硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語。107

2021-08-31 21:19:38 | 小説
ん~。でも・・・。そうだなぁ・・・・。いい経験だったと、無理をしてみるか。それから、ちょっと気持ちが変わった事を・・・・。
散らかってる頭の中を、少しづつ整理しながら、文章を綴ってゆく。

(たしかに良い経験だった。それからね、偶然、電車の中で先輩と話し合えた後に先輩の彼女って言われてた人にも会って、話を聞くことが出来たんだ。だから、当時のもやもやした気持ちはなくなったし、考え方も少し変わった気がする)

そして、もう一つの報告も忘れずに。続けて送信。

(それから、もう一つ報告があります)

(すごいね! 綾乃に比べて、私は全然駄目)

あれっ、もう返信が来た。はやっ!

(なになに)

いやっ、反応が早い。ここは、名前だけ送っておこう


(川島君)

(!! どうした ! )

めっちゃ動揺してる。ごめんねきらら。

(フッてしまいました。ゴメンナサイ)

(どういうことなの。説明して)

うぁ~。おこってるよぉ。

(怒ってる? )

(ちょっとね。でも、どうして)

やっぱり怒ってたかぁ。ここはきちんと説明しなくちゃね。

(本当にごめん。川島君はやっぱり友達なの。それに、今は受験に専念しないと、絶対後で後悔すると思ったから)

(わかったよ。もう怒らないwww でも、川島君はどういってたの)

う~ん。そこは気になるんだね。ここはヘンに言い訳せず、簡潔に伝えよう。

(私の気持ちを理解してくれた。それで、参考書開けよってwww)

これでいい。きっと、わかってくれるはず。そうだ。きららの報告も聞かねば。

恋物語。106

2021-08-30 21:06:50 | 小説
どうしよう。どうやって伝えよう。嫌われることを覚悟してでも、誠実に伝えなきゃ。ここで逃げてしまったら、絶対に後悔してしまう。
でも、どう書き出していこうかなぁ・・・・・・。

(報告します。無事先輩に告白できました。でも、上手くいきませんでした。なぜなら、先輩はゲイな人だったからです。そのような告白をされて、最初はどうしようかと思いましたが、先輩の話を聞いているうちに、私の世界は狭いんだなと感じました。今のままではいけないんだなとも思いました。それで、きっぱりとあきらめが付いたかと言えば、そうでもないですけど、少しだけスッキリしました)

これでいいかな。間違ってないかな。もう一度読み返してから送信だな。

「うん。これでいい。じゃあ・・・・・。届け、私の想い!」

祈りを込めて、青い紙飛行機をタップする。ドキドキする。きららは、なんて返信してくるかな。なんか、お腹が痛くなってきた。

ピヨピヨ! 来たっ。

(失ったものも大きいけれど、得るものが沢山あったみたいだね。綾乃の言葉に、勇気をもらえたよ)

おおおっ。きらら、なんて優しいの。この後の展開が苦しくなっちゃうじゃん。
ここは丁寧に、返信。

(こちらこそ背中を押してくれてありがとう。けど、ヒドく傷ついてますwww)

(ゲーテ曰く、泣いてパンを食べた者でなければ、人生の本当の味は分からない)

ゲーテ!? 詩人だったっけ。

(??)

(ごめん。つい)

きらららしいなぁ。

(wwwwwww)

(ゲーテって言う人の言葉なんだけど、ふいに浮かんで)

(きらららしいよwww 何となく意味は分かるから大丈夫だよ)

(ごめん)

泣いてパンを食べた者って、今の私の事なんだろうな。その言葉を引き出してくるなんて、さすがきらら。
ここは、私も、背伸びしておかなくちゃね。

恋物語。105

2021-08-29 17:27:14 | 小説
(ありがとうございます。)

(なんで急に他人行儀なんだよw)

(いや、ここはきちんとしておかなければと思いまして)

(www)

(バカにしてる? )

(してないよw )

そんなの知ってるよ。でなきゃ、仲良くなんてできなかったよ。

(分かってたよ。川島君そんな人じゃないもの)

(大学に合格したら、マックでお祝いしよう)

ふふっ。うれしいなぁ。でも、ここは、ちょっといぢっちゃおっかな。

(そういう時は、リストランテ・アサヒナで、ディナーでしょwww)

(お金ないのを知ってるくせに )

ふふふっ。やっぱり楽しいな。

(うそでーす! )

(じゃあ、マックでお祝いね。スベったら、知らないから)

言うねぇ。じゃあ、これでどうかな。

( (´・ω`・)エッ? )

(知りませんよwww とにかくベストを尽くせ! )

真面目だなぁ。けれど、川島君、私の気持ちを察してくれたんだ。すごく、うれしいよ。
私も頑張らなきゃね。

(分かった。ベストを尽くすよ。色々ありがとうね)

(うん。僕も良い経験になった。じゃあ、再び数学の勉強に没頭するよ)

もう、気持ち、切り替えられたのかな? そういう所、凄いなぁ。

(おおおおおっ。まじめーww)

