キム・ジヘさん(32、仮名)はソウル下月谷洞にある「ミアリテキサス」で働いている。 一日平均3、4人の男性を相手にしている。 ジヘさんが初めて売春を始めたのは学校の授業料のためだった。 2004年にソウル江南の「ルームサロン」が最初の職場だった。 その年、性売買特別法が施行された。 風俗街が強制的に閉鎖された時期だった。 このため売買春が可能な他の遊興店が“特需”を迎えた。 ジヘさんは江南・瑞草などのルームサロンを転々としながら学費を稼いだ。 しかし家に生活費を入れていたうえ、お金を遣うことも増え、休学と復学を繰り返し、結局、卒業できなかった。
ジヘさんがミアリテキサスに入ったのは昨年2月。 性売買特別法でミアリテキサスがすべて消えたという噂は事実でなかった。 ジヘさんは3カ月間、月平均500万ウォン(約38万円)稼いだ。 これで学費は十分だと考えて復学した。 しかし生活費がまた厳しくなった。 他のアルバイトもしたが、給料があまりよくない。 ジヘさんは今年9月、またミアリに戻ってきた。
先月4日、ミアリテキサスでジヘさんに会った。 ジヘさんは「事実上取り締まりもしないのに性売買特別法を作り、売春女性だけが犯罪者になった」と話した。中央日報が全国の主要風俗街を取材した結果、ジヘさんのように風俗街を一度離れた後、また戻ってきたという女性が多かった。 この女性たちは「すぐにも家族の生計を維持する責任がある状況で、他の仕事に移るのは容易でなかった」と主張した。 ソウル地域の風俗街で働くイさん(34)は「2010年以降、1回も取り締まりを見ていない。 意味のない法をそのまま置いておく必要があるのか」と語った。 性売買従事者と事業主からなる「全国ハント連合会」は9月、憲法裁判所に性売買特別法に対する違憲法律審判を申請した。
これに関し2004年に性売買特別法を代表発議した趙培淑(チョ・ベスク)元民主党議員は「性売買特別法のおかげで風俗街が大きく減り、女性の人権が改善された」と主張した。 しかし趙氏も「当時、性売買集結地の問題に集中したため、新種の変態性売買への対応は不足していた」と話した。金康子(キム・カンジャ)韓南大警察行政学科客員教授はソウル鍾岩警察署長当時の00年、ミアリテキサスで大々的な取り締まりを行った経験がある。 しかし金教授は「生計のための売春女性に対する具体的な支援策を用意せず、特別法に基づいて制裁したため、単発性の効果に終わった面がある」と述べた。 金教授は「当初の目標とは違って新種の売春が広がり、よりいっそう肥大化してしまった」と指摘した。
金教授は「制限的な公娼制度は考慮するに値する」と主張した。 しかし一部の女性団体はこうした主張に強く反対している。 「性売買特別法は最小限の法であり、公娼制は女性を商品化するという発想」という理由からだ。実際、一部の店では今でも女性従業員に負債を抱えさせ、強制的に売春を要求したりもする。
昨年2月、Aさん(28)は500万ウォンが突然必要になり、知人の紹介でルームサロン経営者に会った。 この経営者は「日本で男性と友人のように話をするだけで2000万ウォンを貯められる」と説得した。 しかしAさんは日本に到着するとすぐにパスポート(旅券)を取り上げられ、宿舎に監禁された。 その後、一日に5、6回ほど売春をすることになった。 出血があっても綿で抑えて仕事を続けるように言われた。 Aさんは日本女性団体の助けで辛うじて宿舎から抜け出せた。
韓国社会に根付いた性売買文化を根絶するためには、持続的な取り締まりとともに、女性の自活への誘導が重要だと、専門家は指摘している。 ソウル江南区庁は7月から違法店舗を取り締まるTFチームを設置し、大々的に取り締まりを行っている。 現在まで257店舗が摘発され、18億9500万ウォンの税金・履行強制金を科した。 申燕姫(シン・ヨンヒ)江南区庁長は「住宅街にまで入り込んでいるため取り締まりに難しさはあるが、続けていくことが重要」と強調した。
女性家族部は全国自活団体9カ所で女性の職業・進学教育を支援している。 自活プログラムに参加する女性は年平均560人にのぼる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます