週刊奈良日日新聞に「奈良ものろーぐ」を寄稿している(毎月第4金曜日)。今月(10月26日)掲載されたのは、「十津川深瀬/秘境の恵みをご家庭に」だった。有限会社十津川深瀬は、私の友人の従姉にあたる深瀬眞理子さんが経営されている。
※トップ写真は十津川深瀬の製品。中央が「十津川ゆべし」
同社の製品は「奈良のうまいものプラザ」(JR奈良駅構内)などでよく買い求める。味は当然ながら、故・清水公照師の絵や墨書をあしらったパッケージや包装紙などのセンスがとてもいい。『家庭画報』や『VOGUE』がこぞって紹介するはずである。
十津川深瀬の主力商品は「十津川ゆべし」(柚餅子)。本文にも書いたが、NHKの朝の連続テレビ小説「まんぷく」でも、主人公の福子がお向かいの女性から「田舎から送ってきたゆべし。お茶漬けにしたら、ものすごう美味しいんよ」と、ゆべしをおすそ分けしてもらうシーンがあった(10月22日放送分)。ゆべしは十津川郷以外にもあるようで『日本大百科全書』「柚餅子」によると、
柚干(ゆびし)、柚圧(ゆべし)とも書く。丸柚餅子が本来で、蒸し菓子の一種。室町時代には柚醤(ゆびしお)、柚味噌(ゆみそ)などとともに酒席の佳肴(かこう)とされ、柚味噌釜(がま)とも称した。1643年(寛永20)刊の『料理物語』によると、「柚味噌のごとく口をきり実をすて、味噌、生姜(しょうが)、胡椒(こしょう)などよくすりて、かや、ごま、あんにん、そのまま入まぜて、ふたを合わせからげ、よくむしてほし、あまにつり候てよし」とある。
この仕法が菓子に移行してからは、みそ、糯(もち)米粉、砂糖をこねたものを柚釜に詰め、蒸して乾燥させる製法にかわった。保存のきく珍菓である。岡山県高梁(たかはし)市、石川県輪島市、長野県飯田(いいだ)市、奈良県吉野地方、和歌山県龍神温泉などに、ユズを原形のまま蒸して乾燥させる丸柚餅子が伝えられている。和菓子のなかではもっとも高価な菓子である。
このほか柚餅子の名品には新潟市西蒲(にしかん)区福井に棹物(さおもの)柚餅子がある。糯米粉に柚汁(ゆじる)、砂糖、みそをあわせて蒸し上げた棹物で、1829年(文政12)に本間楢右衛門(ほんまならえもん)により完成した。また東北地方には「くるみゆべし」などの平柚餅子が多い。
では、そろそろ本文を紹介する。
十津川深瀬 秘境の恵みをご家庭に
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」専務理事 鉄田憲男
『街道をゆく12十津川街道』で、司馬遼太郎は十津川郷を次のように紹介している。「十津川郷とは、いまの奈良県吉野郡の奥にひろがっている広大な山岳地帯で、十津川という渓流が岩を噛むようにして紀州熊野にむかって流れ、平坦地はほとんどなく、秘境という人文・自然地理の概念にこれほどあてはまる地域は日本でもまずすくないといっていい」。
壬申の乱の昔から勤王の精神が厚く、そのため明治初年の「廃仏毀釈」では、村内にあった55の寺がことごとく破壊された。「あれで村の文化が失われた」と嘆く人もいる。
有限会社十津川深瀬(十津川村大字重里997 代表取締役 深瀬眞理子さん)は、十津川郷の食材を生かした加工食品を手がけておられる。同社の主力商品は「十津川ゆべし」である。ゆべしは柚餅子、柚圧、柚干(ゆびし)などとも書く山里の伝統食で、文献には室町時代から登場する。各地で作られ、NHK「まんぷく」でも「田舎から送ってきたゆべし」とご近所さんからいただくシーンがあった。
