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tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

万博も開幕し、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

ナイトタイム観光を推進しよう!/観光地奈良の勝ち残り戦略(141)

2025年03月13日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
南都経済研究所が発行する『ナント経済月報』(2025年3月号)の「研究員の視点」欄に、〈ナイトタイムエコノミーのポテンシャル〉という記事が掲載されていた。執筆されたのは、上席研究員の秋山利隆さんだった。「ナイトタイムエコノミー(夜間観光)」というと何だか仰々しいが、要は夜の時間(日没~日の出)を使った観光ということだ。
※トップ写真は、なら燈花会で撮影(2012.8.8)

かつて私は京都市内の営業所に勤務しているとき、「夜の定期観光バス」に乗車したことがある(業界の親睦会)。アフター5に、京都文化博物館(旧日銀京都支店)の見学、神社の舞台での芸舞妓さんの踊り、「包丁式」の見学、そのあと夜の庭園を眺めながら京料理、というコースで、京都の文化をよく知ることができた。

「こういう定期観光バスのコースが奈良にもあれば、泊まってもらえるのになぁ」と思ったが、当時の奈良にはなかったし、今も(常設は)ないようだ。若草山・高円山からの夜景、お坊さんの出張法話、LAMP BAR などの一流のバーめぐりなど、できることは数多いのだが。今の時期なら、東大寺二月堂の「修二会」を組み込むこともできる。

何より奈良は清酒の発祥地なので、定期観光バスでなくても、地酒の飲み比べなどのイベントも楽しいし、お酒を飲めば泊まりたくなる。

早朝のイベントなら、社寺への朝拝(朝参り)という手もある。早朝のすがすがしい境内の雰囲気を味わうことができる。朝食に、名物「大和の茶粥」を味わうのも、良いだろう。夜や朝なら、昼間のオーバーツーリズムを避けることもできるので、良いことずくめだ。いかがだろうか。では、秋山さんの記事を以下に紹介する。

ナイトタイムエコノミーのポテンシャル
大阪・関西万博の開催は、関西全体の存在感を世界的に高め経済・産業の新たな飛躍のきっかけとなることから、経済産業省近畿経済産業局は「拡張万博」と称し、近畿2府4県と福井県で万博活用戦略を展開している。また、各自治体では地域特性を踏まえた施策が実施されており、豊富な観光資源を有する奈良県は、大阪観光局との連携協定などを通じて、万博を契機とした広域観光推進に取り組んでいる。

上記の連携協定事項の1つに「ナイトタイムエコノミー(夜の観光)の推進に関すること」がある。ナイトタイムエコノミーは、日没から日の出までの消費行動や社会活動への参加を指す。欧米ではロンドンやニューヨークで経済効果や雇用者数が試算されており数字の裏付けが示されている他、アムステルダムなどの先進都市では、いわゆる夜の街と行政の橋渡し役を担うナイトメイヤー(夜の市長)制度により、騒音問題など住民側の意向を踏まえた上で、ステークホルダー間の信頼関係を構築する仕組みが形作られている。

一方、東京都が2022年に実施した調査では、ナイトタイム観光に関する外国人観光客の行動は、食や買い物に関する行動と比べて下位に低迷しており、裏を返せば今後の伸びしろが大きいと言える。ナイトタイムの活用は観光消費額の拡大の他、時間帯の分散を通じたオーバーツーリズムの緩和にもつながることから、わが国の成長戦略と社会問題解決の両面から注目されている。

ここまでナイトタイムエコノミーに係る取組みを紹介してきたが、そのいずれもが世界的な大都市に関する内容である。これらに共通して存在するのは、ナイトタイムエコノミーの重要な要素である飲食店・宿泊施設の集積と、経済活動を恒常的に支えるビジネス需要である。

この2要素が大都市に比べて少ない地方都市は、ナイトタイムエコノミーの推進にどのように取り組んでいくのがよいだろうか。ここでは奈良県内での施策展開を踏まえ、3つの視点から考察する。