(うるさいよwww)

楽しいけど、これ以上、甘えてちゃあ、川島君の足を引っ張っちゃうだけだ。

(おじゃましましたwww じゃあ、また学校で)

(うん。平川も参考書、開けよ! )

( (‘’◇’’)ゞ )

( (`・ω・´)ゞ )

「ふぅ~。なんとか、伝えられたかなぁ」

ヘンな汗かいちゃった。自分の気持に従って、相手の気持ちを絶つって、本当に苦しい。
それでも、最後まで優しかったなぁ、川島君。いつか、今日の事を想い出した時、これで良かったと思えるように頑張らなければ。

さぁて、つぎは、きららへの報告だ。

恋物語。104

2021-08-28 21:13:51 | 小説
私の今の気持ち。嘘のない気持ちを文字にのせて、川島君の心に届ければ、きっとわかってくれるはず。

(あれから、いろいろ考えたんだ。好きな人にも告白したよ。それで、分かったのは、川島君はやっぱり友達。イイヒトだし、話してても楽しいから、つき合ってもいいかなって思った。でも、好きだった人と、話をしてみて、気付いたんだ。私、まだ、知らない事が多いって。わたし頭悪いでしょ。だから、今、受験に専念しなければ、その先の世界を知ることが出来ないんじゃないかって。それに、恋愛と勉強を両立できるほど、器用じゃないから、川島君の気持はすごくうれしいけど、今の私じゃ、川島君の気持に応えられない。だからごめん。)

ううぅっ、何度読み返しても、心が削られる。振るってこんなにしんどい事なの? 詩音や明日香は本当にタフだわ。でも、川島君は、私の言葉をどう思ってくれるかな。キレたりするのかな、それとも、しつこく付きまとったりするのかな。意外と号泣したりして。そんなわけないか。

LINEの返信を待つ。やっぱり、色々考えてるんだろうな。ごめんね川島君。でも、本人の前で、ごめんなさいって、言わなければならなかったら、言いづらくって、断れなかったかもしれないなぁ。LINEさん、本当に助かったよ。

ピヨピヨ! 来た! 

(胸が痛い)

うわっ! どうしよう。傷つけてしまったかな。もう、謝るしかない。

(本当にごめんなさい m(__)m )

(うそだよwww)

やっぱり優しいな。でも、本当にこの選択で良かったのかな。

(いじわる)

(平川の気持ちはよくわかったよ。僕たちはまだ、何も知らない。それはすごく共感できる。だから今は、お互い、受験にベストを尽くそう。)

うん。そうだね。ありがとうね。なんか、泣けてきちゃうよ。

恋物語。103

2021-08-27 21:44:32 | 小説
「かわしま、かわしま・・・。」

川島君とのトーク画面を開いたのはいいけど、どう、切り出せばいいかなぁ、

「う~ん。まずは、なにしてる・・・かな。きっと、勉強してるんだろうけど」

(何してる? )

送信!

(数学の勉強)

やっぱり! 川島君だなぁ。では、

(まじめーww)

(何言ってんだよ。試験まで残り僅かでしょ)

ちょっと、おこったかな? 

(冗談だよw)

(どうしたの?)

う~ん。そうなんだよね。ここが悩みどころ。

(・・・。)

(なんだよ)

う~ん。どうしようかなぁ。

(・・・・・・。)

(なんなんだよwww)

優しいなぁ。私って、本当にバカだ。でも、ここはきちんとしなくちゃね。けど・・・。

(LINEで済ませていいのかなって思うんだけど)

(何のことだよw)

分かってるくせに・・・。

(いじわる)

(wwwこんな時ぐらいしかマウント獲れないし)

LINEでも謙虚な川島君。文章を通しても、その人柄が分かるよ。

(ちがいない)

(その自信もここまでだな)

おっ、調子に乗ってるな。ここはボケておこう。

( \(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ? )

(なにとぼけでるんだよw)

(すいません)

(wwwそれで、なんでしょう)

よし。これで、少しは気持ちがほぐれた。ここからは真面目に気持ちを伝えよう。
ゆっくりでいいから、丁寧を心掛けて。きっと、待っててくれるはず。

恋物語。102

2021-08-26 20:08:47 | 小説
今日は色々ありすぎて、頭がパンクしそうだった。
圭介先輩がゲイだった事、それを知ってて、なんの見返りもないのに圭介先輩を支え続けていた二宮先輩の事。一コ上とはいえ、同じ学校に通っていて、2人の事はよく知っているつもりだったのに、何も知らなかった事を知って、すごくショックだった。
最初は、私だって先輩の力になれたのにと思ったけれど、二宮先輩のお兄さんの話を聞いて、そこまで心が広くない私には無理だと思った。でも、色々な経験を積めば、二人のような心の広い人になれるはずだし、二人に憧れてるなら、自分を磨いてゆかなきゃ駄目なんだろうな。

