遠いから敬遠されて泊まってくれない」という。これでは堂々めぐりである。北和だけでなく《南部地域をも取り込んだ回遊システムを作り上げ》ることが必要だが、それも「自治体がやってくれるだろう」と手をこまねいていてはいけない。まず動くべきは受益者だ。また、奈良県民自身が県内に泊まることも大切だ。宿泊統計によれば、県内客、県外客、外国人観光客のうち、他府県と比べて大幅に見劣りするのは「県内客」(観光客としての県民)なのである。来週、私は職場の慰安旅行で南和へ行く(吉野山に泊まり、御所・五條を回る)。ちょっとした心がけが必要だ。

2.「奈良でしか織れない旗 平城遷都1300年祭」 奈良県地域振興部長 田中敏彦氏
(前 社団法人平城遷都1300年記念事業協会事務局 副局長)
※奈良観光弘業「奈良文化・観光クォータリー」11年4月1日号
1年間、県内各地への来場者総数約2,000万。内、平城宮跡会場にはなんと363万人もの方々に訪れていただいた。夏は暑く冬は寒い1年であったが、予想を遥かにに上回る来県・来場者をお迎えする結果となった。特に顕著な傾向は、平城宮跡への来場者の約6割が県内各地に訪れていることである。1300年祭の開催により、平城宮跡がゲートウェイとなったのである。私自身も奈良の持つポテンシャルの偉大さを再認識することになる。奈良は「大仏商法」、動かない土地柄と言われて久しい。それは、観光に関して決定的な危機的状況に見舞われたことがないからではないだろうか。



しかし近年、修学旅行離れと相まって観光客数の減少が顕著になることに危機感を感じた一部の県民は地域を元気にしようと立ち上がる。しかし、その素材の観光拠点は全て点であることから脱しきれなかった。そんな時、1300年祭という大きな旗が挙がる。奈良には素材が有り余るほどある。その素材を活かし、点を線でつなぎ旗を織ることに挑戦すること、そのために一歩を踏み出すための実験こそが1300年祭である。一歩を踏み出さない限り、文字通り一歩も進めないのである。

知恵のある人は知恵を出す、金のある人は金を出す、どちらもない人は汗をかく、これでイベントの役割が決まる。平城遷都1300年祭は奈良でしか織れない旗、10年がかりで旗を織り、その旗印に県民が集まり、我も我もとその旗を振り続けたのだと感じた。




[tetsuda私見]
全く《奈良には素材が有り余るほどある》。観光資源の宝庫であるはずなのに、「倉庫」に成り下がっている。阿修羅像を倉庫から出した途端、東京だけで94万人を集めた。これまでは「演出力」が不足していたのだろう。足元の観光資源を見直すところから、ポスト1300年祭の企画が始まる。

3.「ポスト1300年祭の奈良観光」 奈良交通株式会社 取締役社長 中村憲兒氏
(奈良市観光協会 会長)
※奈良観光弘業「奈良文化・観光クォータリー」11年4月1日号
奈良県では、平成23年度予算に誘客(観光客誘致)の推進として、総額10億76百万余円が計上されました。特に、平城遷都1300年記念事業の継承に5億41百万余円、またポスト1300年記念事業として記紀・万葉プロジェクトの推進に43百万余円が計上される等、観光振興への新たな取り組みが進められています。

1300年祭を一過性のものにせず、更なる活性化に繋げるための今後の奈良観光を考えたとき、引き続き進めなければならないことは、まずは情報発信力の強化です。奈良の魅力、奈良の価値を全国各地に更に発信し続けることであり、その為には巡る奈良事業の発展継続や、新しい魅力ある旅行商品の企画等が必要であると考えています。

次に、地元の「おもてなし体制」の更なる充実です。1300年祭で活躍されたボランティアをはじめとする県民皆様の更なるおもてなしの心の醸成はもとより、宿泊施設の充実やパークアンドバスライドの活用といった交通渋滞対策などハード面の整備も引き続き進めなければなりません。



また、今後積極的に進めなくてはならないのが観光関係のリーダー、コーディネーターの育成です。今、奈良は「なら燈花会」、「なら瑠璃絵」、「バサラ祭り」等々、若手リーダーに育てられたイベントが、伝統的な行事にプラスする年中行事として奈良の魅力を高めています。素晴らしい事であり、こういった人材が育つ奈良であって欲しいと思います。

そして、それらを単発的なイベントに終わらせるのではなく、付加価値をつけることで更に奈良観光を盛り上げることができるのではないかと考えています。そのために「奈良らしい」根本的なコンセプトを定めること、そしてそれに沿ってそれぞれのイベントや催しに繋がりや広がりをもたせる総合プロデューサー役の登用や育成が今後必要であると思います。

今後も何度でも奈良に足を運んでいただくための取組みを、各界が一致協力したオール奈良で進める事が必要であると考えます。




[tetsuda私見]
奈良では《新しい魅力ある旅行商品の企画》が必要だ。そのためにもランドオペレーター(着地型旅行のプランナー)役が求められる。「なら燈花会」も「バサラ祭り」も、発足当初の「若者」たちが、今も現役で働き続けている。そろそろ若い人が代わってあげないと…。《根本的なコンセプト》も《総合プロデューサー》も奈良には欠けている。1300年祭の成功は、それらが揃っていたから実現した。大手広告代理店に頼らずとも、地元に人材はいる。埋もれた人材を登用して、やらせてみることが必要である。自治体職員の発想だけでは、限界がある。コンセプトを統一して《オール奈良》で取り組めば、必ず成功する。それを実証したのが、1300年祭の大成功である。

直接・間接に観光振興に携わっておられる有識者の意見はポイントを突いており、説得力があります。ポスト1300年事業に向けて、県の予算も計上されました。これを生かすか殺すか、奈良の力量が問われます。
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同時進行!平城遷都1300年(33)空前の大成功!