1点目は「昼の賑わいを夜に再現すること」である。文化観光が中心の奈良県では、昼間の観光地の賑わいと夜間の静寂の差が大きい。それが奈良県の良さであり地元民の誇りの一つでもあるが、経済面では弱みとなり、日帰り観光が多い一因ともなっている。

なら燈花会や社寺の特別拝観などの夜間イベントが期間限定で実施されているが、観光消費に対するインパクトは限定的である。奈良県は飲食店や娯楽施設が大都市に比べて少なく、当該イベントを目的とした宿泊需要を除くと、その経済効果はどうしても小さくなる。

2点目は「その地域にしかない夜のコンテンツの発掘」である。奈良県では奈良時代からの神社仏閣や奈良公園(鹿)が思い浮かぶ。関係者の協力が前提となるが、実証事業などで地域資源の新たな可能性を発掘していくことが重要だろう。

3点目は「日の出前後の時間の活用」である。早朝のイベント参加は、大阪方面への終電時間に間に合う夜間イベントよりも宿泊需要が高まる。夜の奈良を効率的に楽しんでもらい、早朝に奈良県にしかないコンテンツを体験してもらうことで、観光客の満足度も高まるのではないだろうか。

外国人観光客の消費行動は、体験型観光などの「コト消費」のウェイトが高まっている。地方都市のナイトタイムエコノミーは未開拓な部分も多くポテンシャルは大きいと言えるが、公共施設の夜間利用に係る財政負担や夜間・早朝の移動手段の確保、人手不足の問題についてもあわせて精査・検討していく必要があるだろう。

【参考文献】齋藤貴弘著「ルールメイキング ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論」(学芸出版社)


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奈良市の観光力回復、道半ば/観光地奈良の勝ち残り戦略(140)

2024年09月07日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
先日、産経新聞Web版(2024.9.3 7:30)に〈奈良市の観光客数は好調に回復も、経済効果は市外流出〉という記事が出ていた。これは奈良市のニュースリリース〈宿泊客数がコロナ前の2019年超えの174.8万人!(2019年比1万人増)2023年 奈良市観光入込客数調査について【市長会見】(令和6年7月31日発表)〉に基づいて書かれた記事である。
※写真・グラフは、奈良市観光戦略課のHPから拝借した

産経の記事や奈良市のニュースリリースは楽観視しているが、私としてはもう少し慎重に考えている。まずは記事全文をお読みいただきたい。なおアンダーラインと番号は私がつけた。

奈良市は、令和5年(2023年)の観光入り込み客数が1219万9千人①で、前年を31・3%上回ったと発表した。新型コロナウイルス禍前の元年(2019年)の約7割まで回復し、宿泊客数も前年比、元年比とも増で好調。



ただ、経済波及効果は、観光消費額994億7千万円のうち約35%が市外の業者らへの支払いで、観光サービスを支える市内での産業の育成や支援が課題となりそうだ。コロナの感染症法上の分類が5類相当に移行したほか、旅行代金を割り引く全国旅行支援が後押ししたとみられる。



日帰り客数は前年(2022年)比32%増の1045万1千人で、元年比では33・3%減。一方、宿泊客数は174万8千人で、前年比で26・8%増、元年比では0・6%増②③だった。宿泊客数は1~12月の全月で前年同月を上回り、宿泊需要の底堅さを示した。



外国人観光客数は184万5千人。前年の約10倍に膨れ、インバウンド効果が顕著だったが、元年比では44・4%減と回復途中④であることを示した。宿泊者の国籍別では中国が5万4千人でトップだったが、全体に占める割合は20・8%で元年を37・8ポイント下回った。中国政府による団体旅行の解禁が昨年8月まで遅れた影響とみられる。代わって米、台湾、仏などが急増した。



観光消費額は994億7千万円。ただ、経済波及効果の推計では、市外からの原材料購入やサービス料などを除いた直接効果が648億円とされ、差し引き346億円程度が市外へ支払われたとみられる。直接効果から波及する間接的な波及効果を合わせると、全体の経済波及効果は857億円⑤だった。