十津川ゆべしに添えられたしおりには「保存食として、また、酒の友、お茶漬けの友として各家庭ではなくてはならない自然食品でした。その伝統の味を昔のままの手づくりで、ゆずの香を生かし山菜等を田舎味噌で加工し、“和風チーズ”ともいわれているのがこの十津川ゆべしです」。同社のゆべしは『家庭画報』『VOGUE』『anan』などに取り上げられた逸品で、確かにお酒によく合う。スライスし、薄切りのチーズやリンゴを挟むとまたおいしい。
ゆべし以外のお薦めといえば「鮎あぶり」だ。鮎を一本一本串にさし、数日かけてあぶったソフトな燻製である。オーブントースターで軽くあぶり直すと、香ばしい炭火焼きの味がよみがえってくる。他にも梅じゅ~す、柚子ぽんしょうゆ、鮎みそなど、まさに秘境の恵みのオンパレードだ。
深瀬家は代々、林業を経営されてきた。同社の創業は昭和48(1973)年で、平成3年、有限会社に。平成21年に急逝された父・毅氏の跡をつぎ眞理子さんが2代目の代表取締役に就任された。
東大寺長老だった故清水公照師のお目にとまり、包装紙やパッケージの絵や墨書は、師が揮毫(きごう)された。
同社の製品は、県内では近鉄百貨店奈良店、奈良のうまいものプラザ(JR奈良駅構内)をはじめ、南和の道の駅などでお買い求めいただける。眞理子さんは今年の4月「関口宏のニッポン風土記」(BS-TBS)に出演され、十津川郷の魅力を存分に語った。関口は「十津川に行ってみようかな」。
眞理子さんは「当社の製品はすべて里人の手づくりで、新鮮さと、山の味、川の味をそのままパックしたもので、保存料、人工甘味料は一切使っていません。当社製品を通じて、多くの方に十津川郷の魅力を知っていただき、足を運んでいただきたいです」と語る。十津川深瀬を、そして十津川郷をよろしくお願いいたします!
十津川は「遠つ川」からきているそうで、実際とても遠いが、十津川深瀬の製品は奈良でもお買い求めいただける。十津川深瀬の逸品、ぜひご賞味ください!
※トップ写真は十津川深瀬の製品。中央が「十津川ゆべし」
同社の製品は「奈良のうまいものプラザ」(JR奈良駅構内)などでよく買い求める。味は当然ながら、故・清水公照師の絵や墨書をあしらったパッケージや包装紙などのセンスがとてもいい。『家庭画報』や『VOGUE』がこぞって紹介するはずである。
十津川深瀬の主力商品は「十津川ゆべし」(柚餅子)。本文にも書いたが、NHKの朝の連続テレビ小説「まんぷく」でも、主人公の福子がお向かいの女性から「田舎から送ってきたゆべし。お茶漬けにしたら、ものすごう美味しいんよ」と、ゆべしをおすそ分けしてもらうシーンがあった(10月22日放送分)。ゆべしは十津川郷以外にもあるようで『日本大百科全書』「柚餅子」によると、
柚干(ゆびし)、柚圧(ゆべし)とも書く。丸柚餅子が本来で、蒸し菓子の一種。室町時代には柚醤(ゆびしお)、柚味噌(ゆみそ)などとともに酒席の佳肴(かこう)とされ、柚味噌釜(がま)とも称した。1643年(寛永20)刊の『料理物語』によると、「柚味噌のごとく口をきり実をすて、味噌、生姜(しょうが)、胡椒(こしょう)などよくすりて、かや、ごま、あんにん、そのまま入まぜて、ふたを合わせからげ、よくむしてほし、あまにつり候てよし」とある。
この仕法が菓子に移行してからは、みそ、糯(もち)米粉、砂糖をこねたものを柚釜に詰め、蒸して乾燥させる製法にかわった。保存のきく珍菓である。岡山県高梁(たかはし)市、石川県輪島市、長野県飯田(いいだ)市、奈良県吉野地方、和歌山県龍神温泉などに、ユズを原形のまま蒸して乾燥させる丸柚餅子が伝えられている。和菓子のなかではもっとも高価な菓子である。