2011年03月27日 | 平城遷都1300年祭
平城遷都1300年祭の経済波及効果が発表された。奈良新聞(3/19付)「1300年祭 全国で経済効果3210億円 事業協会推計」によると《平成22年に奈良市の平城宮跡をはじめ県内各地でさまざまなイベントが開催された平城遷都1300年祭の経済波及効果について、近畿を含む全国で約3210億円、県内で970億円とする推計をまとめ、18日、主催者の記念事業協会が発表した》。

奈良県の県内GDPは約3兆7千億円(3,738,439百万円=06年度)だから、970億円は、その約3%に相当する。《県内の経済波及効果は当初想定した750億円の3割増。また波及効果を基にした雇用創出効果は県内で約1万300人、全国(近畿を含む)では2万3500人に上るとしている。協会の事業収支は3億3600万円の黒字となる見通し。定款の規定に基づき、負担金は4分の3を県に、4分の1を奈良市に寄付。協会は今月末をもって解散する》。

《記者会見した秋山会長は「当時の人々が、国難打開に都を造営して国の守りを固めた意気込みを平城宮跡に感じた人は多いと思う。平城遷都1300年祭が本物の歴史を生かし、国営公園化方式で行われたことや、地域挙げて祭典を盛り上げたことが成功につながった」などと総括。荒井知事は「協力していただいた1人1人に感謝したい」と述べた》。

赤字に終わった「ならシルクロード博」とは違い、ちゃんと3億円以上の黒字を計上したのだ、ああ良かった。しかも奈良県も奈良市も、黒字分(剰余金)は、東日本大震災のお見舞金などに充てるというから、これは美談だ。日本経済新聞(3/23付)によると《奈良県、遷都1300年祭の剰余金を見舞金に》《奈良県は22日、昨年開催した「平城遷都1300年祭」の剰余金約2億5千万円などを東日本大震災の被災地への見舞金に充てると発表した。6月の県議会で承認を得て送り先を決める。関連イベントとして開催した「全国都市緑化ならフェア」の剰余金約1500万円も見舞金とする》。


写真は、南都銀行女子ホッケー部のメンバー。平城宮跡で古代の打鞠(だきゅう=うちまり)を再現した(10.5.3 同僚のMくんが撮影)

一方、読売新聞奈良版(3/23付)「奈良市の1300年祭返還8400万円 ボランティア支援検討」によると《奈良市の仲川元庸市長は22日、昨年の平城遷都1300年祭を主催した記念事業協会の31日の解散に伴って市に返還される8400万円の使途について、東日本巨大地震の被災地に向かうボランティアへの支援を検討していることを明らかにした。仲川市長は「市民がまとまって行くバス代などが考えられる。息の長い支援活動に投じていきたい」と話した》。

週刊奈良日日新聞(3/25付)は、紙面の1ページ(全面)を使って、経済波及効果やポスト1300年祭構想(巡る奈良実行委員会の開催など)を報じた。見出しは《平城遷都1300年祭 空前の大成功 世界中から2140万人来訪》だった。

3/14に開催された「巡る奈良実行委員会」については県のHPに詳しく出ていて、《昨年開催した平城遷都1300年祭で実施した「巡る奈良」事業が大成功を収めたことを受け、更なる観光振興を図るためにこの実行委員会を設立しました。実行委員会形式にしたのは、イベントPRや広報戦略についての先進的な手法を、様々なイベント実施主体に伝えることで情報を共有し、一体的に情報発信することがねらいです。1300年祭の賑わいを一過性のものとせず、持続させていくことが大切であり、今後とも観光関係団体等と連携を図りながら、「巡る奈良」事業の取組みを発展、継続してまいります》というものだ。

同紙によると、にぎわい創出、快適な移動、道の駅、直売ネットワーク、宿泊、奈良の食、奈良らしい土産物、文化観光施設ネットワーク、観光ガイド、外国人観光客誘致、秘宝秘仏公開、記紀・万葉、観光情報発信の13の部門からなる「にぎわい・もてなし部会」を設けたという。ならの魅力創造課のHPにも詳しい情報が出ている。

また同紙では平城宮跡の活用などについて、奈良商工会議所会頭の西口廣宗氏がインタビューに答えている。見出しは「ポスト1300年元年 平城宮跡フル活用へ」。1300年祭には予想を上回る来場者があったこと、懸念していた交通渋滞もなかったことに触れたあと《昨年11月、奈良商工会議所と奈良市観光協会、県ビジターズビューローで、国営平城宮跡歴史公園の整備促進に対する要望を国や県、市に行いました》。

《平城宮跡には1300年祭終了後も多くの観光客が訪ねておられます。第1次大極殿院、朱雀門前、東院庭園と魅力的な施設があり、もっとPRすべきですし、新たな観光ルートの目玉になり得ると考えています。朱雀門前広場などでの定期的な催しなども検討していきたいと思います。行政のほうでもこれらの整備・活用に向けた予算を組んでいただいており、大変ありがたいと思っています》。

現在、奈良観光の中心スポットといえば東大寺南大門前だが、常に交通渋滞の問題がつきまとう。やたら修学旅行生が多く、じっくりと静かな奈良の魅力を味わうことができない。これを徐々に平城宮跡にシフトさせていく、というのは妙案である。阪奈道路や国道24号線の便が良く、大阪や京都からのアクセスが良い。広々している(東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせた面積より広い)ので、大人数の団体旅行客にも、十分対応できる。



記事に戻る。全国の商工会議所に対して行った1300年祭に関するアンケートによれば、《来訪者の半数が宿泊されましたが、内訳は県内が約60%、残る40%は大阪や京都など他府県に宿泊されたということです。40%の方を奈良にとどめることができなかったことは非常に残念です》。そして《県は先般、1300年祭のにぎわいを一過性のものにするのではなく、より飛躍的な発展につなげるため、官民連携による「巡る奈良実行委員会」を設立しました。大いに期待したいと思っています》。

なお、奈良まほろばソムリエ検定については《奈良商工会議所では「奈良検定」を実施しておりますが、実際のところ赤字です。役員レベルで今後、奈良検定をどうしていくかという議論になったこともありますが、奈良の観光振興のためには続けるべきだと思います。商工会議所としても奈良の観光振興のために協力させていだだきたいと考えています》。

1300年祭は黒字で終わり、その剰余金は東日本大震災のために活用される。宮跡会場は国営公園として、今後も活かされる。1300年祭を契機に作られた「奈良まほろばソムリエ検定」は、祭典の終了後も継続して実施される。良いことづくめで終わったのだ。問題は宿泊施設の不足だが、これは継続して取り組まなければならない。大型ホテルの誘致だけでなく、宿坊や町家ステイなど、幅広く検討してほしいものだ。



不謹慎な話で恐縮だが、震災がもし昨年の今頃に起きていたら、と想像すると、背筋が凍りつく。昨今の「自粛ブーム」を見ていると、とてもお祭りどころではなかっただろう。パレードなどは中止され、もちろん天皇皇后両陛下をお迎えすることもできなかったことだろう。

それにしてもこの「自粛ブーム」には、はなはだ疑問を感じる。昨日は、奈良県文化会館の「奈良県暮らしと環境フェスティバル」にスタッフとして参加したが、来場者は驚くほど少なかった。朝から雪がぱらつくという寒さと強風という要因もあったが、盛り上がりに欠けるのだ。原発事故により節電・省エネが叫ばれているなかで、こんな時こそ環境問題について楽しく学べるイベントはタイムリーで貴重な機会なのだが…。イベントは今日も開かれるので、ぜひ多くの方にご参加いただきたい。

その点、京都はエラい、奈良も見習わなければ。京都新聞(3/25付)「イベント自粛せず 京の政財界トップが緊急会議」によると《東日本大震災で京都経済への影響が懸念されていることを受け、京都府や京都市、府内の経済界、観光団体のトップが24日、京都市内で緊急会議を開き、イベントや事業の自粛は行わずに府内の観光や企業活動の振興を図ることを確認した。出席は、山田啓二京都府知事、門川大作京都市長、立石義雄京都商工会議所会頭、柏原康夫府観光連盟・市観光協会会長の4人。観光客の宿泊キャンセルなどが相次ぎ、対策のため急きょ集まった》。

《「自粛ムードだけでは日本の復興にはつながらないと訴えないといけない」(山田知事)、「被災者に心を寄せて関西から日本を元気に」(門川市長)との意見が出て、復興支援とともに経済活動の活性化が重要との認識で一致。金融機関や商工会団体などにも呼び掛けて「経済復興対策京都官民合同会議」(仮称)を立ち上げることを決めた。また、被災者支援の一環で府と市が25日からJR京都駅(下京区)2階の西改札近くに避難者用の緊急案内所を設けて対応する》。

「自粛ムードだけでは日本の復興にはつながらない」とは、全く正しいし、この時点でこういうメッセージを発するところがスゴい。日本中が萎縮している今、関西から日本を元気にしないでドーする、と私も言いたい。ポスト1300年元年を、自粛ムードで水を差してはならない。
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同時進行!平城遷都1300年(32)祭りのあと

2011年02月12日 | 平城遷都1300年祭
お昼休み時間、会社の食堂で同僚が話しかけてきた。「tetsudaくんは“1300年祭は大成功”ってブログに書いてたけど、“不満”の人が多かったんやね。4割以上が“成功かどうかわからん”って答えてるらしいで」。そんなアンケート結果が新聞に出ていたというのだ。奇妙なことを言う人もいるものだと、部屋に戻り古新聞の束をひっくり返してみると、情報の出所は読売新聞奈良版(2/8付)の記事だった。

この記事を紹介する前に、アンケート調査の詳細をきちんと書いておく。1/24、奈良県経済倶楽部(奈良市東向中町)で、「平城遷都1300年祭とその後」というセミナーが開かれ、県下の政官財関係者約80人が出席した。その席上でこの調査結果が発表されたのである。ブログ記事「ポスト遷都1300年祭」(byごみ減ネット)によると《大阪市立大学創造都市研究科の「教員・院生共同プロジェクト」による催しで、主催者のお一人である院生の村内俊雄さんからご案内いただいたものです。村内さんは民間企業から中学校の副校長に転身し、昨年3月に退職した後は大学で公共政策を学ぶ傍ら地域活動に取り組んでいるという、パワー溢れる熟年です》。

村内俊雄氏は、「奈良の将来ビジョンをつくるフォーラム」のメンバーでもある。《プログラムは、村内さんからのアンケート調査報告で始まりました。遷都1300年祭について、奈良県民を中心とする1191人に聞いた結果をまとめたもので、奈良県民は約半数が遷都祭に行ったこと、行っていない人の理由は「時間がない」が多かったこと、県外の人より県民の方が遷都祭の評価が高いこと、奈良市の公立中学校では学校行事として遷都祭を活用した例がほとんどないことなどがわかりました》。


写真はすべて、平城遷都1300年記念祝典の模様(10.10.8)

《続いて、奈良もちいどのセンター街協同組合専務理事の魚谷和良さん、ローカル・ガバナンス研究所代表の木原勝彬さんの講演。魚谷さんは、商店街としても遷都祭を盛り上げようと独自に「まちなか1300年祭」を開催した経験を踏まえ、「遷都祭は地元の人にとって、奈良の良さを再確認するきっかけになった」と評価しました。そして、「今後も奈良は観光が最大の強みだが、物見遊山的な観光客でなく、歴史好き・本物志向の観光客にまち歩きしてもらうことを目指すべき」と提言しました》。

《木原さんは、遷都祭の成果と課題を、県民意識、県民参加と協働、経済波及効果、観光イノベーション、自治体ガバナンスといった多様な側面から検証する必要があると指摘し、特に今回打ち出された東アジアプロジェクトをどう継承していくかが重要であると強調しました。また、ポスト1300年祭の戦略的プロジェクトとして、「平城京外京(奈良町)ルネッサンスプロジェクト」と、これらを推進する基盤としての「奈良の未来投資基金」システムの構築を提案しました。50人ほどが入る会場は満員で、講演後の質疑応答でも参加者から次々に質問や意見が出されるなど、活気のある会でした。ここで浮かび上がった課題や提案されたアイデアをどう生かすかは、すべての奈良県民に関わる問題と言えますが、特に県の役割は重要です。まずは熱が冷めない段階での、市民との協働による検証評価作業を望みたいと思います》。

有意義な発表だったようである。だから1/26付の奈良新聞も「1300年祭の成果を調査 今後の奈良展望」という記事で、村内氏のアンケートの概要を報じ、「1300年祭ではボランティアの活躍が大きな成果。交流の場をつくって今後につなげる必要がある。アンケートが市民活動につながれば」というコメントを紹介していた。

(追記)朝日新聞奈良版(2/13付)も、《遷都祭 市民目線で斬る 59歳大学院生が聞き取り》という見出しで報じ、村内氏の「全体的な評価は高かったが、課題もたくさん見えた、1300年祭が奈良発展のきっかけになるよう、調査結果を生かしたい」というコメントを載せていた。(追記終わり)

私も調査結果に興味を覚え、当日の配付資料をわざわざお送りいただいた。しかし、その内容は「“不満”の人が多かったんやね。4割以上が“成功かどうかわからん”」という同僚の話とは全く違い、ほとんどが好意的な回答だった。



これは昨年12月以降、《企業・自治体・学校・自治会の皆様に協力》してもらったアンケート調査である。対象者は1,191人(県民892人、関西他府県民274人、それ以外25人)。公平を期すため、煩を厭わず「一般向け質問」(7問)のすべての設問と結果を、ずらずらと並べてみる。

Q1.平城遷都1300年祭へ行きましたか?
・行った 全体44% 県民51% 関西他府県民22%
・「行った」の職業別内訳 勤務(サラリーマン・OL)42% 公務員36% 学生40% 教員43% その他61%
・感想 非常に良かった8% 良かった39% 普通25% あまり良くなかった6% 悪かった1% 不明(どの項目にも○をつけなかった)21% 
・行っていない人の理由 時間がない43% 興味がない18% 何をやっているかわからない10% 面白くない3% その他26%
[tetsuda私見]県民の過半数は、ちゃんとお祭りに行っている。感想も、全体の47%が好意的だ。行かなかった最大の理由は「時間がない」ということで、お祭り自体の評価とは関係がない。