①入り込み客数(日帰り客+宿泊客)は1219万9千人で、2019年の70%、さほど回復したとは思えない。
②宿泊客数は174万8千人で、2019年よりは0.6%(1万人)増えているが、コロナ禍前のピークである2017年の180万6千人より3%(5万8千人)も減っている。また、コロナ渦中の2022年よりは増えているが、宿泊施設数も増えているので、「宿泊需要の底堅さを示した」とまでは言い切れない。
③宿泊率(宿泊者数÷入り込み客数)は14.3%で、前年(2022年)の14.8%より減っている。
④外国人観光客数は徐々に戻って来てはいるが、肝心の「外国人の宿泊客数」が分からないので、どれだけ消費に貢献したかが分からない。また中国経済が低迷する中、かつてのような「爆買い」は期待できないだろう。
⑤奈良市への経済波及効果は857億円(入り込み客1人あたり7千円)ということだが、これは長年の商慣習など構造的な要因があるので、大幅に増やすことは難しいだろう。

冷静に数字を読めば、上記のようになるだろう。奈良公園や東向商店街に観光客が増えているのは有り難いことだが、もっと「おカネを落としてもらえる仕組み」を作らなければ、「ゴミだけ落として帰る」ことになりかねない。

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奈良県観光の問題点、YAHOO!ニュースでも指摘!/観光地奈良の勝ち残り戦略(139)

2024年06月20日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
以前、当ブログでも奈良県観光の「少額、短時間、集中」問題を紹介したことがあるが、このたび「YAHOO!ニュース」(2024.6.13 11:51配信)で、フリージャーナリストの高田泰さんが、奈良県観光の問題点を指摘されていた(もとはMerkmalの記事)。
※写真は全て2024.5.30(木)13時半頃、東向商店街で撮影

本文は以下に貼り付けたのでお読みいただきたいが、地元民としては、少し違和感がある。奈良県に宿泊する観光客が少ないのは事実だが、その原因は「奈良県内の宿泊施設不足」ではない。宿泊施設数が少ないのは事実だが、稼働率も低い。つまり、もともとお客が来ないのだ。



東向商店街(近鉄奈良駅前)の飲食店主の話が紹介されているが、そもそもこの商店街でいつも行列が出来ているのは(南から順に)、「牛カツ京都勝牛 近鉄奈良駅前店」、「どうとんぼり神座(かむくら)奈良東向商店街店」、「とんかつがんこ奈良店」の三店で、神座だけはかろうじて奈良県ゆかりの企業だが、すべて大手チェーン店である。これでは、「地元におカネが落ちている」とは言えないのではないか。



外国人観光客の多い京都市と奈良市はよく比較されるが、京都市内の「金閣寺」(鹿苑寺)と「銀閣寺」(東山慈照寺)を比較していただきたい。写真映えのする金閣寺にはたくさんの外国人観光客がお参りするが、銀閣寺にお参りする外国人観光客は驚くほど少ない。ビジュアルによってこれほどの差がつくのだが、これが華やかなイメージの京都と、地味なイメージの奈良の差になっているのではないだろうか。

あと、奈良県観光については「滞在時間の短さ」がよく話題になるが、NHKのBSに「2時間でまわる☆☆☆」という番組があり、HPには〈大手旅行会社によると、観光地で過ごす時間はおよそ2時間〉とある。どこの観光地でも、同じようなものではないだろうか。

まあ、そんなことを考えながら、この記事を読んだ。果たして皆さんは、どう感じられるだろうか。

「大阪&京都がうらやましい」
奈良市をゲンナリさせる訪日外国人“昼だけ観光”問題!
夜はガラガラ、大仏もびっくりの状況だ


日中の混雑は京都の嵐山並み
奈良県奈良市の奈良公園周辺が昼間だけ訪日外国人観光客で混雑している。奈良県内の宿泊施設不足から、訪日客の多くが大阪や京都から数時間立ち寄り、帰っていくからだ。

初夏の日差しが照りつける6月上旬の昼過ぎ、奈良公園に近い奈良市東向中町の近鉄奈良駅に大阪難波からの急行列車がほぼ満員状態で滑り込む。降りてくるのは、大半が訪日客。英語やフランス語、中国語、韓国語とホームにさまざまな外国語が飛び交うが、重いキャリーバッグを引きずる人はあまり見かけない。

駅を出た訪日客は歩道いっぱいになって東の奈良公園へ向かう。駅前の東向商店街にはまっすぐ歩けないほどの人だかり。奈良公園へ続く歩道に現れた名物のシカは、見る間に訪日客に取り囲まれた。

奈良公園とその周辺には官民合わせて40か所以上の駐車場があるが、満車になっているところが多かった。東大寺、春日大社、興福寺など周辺の寺社は、訪日客と修学旅行客であふれている。観光公害が指摘されている京都市の嵐山とさして変わらない混雑ぶりだ。

奈良観光、宿泊客の課題
奈良県を訪れる観光客は例年、9割近くがこの地域に集中する。奈良県奈良公園室は「訪日客の数はコロナ禍前を超えている感じがする。ごみは散乱するし、慢性的な交通渋滞も起きている」と頭が痛そうに話した。

ところが、夕方が近づくと状況が一変する。訪日客の多くが帰路を急ぎ、近鉄奈良駅に次々に入っていくほか、大宮通りや登大路はバスやマイカーの渋滞が続く。東向商店街も人の波が絶え、夜が更ける前に早々と店じまいするところが少なくない。訪日客の多くが奈良市に宿泊せず、大阪市や京都市から来ているからだ。

奈良公園でシカにえさをやっていたカナダの男性(58歳)は「大阪のホテルに連泊し、関西を楽しんでいる。朝から奈良に来ているが、これから京都へ行く」という。奈良県庁近くのカフェで休憩中のイタリア人女性グループは「京都のホテルに滞在し、大仏を見に来た。奈良は半日だけ。夜は京都へ戻り、祇園で食事する」と教えてくれた。

客室数はいまだ全国最低水準
奈良公園周辺は近鉄奈良駅やJR奈良駅から急行や快速列車を使えば、大阪市や京都市から40~50分の位置にある。しかも、奈良市の主要観光地が奈良公園周辺に密集しているため、短時間で見て回ることができる。大阪市や京都市から昼間だけ数時間立ち寄って観光するには、もってこいの場所だ。

日本政府観光局がまとめた2023年の都道府県別訪日客訪問率で奈良県は7.8%と、東京都、大阪府、千葉県、京都府などに続く「全国7位」に入った。ところが、観光庁の2023年宿泊旅行統計調査速報値を見ると、宿泊客数は訪日客だけなら延べ約31万人泊で全国の都道府県で26位。日本人観光客も含めると延べ約260万人泊で最下位近い「44位」にとどまる。

宿泊施設増加に向けた取り組み
原因のひとつが奈良県内の宿泊施設不足だ。奈良県観光戦略課によると、ホテル、旅館、簡易宿所を併せた奈良県内の客室数は、2022年度で奈良市とその周辺を中心に約1万200室。長く全国最少だったが、2022年度も44位と最下位近くを抜け出せていない。

奈良市内では、2020年に奈良市役所近くの三条大路に奈良県初の外資系高級ホテルとなる「JWマリオット・ホテル奈良」(158室)、奈良公園に「ふふ奈良」(30室)がオープンした。2023年には奈良公園の旧知事公舎を活用した「紫翠ラグジュアリーコレクションホテル奈良」(43室)が誕生するなど高級ホテルの進出が続いている。

2024年9月には奈良市役所近くの大宮町に「ノボテル奈良」(264室)、2026年には奈良公園から歩いて20分ほどの般若寺町で国の重要文化財に指定されている旧奈良監獄を星野リゾートがホテルに改造する「星のや奈良監獄」(48室)が開業する。近鉄奈良駅前の奈良県中小企業会館と奈良商工会議所会館の跡地もJR東海などがホテルを計画中だ。

奈良県は宿泊施設の誘致に力を入れ、山下真知事が2023年11月、東京都内で開かれたセミナーで開発業者やホテル事業者に対し、奈良県への進出を呼び掛けた。だが、高級ホテルが増えても、宿泊施設の全体数は全然足りない。

観光消費額は全国平均のほぼ半分
昼間にちょっと立ち寄るだけの観光地だと、単価が高い宿泊費や夜の飲食代が入らず、「地元に落ちる金」が少なくなる。奈良県の2021年観光客動態調査報告書によると、奈良県を訪れた観光客ひとり当たりの観光消費額は5308円。全国平均の9931円を大きく下回っている(53%)。

東向商店街の飲食店主は「昼間は地元の常連が入店できないほど混むこともあるが、訪日客が夜までいてくれないと大してもうからない。大阪や京都の飲食店がうらやましい」と肩を落としていた。

奈良市は奈良公園周辺で朝や夜のイベントを企画して観光客の滞在時間を増やそうとしている。春日大社境内でホルンの音色でシカを集める「鹿寄せ」、夏の夜にろうそくの灯りで古都を彩る「燈花会」、猿沢池のライトアップなど、多彩な催しが開催されてきた。

奈良市観光戦略課は「昼間に奈良公園へ立ち寄り、大阪や京都へ戻って夕食を楽しむ観光客が多い。宿泊施設の数がそろうまでは少しでも長い時間、奈良に滞在してもらえるようイベントを工夫したい」と力を込めた。

奈良は東大寺の大仏があるおかげで何もしなくても人が集まり、商売が成り立つことから、「大仏商法」とやゆされてきた。不足している宿泊施設がそろうまでには、まだ時間がかかる。大仏商法を脱却してインバウンドブームに乗る知恵と工夫が必要だ。
高田泰(フリージャーナリスト)
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奈良の観光は「安い、浅い、狭い」って?/観光地奈良の勝ち残り戦略(138)

2024年05月19日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
奈良の観光について、〈「安い・浅い・狭い」脱却を 県観光戦略会議 初会合〉(毎日新聞奈良版 2024.5.16 付)という記事が各紙に出ていた。「安、近、短」は聞いたことがあるが、46年も奈良県に住んでいて、「安い、浅い、狭い」と聞いたのは初めてだ。
※トップ写真は、興福寺境内の桜(2024.3.31 撮影)

「どうもしっくり来ないな」と思っていると、「TBS NEWS DIG」というサイトに、〈『奈良の観光は、安い・浅い・狭い』マイナス面を三拍子で…こんな結論は誰が作った?奈良県観光戦略本部に聞くと〉という記事が出ていた(5/18付)。全文を引用すると、

以前から、“宿泊客が少ない”などの課題が挙げられている奈良県は、観光戦略本部を立ち上げて、15日に初会合を行った。そこで委員らに示された資料には、奈良観光のマイナス面をはっきり示す衝撃的なキーワードが並んでいる。結論『現在の奈良の観光は 安い 浅い 狭い』これはどういうことで、誰が作成したのか。資料を読みとき、県の担当者に話を聞いた。

◆安い=観光消費額が少ない
奈良県を訪れる観光客は、一定数いる。コロナ前の2019年は全国19位(4500万人)、インバウンド客に至っては2位大阪、4位京都に続く全国トップクラスの5位(350万人)。それにもかかわらず、1人あたりの観光消費額5308円は、全国平均の9931円に大きな開きがある。

日帰り客の消費額、6年間平均を見ると、飲食費は1344円。土産代は1156円。入場料は369円。飲食費はランチ代+飲み物程度か。こうしたデータから圧倒的に「奈良観光は安い」ことがわかる。入場料の平均369円といったところから、県は体験やアクティビティなどの消費額はほとんどない、と分析している。