このほか柚餅子の名品には新潟市西蒲(にしかん)区福井に棹物(さおもの)柚餅子がある。糯米粉に柚汁(ゆじる)、砂糖、みそをあわせて蒸し上げた棹物で、1829年(文政12)に本間楢右衛門(ほんまならえもん)により完成した。また東北地方には「くるみゆべし」などの平柚餅子が多い。
では、そろそろ本文を紹介する。
十津川深瀬 秘境の恵みをご家庭に
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」専務理事 鉄田憲男
『街道をゆく12十津川街道』で、司馬遼太郎は十津川郷を次のように紹介している。「十津川郷とは、いまの奈良県吉野郡の奥にひろがっている広大な山岳地帯で、十津川という渓流が岩を噛むようにして紀州熊野にむかって流れ、平坦地はほとんどなく、秘境という人文・自然地理の概念にこれほどあてはまる地域は日本でもまずすくないといっていい」。
壬申の乱の昔から勤王の精神が厚く、そのため明治初年の「廃仏毀釈」では、村内にあった55の寺がことごとく破壊された。「あれで村の文化が失われた」と嘆く人もいる。
有限会社十津川深瀬(十津川村大字重里997 代表取締役 深瀬眞理子さん)は、十津川郷の食材を生かした加工食品を手がけておられる。同社の主力商品は「十津川ゆべし」である。ゆべしは柚餅子、柚圧、柚干(ゆびし)などとも書く山里の伝統食で、文献には室町時代から登場する。各地で作られ、NHK「まんぷく」でも「田舎から送ってきたゆべし」とご近所さんからいただくシーンがあった。
十津川ゆべしに添えられたしおりには「保存食として、また、酒の友、お茶漬けの友として各家庭ではなくてはならない自然食品でした。その伝統の味を昔のままの手づくりで、ゆずの香を生かし山菜等を田舎味噌で加工し、“和風チーズ”ともいわれているのがこの十津川ゆべしです」。同社のゆべしは『家庭画報』『VOGUE』『anan』などに取り上げられた逸品で、確かにお酒によく合う。スライスし、薄切りのチーズやリンゴを挟むとまたおいしい。
ゆべし以外のお薦めといえば「鮎あぶり」だ。鮎を一本一本串にさし、数日かけてあぶったソフトな燻製である。オーブントースターで軽くあぶり直すと、香ばしい炭火焼きの味がよみがえってくる。他にも梅じゅ~す、柚子ぽんしょうゆ、鮎みそなど、まさに秘境の恵みのオンパレードだ。
深瀬家は代々、林業を経営されてきた。同社の創業は昭和48(1973)年で、平成3年、有限会社に。平成21年に急逝された父・毅氏の跡をつぎ眞理子さんが2代目の代表取締役に就任された。
東大寺長老だった故清水公照師のお目にとまり、包装紙やパッケージの絵や墨書は、師が揮毫(きごう)された。
同社の製品は、県内では近鉄百貨店奈良店、奈良のうまいものプラザ(JR奈良駅構内)をはじめ、南和の道の駅などでお買い求めいただける。眞理子さんは今年の4月「関口宏のニッポン風土記」(BS-TBS)に出演され、十津川郷の魅力を存分に語った。関口は「十津川に行ってみようかな」。
眞理子さんは「当社の製品はすべて里人の手づくりで、新鮮さと、山の味、川の味をそのままパックしたもので、保存料、人工甘味料は一切使っていません。当社製品を通じて、多くの方に十津川郷の魅力を知っていただき、足を運んでいただきたいです」と語る。十津川深瀬を、そして十津川郷をよろしくお願いいたします!
十津川は「遠つ川」からきているそうで、実際とても遠いが、十津川深瀬の製品は奈良でもお買い求めいただける。十津川深瀬の逸品、ぜひご賞味ください!