2.「せんとくん」はお好きですか?
・好き+可愛い 県民47% 関西45%
・センスがない 県民17% 関西30%
・気持ち悪い 県民11% 関西11%
・嫌い 県民6% 関西3%
[tetsuda私見]悪評より、好評価の方が多いという結果だ。

3.平城遷都1300年祭は成功でしたか?
・はい 県民54% 関西37%
・いいえ 県民4% 関西1%
・わからない 県民42% 関西62%
[tetsuda私見]この設問には、お祭りに行った人も、行かなかった人も答えているところに注意を要する。同僚が「4割以上の人が“成功かどうかわからん”」と言うのは、この設問(「わからない」と答えた県民が42%)のことだろう。しかしこれは「態度保留」であり、「調査時点では、まだ評価できない」「行っていないから、そんなこと聞かれてもわからない」ということだろう。県民の過半数は「成功」と答えているのだ。関西他府県民で「成功だった」が37%と少ないが、そもそも祭りに行ったのが22%(77%は祭りに行っていない)なのだから、これは仕方がない。

4.平城遷都1300年祭は必要でしたか?
・はい 県民60% 関西54%
・いいえ 県民5% 関西1%
・わからない 県民45% 関西45%
[tetsuda私見]県民も関西他府県民も、過半数が「必要だった」と答えている。



5.平城遷都1300年祭が終わりましたが、この事業が奈良の発展につながったでしょうか?
・はい 県民47% 関西38%
・いいえ 県民7% 関西4%
・わからない 県民46% 関西58%
[tetsuda私見]おおむね好意的な評価だが、「わからない」が多い。これは「昨年12月以降」という、お祭りがまだ終わっていない時点で「発展につながったでしょうか」と過去形(または現在完了形)で聞いているところにムリがある。「発展」はこれからだ。「いいえ」の少ないのは、救いであるが。なお今回のアンケート結果では、「わからない」の回答が多すぎる。Yes、Noだけでなく「ややそう思う」「ややそう思わない」などの選択肢も、必要だったのではないか。

6.平城遷都1300年祭を開催して、良かった点・悪かった点をお聞かせ下さい。
7.奈良の魅力は何でしょうか。思いついたことを何でも書いて下さい。


これらの設問に対する回答は、報告されていない。その代わりとして、奈良市内(JR奈良駅、近鉄奈良駅、近鉄新大宮駅、近鉄大和西大寺駅周辺)で行われた「ヒアリング調査の報告」が出ている。対象者は飲食、物販、ホテル、交通関係の業者と寺院で、直接訪問しヒアリングされたものだ(3月までの継続調査)。これも公平を期すため、公表資料に載っていた「ヒアリング結果」のすべてを転記し、マイナス意見は赤で表示しておく。



Ⅰ.飲食
・立地によって差があるが、前年比10~20%増。
・団体を取り込む事による、売上増が大きい。
・昼と夕は伸びたが、夜は前年度と変わらない。
・会期中の売上は伸びたが、それ以外は前年度並か以下である。
・過去、イベントがあるときは売り上げが伸びている。
・今年の特徴は、インターネットとエージェントの予約が多かった。地方のエージェントの予約も目立った。
[tetsuda私見]6つのコメントのうち、マイナスは「それ以外は前年度並か以下である」の部分のみ。他は全てプラスか前年並みというコメントである。

Ⅱ.物販
・立地にもよるが、団体を取り込んだ先は大きく売上を伸ばした。30~40%増。
・団体はバスによる(り?)移動するため、これを引き寄せる工夫がされている。
・「せんとくん」の商品が良く売れた。
・商店街の人通りは多くなったが、売上に大きな影響はない。
「ならまち」は逆に観光客が減少し、「平城遷都1300年祭」に取られてしまった。
[tetsuda私見]5つのコメントのうち、マイナスは「『ならまち』は逆に観光客が減少」という部分のみ、あとはすべてプラスか前年並み。「ならまち」は、以前「県民の誇り、新たな歴史刻む大事業」というブログ記事で検証したように、阪神なんば線開業の年(09年)と比べて減っただけで、特殊要因のない平年と比べれば、ちゃんと増えていた。このコメントは、実感なのか、単に新聞情報を鵜呑みにしただけなのか判然としない。



Ⅲ.ホテル
・期間中の稼働率は、90%前後で、前年比10~20%増加。
・大手及びビジネスホテルは、非常に高い稼働率と売上増であった。
・しかし、上記以外の宿泊施設はGW・土日は満室だが前年比増程度である。
・団体が多く、早い時期から予約が入ってきた。
・イベント情報や奈良の情報を提供している。
・例年稼働率の悪い時期(6、7月)に落ち込まなかった。
・イベントにあわせて、同窓会的な集まりが見られた。
・ビジネスホテルは、夕食や土産物の相談を受けるが手頃なものがなく、返答に困る事がある。
・初めて来られる方が多いように思った。
・今回も含めて、イベントによる影響は大きい。
[tetsuda私見]おお、すごい。マイナスのコメントはない。「ビジネスホテルは、夕食や土産物の相談を受けるが手頃なものがなく、返答に困る事がある」というコメントは、どこの誰が言ったのか知らないが、奈良市内で「夕食や土産物」に困るなんてことは、ゼッタイにありえない。必要なら、いくらでも教えてあげますよ!

Ⅳ.交通
・売上げは前年度比10増(10%増か)程度であるが、2年前の売上げに戻っただけである。
・奈良市は大幅増であるが、県南部は売上が前年減となった。
・専用のパンフレットを作成し、観光タクシーの需要が大きく伸びた。平城京(平城宮跡か)を含む半日コース(2万円)。
・東京からの予約が多かった。
・国際会議でVIP(対応)の経験ができて良かった。
・ハイヤーが奈良にはなく、京都から調達。
・修学旅行が増えた。
[tetsuda私見]こちらもマイナスは「県南部は売上が前年減となった」という部分のみ、あとはプラスばかりだ。

以上アンケート結果の正当な「中身」を紹介したが、この調査の「設計」については、やや問題なしとしない。職業別に見ると、勤務(サラリーマン・OL)36%、公務員12%、学生(中学生)15%、教員26%、その他11%と、日本の人口構成から相当かけ離れていて、公務員がやたら多い。逆に主婦や自営業者は少ない。学生も中学生のみだし、男女別も分からない。ちゃんと男女半々になっていたのだろうか。