◆浅い=滞在時間が短い
奈良県で宿泊する客は非常に少ない、これは昔から課題に挙げられている。過去9年はほぼ46位、最高は44位で、最低は47位だ。外国人訪問者数が全国5位に達した2019年も、外国人宿泊者となると全国24位に沈んでいる。奈良を訪れた観光客の94%は日帰りを選ぶ。宿泊者の割合は6%、これは和歌山県の半分の値だという。

◆狭い=奈良公園周辺ばかり
人流は、年間通じて奈良公園エリアに集中。桜シーズンの吉野には人流のピークがあるものの、飛鳥、橿原、平城宮跡などほかの地域にピークはほぼない。

インバウンド客に限ると、なんと85%が奈良公園周辺だ。県は誘客イベントをするにしても、奈良公園周辺以外には、飲食店や宿泊先の受け皿環境がないとした。また、観光客が来訪するのを待つ「大仏商法」の側面が否定できないとした。

◆結論を三拍子にしたのは奈良県自身だった
こうしたデータを基に、「現在の奈良の観光は 安い 浅い 狭い」の三拍子で結論づけられた。これを作ったのは、奈良県自身だった。県の担当者によると、原案は観光戦略課が作成し、その後上司に上がるなど、県として資料をまとめ上げていく中で、結論部分は『端的にまとまった、わかりやすい言葉が必要』という意見が出たという。

その結果、奈良県自らが『安い、浅い、狭い』の三拍子を打ちだした。『浅い』は『滞在時間が短く、深い魅力を知ってもらえていない』の意。ある意味自虐的にも聞こえるが、その心は、課題を明らかにしてテコ入れし、変えていこうとする姿勢のあらわれだという。

山下真知事「素材は良い、ポテンシャルはある」
初会合を終えた山下真知事は、奈良県について「素材は良い、ポテンシャルはある」と話した。観光戦略本部は、2030年度の数値目標を、宿泊者数500万人(273万人)、一人当たり観光消費額は6000円(4569円)などと定めて、これまでのように県全体を対象にしたプランニングではなく、各地の状況にあわせて、小さいところからはじめるという。

奈良の観光は「高い、深い、広い」に変わることはできるだろうか。戦略本部は、各地で観光地としての「磨き上げ」などが必要だとしている。


なーんだ。観光消費額が少ない、滞在時間が短い、奈良公園周辺に集中、ということなら「少額、短時間、集中」とすれば良かったのではないか。もっと短くするなら「少、短、狭」か。これは要するに、以前から言われている1つの事象(観光客が奈良公園周辺に集中する)を3つにバラして言っているだけなのだ。

「大仏商法」を悪口のように使っているのも、気になる。これはもともと「東大寺の大仏という優れたコンテンツを持つ奈良には、自然と多くの参拝客・観光客が集まる」という羨望の言葉だった。

それが次第に「大仏があることにあぐらをかいて、観光振興の努力を怠った」という悪い意味に使われるようになった。そもそも他府県民は「大仏商法」という言葉をよく知らないから、この悪い意味での「大仏商法」は、県民の自虐の言葉だろう。

「少額、短時間、集中」なら、ずいぶん以前から続いてきた現象である。これにどのようなメスが入るのか、県観光戦略会議の今後の動向に、大いに期待している。
コメント (4)
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観光事業者さん、「インバウンドに優しいおもてなし認定証」制度を利用されては?/観光地奈良の勝ち残り戦略(137)

2023年08月31日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
一般社団法人インバウンド全国推進協議会(大分市 会長 二宮謙児氏)は2023年3月から、「インバウンドに優しいおもてなし認定証」の申請受付および認定を開始した(同協議会は、インバウンド推進協議会OITAから名称変更)。さらに同年7月、訪日外国人向けメディアを運営する株式会社MATCHA(東京都中央区 代表取締役社長 青木優氏)と包括連携協定を締結した。
※トップ写真は、観光経済新聞(2023.8.23付)から拝借

