硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「スロー・バラード」

2020-10-06 20:10:06 | 日記
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 浩二はほんとにいい奴で、いい友達だ。面白い事といえば浩二が絡んでいたし、受験勉強の時でも、いい距離で遊んでくれて、息抜きになった。俺は、その時、初めて、こういうのを友達っていうのかなと思った。
幼いころからの付き合いを継続してゆく。そういうのも悪くはないとは思うけれど、留まれば、大きな失敗は避けられる代わりに、過去に囚われ、世界も固定され、きっと、後悔もするだろう。だから俺は、地元の大学に入学するより、一年間しっかり勉強して、東京の大学に目標を定めて、無理を言って親の脛をかじる事にした。
 おじいちゃんとおばあちゃんは「ここに残った方がいい」と、言って、引きとめようとしてたけれど、父さんと母さんは俺の気持ちを汲んでくれ、後押しをしてくれた。 両親の応援無くしては今には至らなかっただろう。只々、感謝しかない。
 その甲斐あって、大学には合格し、生活拠点を東京に移すことが出来た。ここまでは。イメージ通りに来ているけど、きっとここからが大変なのだろうと思う。

気が付けば、国道沿いに出ていた。バイクの部品を買いに行ったホームセンターも見えた。隣のパチンコ屋は、今も変わらず、駐車場には沢山の車が止まっていて、店の前には人が列をなしていた。

俺にとって、あのパチンコ屋も思い出深い場所だった。

 高校で出来た唯一の友達、ひろゆきは、学校の帰りに、あのパチンコ屋によく入っていた。友だちになったきっかけは、学校の帰り、国道を渡る信号を待っているとき、何度か出くわしていたが、ある日、なぜか、ひろゆきから、「今から暇? パチンコ打ってこ」と誘ってくれたのが始まりだった。