世間一般の意識調査などを見るとに、公務員の意識は、サラリーマンなどの意識とは、相当隔たりがある。それは、上記1.のお祭りに「行っていない」との回答は、公務員が一番多くて63%にも達しているところからも分かる。設問の「平城遷都1300年祭」も、平城宮跡会場のことなのか、「祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」などを含む「巡る奈良」事業が入っているのか、入っていないのか分からない。あまりにもファジーな質問である。この種の調査には、慣れていないのだろう。



さて、冒頭で触れた読売新聞記事(2/8付)に戻る(すでにこの記事は、ネットでは閲覧できない)。公正を期すため見出しを全て拾うと《県は好評と言うけれど 1300年祭 市民は不満も 告知不十分/地元の関心薄 「成功か不明」4割超す 奈良の男性アンケート》と、身もフタもない。次に、記事全文を紹介する。

まずリード文は《昨年の平城遷都1300年祭の成果について、県民ら1000人以上を対象にしたアンケート調査が行われている。「事前告知が足りない」「地元の関心が薄い」などの声のほか、中学生から「寺社だけのマンネリ化から抜け出せた」などといった鋭い指摘もあり、「好評だった」とする主催者側の県とは、違う視点が見えてきている》。

《調査は、奈良市北登美ヶ丘、村内俊雄さん(59)が実施。村内さんは2007年4月から3年間、奈良市立三笠中で全国初の民間人教頭として勤務。昨年3月に退職後、大阪市立大大学院でまちづくりを研究しており、地元で開かれた1300年祭をテーマに、昨年12月から調査に取り組んでいる。3月末に最終結果をまとめるという》。

《奈良市内の地域性を考慮して抽出した中学生178人のほか、教諭や会社員、公務員ら計1191人が回答。良かった点、悪かった点について、中学生からは「ポイ捨てが増えた」「(前評判ほど)目立った行事がなかった」などと、大人顔負けの“辛口”の意見が続出した。一方で、「奈良のすごい所が分かってもらえた」と、今後に期待する声も。ただ、実際に1300年祭に行った生徒は4割止まりだった》。私が入手した公表資料に上記「」付きのコメントは一切出ていない。村内さんから直接聞いたのだろうか。

《県民全体(892人)でも、1300年祭に行った人が51%、行かなかった人が48%と伯仲。「成功か」「必要だったか」「奈良の発展につながったか」との項目は、すべて「はい」が多数を占めたが、「不明」も4割以上に達していた》。どうやら、この《「不明」も4割以上》の部分に整理部が飛びついて《「成功か不明」4割超す》という見出しをつけたようだ。「成功か不明」と書くと「成功かどうか疑わしい」(doubtful)という意味にとれる。しかし原文はあくまで「わからない」(no answer)であった。そもそも県民の48%は、お祭りに行っていないのだ。「成功か」「必要だったか」「奈良の発展につながったか」との項目すべてに「はい」と答えた県民はそれぞれ54%、60%、47%で、すべて「わからない」(no answer)を上回っている。



《また、観光業界などの聞き取り調査では、「商店街の人通りは増えても、売り上げに貢献しなかった」「県南部は観光客が減少した」「立地にもよるが、団体客のバスを引き寄せる工夫が必要」といった指摘も寄せられた》。前の2つの「」は原文にあるが、最後の「立地にもよるが、団体客のバスを引き寄せる工夫が必要」は明らかに引用ミスだ。原文は「立地にもよるが、団体を取り込んだ先は大きく売上を伸ばした。30~40%増。団体はバスによる(原文のまま)移動するため、これを引き寄せる工夫がされている」で、「現実に工夫が行われていた」と好評価していたのだ。実際、1300年祭では、ひっきりなしにバス客が奈良を訪れていた。

《1300年祭には、県内全域で、延べ1740万人(昨年10月末の中間まとめ)が訪れ、消費額の試算は967億円に上った。荒井知事も記者会見で「予想を相当上回り、ありがたい」としていた。村内さんは「県民の過半数が行ったという数字ほど地元の盛り上がりはなかったのでは。ただ、ボランティア活動は大きな成果で、この波を今後、どのように生かせるかを考えたい」と話している》。

高い評価を得たアンケート結果のわりに、村内氏のコメントは辛口で、とても残念に思う。特に《県民の過半数が行ったという数字ほど地元の盛り上がりはなかったのでは》という部分は理解し難い。「どれほどの人がお祭りに行ったか」という客観的な「数字」(県民の51%が「行った」、うち「悪かった」は1%のみ)を取るために、わざわざアンケートを行ったのである。その結果の「数字」ほどには盛り上がらなかった、という主観的なマイナス評価は、一体何に基づくのだろうか。しかも上述したように「行っていない」という県民の最も大きい理由は「時間がない」45%で、これは盛り上がりとは関係がない。以前、朝日新聞奈良版(10.11.8付)が、1300年祭は「ぎりぎり合格の60点」と言い放った奈良県立大学教授のコメントを紹介していたが、それと同じく唐突なコメントである。

ネットなどで原データを明かす調査と違い、特定の人しか結果を把握できないアンケート結果は、特に公平・公正な情報開示が必要である。新聞情報に踊らされた粗忽者の同僚を、笑ってばかりはいられない。
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同時進行!平城遷都1300年(31)知事の1300年祭レビュー

2011年02月04日 | 平城遷都1300年祭
1/20、関西元気文化圏推進協議会(会長 秋山喜久関西広域機構会長)は、関西から日本を元気にした個人・団体などに贈る第8回「関西元気文化圏賞」大賞に、平城遷都1300年記念事業協会を選んだ。協会の皆さん、おめでとうございます!

朝日新聞奈良版(1/21付)《知事「奈良の歴史力、開花」》によると《「関西元気文化圏賞」の大賞に、平城遷都1300年記念事業協会が選ばれた。大阪市で20日あった贈呈式には、協会理事長の荒井正吾知事と公式マスコットだった「せんとくん」が出席した。平城遷都1300年祭は昨年1年間、平城宮跡や県内各地の寺社などで開かれ、全国から多数の人が訪れた。同文化圏推進協議会(秋山喜久会長)は、協会について「歴史・文化遺産などを活用し、バラエティーに富んだ催しを展開。奈良県のみならず、関西の観光振興に大きく貢献した」と高く評価した》。

《荒井知事は「奈良が持つ歴史力が開花し、それを多くの人に楽しんでもらえた結果」とあいさつ。せんとくんは一昨年の同文化圏賞のニューパワー賞に続いて2度目の受賞。トロフィーを受け取ると、深々と頭を下げた。昨年には興福寺の国宝阿修羅像が同文化圏賞の特別賞を受賞しており、県関係の受賞は3年連続になる》。3年連続とはすごい。せんとくん(ニューパワー賞)→阿修羅像(特別賞)→1300年記念事業協会(大賞)と、毎年着実にランクを上げていたのだ。


薬師寺西塔(10.4.8)

今回の贈呈式には、荒井知事(協会理事長)が出席されていた。年末から1300年祭閉幕後の2011年に入ってからも、同祭に関する知事の発言が各メディアで報道されている。いくつかピックアップし、同祭の総括として紹介させていただく。まずは元旦の奈良新聞「新春知事対談」。聞き手は同社の甘利代表である。1300年祭で知事は《売り出すもとを、本物の値打ちを発掘し展示しようと思いました。直ちにお客さんに飛びついたりしないように、「奈良の値打ち」を発掘したかった。奈良の値打ちは関東の人がよく知っている。その反応を見て、分析しようと。案外、近過ぎたら分からなかったりするんですね》。

《予想以上だと感じたのは、奈良に来る人は奈良をより深く知り、親しもうとされていた。奈良をよく知ろうとされ、とても上品に見ていただいたと思います。観光を一過性のものにしないためには、帰る時、どんな気持ちで帰っていただくかが一番のポイントになります。粗末に「もう来なくていい」などと扱っていたら、「奈良は修学旅行以来、来たことがない」ということになってしまう》《そのために「おもてなしの気持ち」を大切にしようと思いました。何度も来ていただいたのは、お客さまが奈良のことをよく知ろうとされたことと、サービスの面でボランティアの存在が大きかったと思いますね。ボランティアを中心に、県の職員も、平城遷都1300年記念事業協会の職員も精一杯のおもてなしをした》。

ポスト1300年について《奈良では宿泊施設の課題もあります。(宿泊客が)あふれて、よそに行ってしまうのは寂しいですね。それと今度よく分かったのはコンベンションの問題です。季節を問わず、奈良のコンベンションはとても喜ばれます。確かに警備は大変ですが、APEC(アジア太平洋経済協力会議)観光大臣会合も成功し、次はサミットを持って来たいという高い目標を持っています》《また南部も「巡る奈良」の継続が課題です》。


「ナント・なら応援団」ガイド事前説明会で(以下の2枚とも)大安寺(10.3.25)

次に、元旦の週刊奈良日日新聞の「荒井正吾知事 新春インタビュー」。聞き手は同社の藤山代表である。知事は《特に、巡る奈良事業の1つとして初の取り組みとなった『奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳』には約391万人の来場者があり、大半の社寺で前年比約2~10倍になった》《平城遷都1300年祭は観光振興の1つのパターンとなったが、このイベントの最大の成功要因は協働の力というか県民、ボランティアの力だと思う》《ボランティアというのは自発的なものであり、民の力。県としては平城遷都1300年祭という場を提供、支援したにすぎず、そこに社寺、観光関係者や地域の方々が参画し、地域イベントなどを展開していただいたわけで、参加者、ボランティアの手によってにぎわいをつくっていただいたと感謝している》。

逆に、1300年祭で浮き彫りになった課題は《やはり、バラエティーあふれる宿泊施設がもっと必要だった。そしてレベルの高いレストラン、コストパフォーマンスに優れた食事場所も必要だったように思う》《経済効果はそこそこあったとは思うが、私としては逆に経済効果を狙わなかったことが良かったのではないかと思っている。財布を狙うと感動は生まれない。財布の後ろのハートを狙わなければ、奈良の観光は良くならないと考える》。

1期4年間を振り返ると《平城遷都1300年祭は行事が先行したが、平城宮跡の国営公園化が印象深い。国営公園化により、世界に比べようのない超一流の観光地となったのではないか。一方で、残念だったのはホテル誘致がなかなかできなかったこと。県外観光客が予約を取れない状況が、ずっと続いている》。


岡寺(10.3.30)

1/30付奈良新聞にも、対談「ポスト1300年 観光 民間パワーで新風」が掲載されている。聞き手は明新社社長の乾昌弘氏(NPO法人奈良元気もんプロジェクト理事長)だ。知事は《平城遷都1300年祭はいろいろな工夫をさせていただき、結果として多くの人に来ていただきました。奈良の本質に気づいていただくとともに、奈良県民に奈良の魅力の本質に目を向けていただくきっかけになったのではないかと思います》《地方のイベントのグレードが高まるように苦心してきましたので、その点ではよかったと思います》。

《奈良県の観光事業で最も反省するべき点は、観光資源を十分に活かしてこなかったということです》《1年間を通じてボランティアの方々にはたいへんお世話になり、平城遷都1300年祭の成功に大きく貢献していただきました》《今回、観光ガイドなど目の前でお客さまが反応するボランティア(活動)がありました。お客さまは奈良のことを深く勉強しておられて、ハイレベルの内容を要求されることも多かった。したがって、観光ガイドももっと自分自身を高めなければということに気づかれ勉強された方が多かったと聞いています。このように、お客さまの満足とともにボランティア自身が高められていくということがある、そのような成長が観光の本質であると私は思います》。




県のHPにも、知事の発言がたくさん掲載されている。1300年祭や観光振興に関するものをピックアップする。まずは県職員向けメルマガ(10.12.20付)に掲載された「2010年を振り返って」。《私が奈良県知事となってからは、1300年祭を中心に仕事をしてきたような気がします。今年のはじめは、来訪者が少ないとか、地元であまり盛り上がらないなど、様々な課題があり苦労もありました。しかし、100年に一度しかない巡り合わせの時期ということもあり、4月の平城宮跡メイン会場のオープン以後は、たくさんの方々に奈良を訪れていただくことができました。また、10月8日の「平城遷都1300年記念祝典」では、天皇陛下に「奈良県民の幸せを祈ります」というお言葉を賜りました。奈良県は本当に幸せな県だと思っています》。


西山厚氏による岡寺での現地講話(10.5.21)

《このようなイベントなどを通じて、奈良が多くの人々に見直されてきたことにより、奈良の人も地元を見直し、自信や誇りにつながったということは、大変喜ばしいことです。1300年祭では、物ではなく“歴史の展示”に焦点を当て展開をしたということが、大きなインパクトになったのではないでしょうか。“奈良の持ち物である歴史”というものは、途方もないとても大きな値打ちだったということです。奈良の歴史の素材や奥深さはまだまだありますので、これからも“歴史の展示”に邁進しようと考えています》。

《職員の皆さんには、「1300年祭は職員の研修の場」と言ってきました。1300年祭を通じて、様々な体験ができたと思います。それが、お客さんに喜んでもらうことにつながったり、1ステップ300年祭の成功により、県内の経済活性化にもつながったと思います。アンケートの結果でも、「会場が清潔だった」「ボランティア・職員の対応が良かった」などの答えが多く、それは、職員と関係者の心からのおもてなしがあったからだと思っています》。