1.インバウンドに優しいおもてなし認定証(同協議会のHPより)
海外を訪れるとき、最も大切なことは『安心』です。旅行者からみてひと目で安心を担保できるとすれば、それは何より大きな魅力となります。インバウンド推進協議会OITAは、インバウンドの受入体制として重要なサービスにおいて、様々な認定基準をクリアする事により獲得できる「インバウンドに優しいおもてなし認定証」の交付を開始しました。

海外から訪れる観光客にとって「インバウンドに優しいおもてなし認定証」をもつ観光施設は、意識の高い安心したサービスを受けられる証しとなるため、大いに活用いただけるよう願っています。

インバウンドの受入体制として重要な「多言語」、「案内」、「飲食」、「健康・安全」、「意識向上」、「設備」の6つの分野で、認定基準合計20条のうち、業務上該当する項目において70%以上を満たす場合は認定されます。是非この認定を通して、インバウンド対策の現状認識と更なる改善に取り組みましょう。

認定された事業者の方へは「認定証」及び「HAND BOOK」を交付します。「認定証」はインバウンド観光客にサービスの付加価値や細心の心配りがより伝わりやすいツールとしてご活用いただき、また、上記6つの分野における具体的な改善例やすぐに使えるアプリ等をたくさん紹介する「HANDBOOK」は常にお手元に置いて、現場対応に役立てられることをお勧めします。

認定料は1事業者あたり5,000円(認定証はB5サイズ、フレーム付き、ハンドブックはA4サイズ全14P)。当協議会会員の場合は税込3,000円となります。ご希望の方はこの機会に是非認定申請されることをお勧めします。認定証の詳細及び申請フォームはこちらへ 。

2.MATCHAとの包括連携協定(観光経済新聞より)
訪日外国人向けメディア「MATCHA」を運営する株式会社MATCHA(本社:東京都中央区、代表取締役社長:青木優)と、「インバウンドに優しいおもてなし認定証」制度を全国展開する一般社団法人インバウンド全国推進協議会(大分県、会長:二宮謙児)は、訪日外国人旅行者の受入体制と情報発信の強化を全国的に連携して取り組むための「包括連携協定」を締結しました。

訪日・在日外国人向けメディアを運営する株式会社MATCHAは、令和4年9月より、MATCHAに多言語で記事やスポットを無制限で投稿できる「MATCHA Contents Manager(MCM)」を自治体や観光事業者向けに全国展開し、地域の多言語情報発信を支援しています。

大分県を本拠地とする一般社団法人インバウンド全国推進協議会(旧:インバウンド推進協議会OITA)は、令和5年3月より訪日外国人客の受入体制の成熟度を測る「インバウンドに優しいおもてなし認定証」の申請受付を始めました。その後、大分県内のみならず、他県からも申請者が現れたため、組織と名称変更を行い本格的な全国展開を目指しています。

今回、両者の強みである「受入体制の強化」と「多言語情報発信」を相乗効果的に促進することを主たる目的として、インバウンドに関する包括連携協定を締結することになりました。具体的には、協議会が認定した施設を「MATCHA」で紹介し、外国人客の誘致促進を図ります。また、併せて、認定施設にはMATCHAの自動多言語化投稿システム「MCM」を無料で提供し、利用者数の拡大を図ります。


これはよく考えられたスキームだ。インバウンドに長じた事業者が認定を受け、しかもその事業者の情報が多言語に自動翻訳され、世界に発信される。外国人観光客は、安心してその事業者のサービスを受けられるのだ。

二宮謙児氏は大分県由布市の温泉旅館「山城屋」のご主人で、当ブログでも紹介させていただいたことがあるし、2019年に開催された南都銀行主催の「第12回観光力創造塾」の講師も務めていただいた。

一昨日(8/29)、当ブログで「インバウンド再燃!適正価格で高付加価値サービスの提供を」という話を紹介した。奈良県内の観光事業者さん、この円安で予想される外国人観光客の増加に合わせて、このようなスキームを利用されてはいかがですか?



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