韓国教育科学技術部(省に相当)は15日、大統領職引き継ぎ委員会の業務報告で、当初2025年に予定されていた無人月探査機の打ち上げを、20年に前倒しする方向で計画を推進すると主張した。
教育技術科学部は併せて、21年に予定されている韓国独自の発射体(宇宙ロケット)の開発を最大3年前倒しし、今年4月までに月探査機の早期打ち上げのための技術的な検討を実施すると報告。だが、この件をめぐっては「(韓国の宇宙ロケット)羅老(ナロ)号の打ち上げさえも成功していないのに、スケジュールを前倒しするのは強引だ」と疑問視する声も上がっている。
同部が報告した月探査機の早期打ち上げ案は、朴槿恵(パク・クンヘ)次期大統領の選挙公約に基づくものだ。朴槿恵氏は昨年12月16日に行われた大統領選立候補者による3回目のテレビ討論で「羅老号の3回目の打ち上げが遅延しているが、宇宙の平和利用を積極的に推進すべき時期だ。2020年に月で太極旗(韓国の国旗)を掲げたい」と述べた。
だが、朴槿恵氏の発言に対し、教育科学技術部は当初「失言ではないか」との反応を示した。政府の「第2次宇宙開発振興計画」によると、無人月着陸機は25年に打ち上げを予定し、打ち上げのための韓国独自の発射体は21年に完成することになっていたからだ。教育科学技術部は朴槿恵氏がなぜ「20年に月探査機を打ち上げる」と述べたのかについて、内部で議論を重ねたという。
この日の業務報告で教育科学技術部は「月探査機の打ち上げでは韓国が相対的に技術力を確保している衛星技術が基盤となるため、これを搭載できる韓国独自の発射体が前倒しで開発されれば、月探査機の早期打ち上げに関する技術的な困難はない」と説明したとされる。同部はさらに「韓国独自の発射体事業により多くの財政を投入し、18年あるいは19年までには開発を終える必要がある」と主張したという。
だが、月探査機の早期打ち上げをめぐっては、開発を担当する韓国航空宇宙研究院の内部でも「韓国独自の発射体と月探査プロジェクトが『第2の羅老号』になる恐れがある」と懸念する声が出ている。羅老号の問題は1998年、北朝鮮のテポドンミサイル発射に刺激された当時の金大中(キム・デジュン)政権が「2005年までに開発するように」と期限を指示したことから始まった。突然開発スケジュールを前倒しされた航空宇宙研究院は、スケジュールを守るためにロシアと無理な契約を結び、その結果、当初の期限さえも守れず独自の打ち上げも遅れるという最悪の事態を招いた。昨年、北朝鮮が人工衛星「光明星3号」の打ち上げに成功した際には「韓半島(朝鮮半島)版スプートニク・ショック」が到来したという声が上がったが、これを受けて朴槿恵次期大統領が月探査機の打ち上げを前倒しするよう述べたことは、再び羅老号と同様の事態を招くようなものだ。
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