《行政がイベントをするということには、まちを活性化させるという大きな目的があります。イベントの舞台が不足しているなら舞台をつくる、舞台に行く花道が不足しているなら花道をつくるという、そんな考え方が大事だと思いま目標達成す。ただハードがあればいいということではなく、舞台として整備することが必要なのです》。


事前説明会・薬師寺(10.4.6)

平成22年仕事納め式」挨拶(10.12.28)では《10年以上前から県を中心として平城遷都1300年開催の研究会がスタートしておりました。途中で私がバトンタッチをさせていただいたわけでございますが、10年以上の年月をかけてこられた柿本前知事のご努力が今年いろいろな形で実り、成就したというように思います》《特に今年はボランティアの方々には大変熱意をもって参加していただきました。また、心を込めておもてなしをいただきましたので、大変好評でございました。この成功の一番の原動力は、ボランティアの方々のおもてなしの心であったかと思います。そのようなおもてなしの心が残って再び奈良にお越しになる方も多くなると期待をいたします》。

《この事業のなかで、いろいろなことを県庁の我々も学ばせていただきました。県民の方と共にいろいろな地域を興す、平城宮跡の事業よりも地域のイベントにたくさんの人が来られた、あるいは東アジアとの連携で、今まであるものが見直されたと思います。奈良の持っている値打ちが、我々県民が知らなかった値打ちが確認されたという面もあったかと思います。そこにあるがゆえあまり気に留めていなく、また十分な掘り起こしもしていない宝が、随分奈良には埋まっているということを確認した次第です。このような学習の場でもあった平城遷都1300年祭を振り返りながら、奈良がユニークな歴史を持った地域であるということを確認しながら、奈良の発展につなげていければと思う次第でございます》。

平成23年仕事始め式」(1/4)では、《昨年は遷都1300年、1年通じて行いまして無事終わりました。お正月はやはりホッとした感じがございました》《一つ確認できたのは、県庁がいろいろ率先して、いろいろなご意見には十分耳を傾けながら、率先してチャレンジすると、いろいろな道が開けてくることもあるということは一つの体験であったように思います。チャレンジということで、従来と違った形で事を行わなければいけませんので、従来していなかったから、国の方針でないから、ということでするわけではなく、何かしないといけないというモチベーションがこの地域から、体の中から湧いてくるような仕事ぶりがわれわれの職場にとっていいのかなと感じたところでございます》。


事前説明会・秋篠寺(10.10.13)

そして1/4の定例記者会見では「今年の抱負」を話された。《県庁の役割として、3つ大きな役割といいますか、パワーを発揮すべき分野があるように思います》。3つとは1.分析力、2.構想力、3.実行力である。《1つは分析力です。テリトリーにかかわる情報の分析力を発揮できる組織ですので、行政組織の大きな役割は調査力だと思っていました。その調査は地域性を持っていますので、他の地域との比較、それと国際的な中での比較》。

《分析のない情報はありません。現場の声も一つですが、それはほかの現場の声と比較して初めて情報になると思いますので、たくさん出かけないと情報にならないのが普通です。一つの意見というのは情報にならないという観点からすれば、統計的な手法になりますが、行政の歴史のトレンドと、他府県や他の地域との比較という分析力を、できるだけ地域に還元するというのが県の大きな役目になります》。

《地域の方向をどのように示すのかという構想力ですが、構想はどの分野でも持てるわけなので、いろいろな考え方が出てくると思いますけれども、県はその分析をもとにした構想の方向を提示できます。その提示をどのように実行するかというのは、議会なり世論のコメントを踏まえた上でのことになりますが、分析力、構想力、実行力というのは中間地域を持っている自治体の大きな役目かなというふうに改めて思います》。

《そのようなサイクルを見ていますと、その中で実現する種も出てきますので、種をまいて実現するといろんな仕事も面白くなるのではないかと思いまして、楽しく仕事をしていただきますようにと仕事始め式でのあいさつにつながった次第です。原点に立ち返った仕事を心がけたいと思います》。

1300年祭で、知事はボランティアを高く評価していただいた。活動に関わってきた私としては、大変光栄であり、また有り難いことである。従来、奈良県民は不親切だと言われ続けてきた。県外出身者である私の見るところでは、これは単に「シャイな人が多い」ということであり、根はみんな親切で、もてなしの心にあふれている。


知事からの感謝状贈呈式(10.12.15 トップ写真とも)

あまり誰も指摘しないが、昨年の県民ボランティア成功の最大の要因は、あの「真っ赤な制服」にある。制服を着ると、人が変わるのだ。物怖じしていたり、人見知りしていた人が、生まれ変わったように積極的になり、自信がつく。一旦自信がつくと、制服を脱いでも大丈夫。大切なのは、もてなしの「心」ではなく、もてなしの「行為」なのだ。心を具体的な行動へと駆り立てたのが、あの「制服」なのである。

観光客から見てもあの制服は安心感を与えるようで、私は町なかのお寺で赤いジャンパーを着てガイドをしていて、休憩時間に外へ出ると、よく道を尋ねられた。「今日はよく道を聞かれる日だなぁ」と思っていたが、要は制服を着ていたから「この人なら大丈夫」と思われたのだ。

最後の「1.分析力、2.構想力、3.実行力」は、観光振興にも当てはまる。従来は観光データすら踏まえず、思いつきの構想でとりあえずやってみて、一度うまく行かなかったらもうやめる、ということの繰り返しだった。当ブログで、私が口やかましく「観光データの正確性」にこだわるのは、それがすべての出発点になるからだ。ポスト1300年祭の観光シーズンが、まもなく始まる。今年は奈良県をどのように盛り上げるか、私も今、構想を練っているところである。
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ナント・なら応援団への感謝状贈呈式

2010年12月22日 | 平城遷都1300年祭
奈良国立博物館・学芸部長の西山厚さんが毎日新聞奈良版に連載されているエッセイ「奈良の風に吹かれて」(12/22付)に、こんなことが書かれていた。当日のタイトルは「平城遷都1350年に向けて」である。《遷都1300年祭は成功したと言ってよい。やってよかったと本当に思う。奈良の人は奈良を知らないと言われて久しいが、今年、奈良の多くの人たちが奈良を知った。奈良のよさを知り、それを伝えたくなった。今年の最大の成果はそこにあると私は思っている》。

《奈良の人が奈良のよさを知ったのは、「奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」事業によるところが大きいと思う。奈良の各地で実施された特別開帳には、平城遷都1300年記念事業協会の職員、公民館のスタッフに加え、たくさんのボランティアが協力した。奈良をもっと知り、奈良のためにがんばりたいという人たちが、猛暑の平城宮跡会場で献身的に活動してくれた方々を含め、今年、奈良に続々と現れたのである》。


薬師寺で行われた感謝状贈呈式(12/15)

これは有り難いお言葉である。平城宮跡探訪ツアーガイドは約400人、宮跡でのもてなしボランティアは約1900人、奈良マラソンは約4000人。秘宝・秘仏開帳のガイドでは、学生86人(南都古社寺研鑽会の86人が、20の社寺等で約350人日)と、会社員OB・OG36人(ナント・なら応援団の36人が23の社寺等で約900人日)が協力した。 こんなにたくさんのボランティアが活躍したイベントというのは、例がないのではないか。ほぼ1年間にわたるという期間の長さも、驚異的である。

12/15(水)、南都銀行の退職者36人によるボランティアグループ「ナント・なら応援団」が、薬師寺と荒井知事から表彰された。まず午前10時30分、薬師寺本坊で、執事の生駒基達(いこま・きたつ)さんから感謝状が授与された。藤田優さんが、同応援団を代表して拝受した。同寺では4~10月の毎月2日間、1日あたり5人が拝観者の誘導・案内役を務めた。「もてなしの心」を発揮して丁寧に応対し、拝観者からご好評いただいた。



生駒執事からは、猛暑だった7~9月にも、汗だくになりながら懸命にお手伝いしたメンバーへのねぎらいと感謝の言葉を頂戴した。この期間、他のお寺への派遣はなく、唯一、薬師寺チームだけが出動したのである。おまけに立ったままの仕事だったので、労力は大変なものだったのだ。

午後3時からは、荒井正吾知事(社団法人平城遷都1300年記念事業協会理事長)から「ナント・なら応援団」と、地元学生らによるボランティアグループ「南都古社寺研鑽会」に感謝状が贈られた。朝日新聞奈良版(12/21付)「ボランティア2団体を知事が表彰」によると、《平城遷都1300年祭の主要事業として県内の50を超す社寺で行われ、県内外から多数の拝観者が訪れている「祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳~」。「ご開帳したくても人手がない」という社寺をボランティアで手伝った県内2団体が、荒井正吾知事から表彰された。》。「ナント・なら応援団」への感謝状は、南都銀行を代表して、嶌川安雄常務取締役が拝受した。
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000351012210001



《南都銀行OBでつくる「ナント・なら応援団」(36人)は、薬師寺(奈良市)や金峯山寺(吉野町)など23カ所で活躍。大学教授らから奈良の歴史について計20時間の講義を受け、各社寺での研修を経て臨んだ。最初はカンニングペーパーを見ながらたどたどしかった人も、慣れるにつれワンマンショーのように解説できるようになったという。多い日で約1400人が訪れた壺阪寺(高取町)の三重塔でガイドを務めた吉本幸弘さん(63)=橿原市=は「プロじゃないので、立て板に水というわけにはいきませんが」と断りながらも、スラスラと約5分間にわたって寺や塔の歴史を語った。》。
※平城遷都1300年記念事業協会のプレスリリース
http://www.1300.jp/about/news/press/2010/pres101209.html

《「塔の建築技術は東京スカイツリーにも参考にされる高い技術」など興味深い解説に思わず拍手する拝観者もいた。長年接客経験を積んできた元銀行員にガイドは打ってつけのようで、メンバーからは「新たな生きがいを見つけた」と来年以降の継続を望む声も出ている。社寺からのリクエストもあり、何らかの形で活動を続ける方針という》《15日に県庁であった表彰で、荒井知事は「遷都祭の成功は陰にひなたに助けてくれたボランティアの方たちのお陰。大変お世話になりました」とお礼を述べた》。
※知事から「ナント・なら応援団」に感謝状!(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/14a6bdc55e46a8fccb4a59eb3ab1b4f9



奈良新聞(12/17付)でも《拝観者のもてなしに努め、文化財や拝観者の安全確保に取り組むなど、事業の成功に貢献した》《ナント・なら応援団の門口誠一さんは「自分にとっても勉強になり、楽しく案内説明をさせていただいた」》と報じられた。
http://www.nara-np.co.jp/20101217102051.html

今回の寺院ボランティアガイドで特筆すべきは、拝観者、お寺、主催者(平城遷都1300年記念事業協会)から感謝されただけではなく、ボランティアをしたOB本人からも「楽しかった」「新たな生きがいをみつけた」と喜んでいただいたことである。発案者の私としては、とても光栄なことである。

毎日新聞奈良版(12/9付)に連載されている仲川順子さん(奈良NPOセンター理事長)のエッセイ「順子さんのわくわく通信」に、こんな話が載っていた。タイトルは「退職後の居場所」である。


12/18(土)、今年の活動の最終日となった壷阪寺三重塔前で(次の写真も)。吹く風は冷たかった

《いつの頃からか、活動仲間に退職男性の姿が増え始めました。お酒が入ると、いつも物静かな男性たちからも本音がでます。「なぜボランティアを始められたのですか」と問うと、「会社のために一生懸命働くことが家族や社会にとって一番良いこと、みんなを幸せにすることだと信じてきました。仕事がなくなって振り返ってみると、取りこぼしてきたことも多かったかなと……。地域のことも政治への関心もすべて後回しにして、仕事最優先。やっと時間ができて地域に戻ってみると、隣近所に知り合いもなく、誰にも必要とされていないようで、孤独でゾオッとしました」》。

《今はNPOに居場所を見つけて「こんな世界もあったのですね。楽しいですよ」と柔らかい表情で語っていました。「あまり縛られるのはもう堪忍してほしい。でもどこかに帰属しているという実感がほしかった」という男性もいます。活動時間や場所を自分で選べて、柔軟に受け入れてもらえるところがあると活力を取り戻せるそうです》。



《人の知恵や力を必要としている団体はたくさんあります。そこで活動を始めた人たちは、モノやお金に換算できないやりがいと優しさを体感します。自分を再発見する人も多いです。ゆっくりとソフトランディングしながらでも、社会を良くしていく活動に参加してみませんか》。

通常、ボランティアグループというものは「ヨコ社会」であり、企業は「タテ社会」。すると、一企業の退職者ばかりを集めたグループは、ヨコ社会にタテ社会の論理を持ち込むリスクがある。だから内心「現役時代の職位を、そのまま持ち込む人が出てくるのではないか」と危惧していたし、企画段階で「人間関係がうまく行かず空中分解するから、やめておいた方がよい」との助言もいただいた。しかし、それは全くの杞憂(きゆう)であった。グループの中では上下関係ではなく、ごく自然な役割分担・機能分担が出来上がり、きわめて良好なチームワークが形成されたのである。

来年以降の同応援団の方向性は、現在検討中であるが、今年の活動で培った貴重な経験は、地元・奈良県を盛り上げる大きなパワーとなるに違いない。36人の先輩たち、1年間の素晴らしい活動を有り難うございました!
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