自分磨きっていっても、苦しい事や辛い事を経験して考えなきゃダメなんだけれど、私の性格からして、なんとなく避けてしまうかもしれない。
その方が、私らしくって、いいのかもしれないけれど、そしたら、心の広い人にはなれないし、大きな目標に向かって努力をしている圭介先輩もがっかりするんじゃないかな。

私の人生はこれからだというのに、今のまま、ありのままで、い続けていいのかなぁ。
もし、川島君と付き合うとしたら、川島君は優しいから、私は、きっと、彼の優しさに甘えてしまうだろう。その方が楽と言えば楽。
それはそれで、幸せかもしれないけど、私の性格だと、きっと、どこかで、このままでいいのかなって考えてしまう。その時になって、やっぱり無理って言って、川島君を傷つけるより、今、きちんと、気持ちを伝えた方がお互いの為になるんじゃないかな。
きららは、きっと、川島君の気持を尊重するから、怒るだろうな。でも、怒られたとしても、本当の事を伝えた方が、きららにとってもいいはず。

もうこれ以上悩んでても仕方がないや。

ベッドから起き上がると、机の上に置かれた充電中の携帯を手に取り、LINEを開いた。

恋物語。101

2021-08-24 20:16:59 | 日記
(私、川島君の事が本当に好き。だから、彼の事、待ち続けようと思う)

(熱いねーwww)

もう! 綾乃ったら! 

(うっさいよ)

(wwwwwww)

綾乃がポジティブな人だったから、私は救われた。綾乃だったから、上手く感情を飼いならすことが出来た。もう、感謝しかない。

(綾乃。本当にありがとう)

(どういたしまして。受験に恋愛にがんばんなよ。きららは両立できそうだから羨ましい)

両立できそうかぁ。私って、そんな風に見えてるんだなぁ。全然強くないのにな。

(そんなことない。いっぱいいっぱいですwww)

(www応援してる)

ふふっ。本当にありがとう。

(ありがとう。綾乃も、参考書開いてねwww)

(ここにも川島が~www)

ふふふっ。ちょっとうれしいツッコミだな。

(wwwwwww)

(じゃあ、また、学校でね)

(うん。じゃあまたね)

((‘’◇’’)ゞ)

((''◇'')ゞ)

携帯を手放し、目を閉じる。複雑に絡み合っていた糸が、ゆっくりとほどけて、本来の線が見え始めてきた。綾乃が川島君に告白されたって聞いた時、もう、綾乃とは今までの様につき合えないだろうなって思った。でも、そんな思いも、取り越し苦労だった。

「少なくとも強い友情と言うものは、ある不信と抵抗からあるのが自然らしい」

たしか、エミール・オーギュスト・シャルティエさんの言葉だったっけ。エミールもきっと辛い出来事を乗り越えて、気持ちを言葉に起こしたんだろうなぁ。
私も頑張らなくっちゃ。


恋物語。100

2021-08-23 21:36:27 | 小説
(なになに)

(川島君)

(!! どうした ! )

(フッてしまいました。ゴメンナサイ)

なんですってぇぇ! 思わず声が出てしまった。どういうことなのそれっ!
直ぐに問い詰める。

(どういうことなの。説明して)

(怒ってる? )

ああっ、見透かされてる。綾乃、相変らず鋭いなぁ。

(ちょっとね。でも、どうして)

(本当にごめん。川島君はやっぱり友達なの。それに、今は受験に専念しないと、絶対後で後悔すると思ったから)

嘘でも、忖度でもない綾乃の気持ちだ。自分の知らない世界を知る年上の人達と話をしたことで、心境の変化が生れたのだろう。それに比べて私は、なんて心の狭い人間なんだろう。川島君を振った事に苛立っているのに、川島君が好きな人に振られてしまった事を、どこかで喜んでいる。
こんなことじゃダメだ。綾乃の気持について行かなくては。

(わかったよ。もう怒らないよ。 それで、川島君はどう言ってたの)

(私の気持ちを理解してくれた。それで、参考書、開けよってwww)

川島君らしい。でも、ちょっと傷ついてるんだろうな。私、彼の力になれるかな。

(きららは、どうなの? )

そうだ。私も報告しなければ。自分の事だけで精一杯だったから、すっかり忘れてた。

(私からも報告です。無事、告白できました。泣いちゃったけど。)

(えらい! えらいぞきらら。よく頑張りました)

(川島君、好きな人がいるからって言ってたけど、私、それでも待ってますって言っちゃった)

(wwwwwww)

(笑うなよぉ。はずかしいじゃないか)

(ごめん。けど、これでいいんだね)

(もちろんです)

(おkです)

そうだ。私も、きちんと、今の気持ちを伝えておこう。

恋物語。99

2021-08-22 20:36:17 | 小説
(報告します。無事先輩に告白できました。でも、上手くいきませんでした。なぜなら、先輩はゲイな人だったからです。それを聞いた時、動揺しすぎて、パニックになりましたが、先輩の話を聞いているうちに、私の世界はとても狭かったんだなと感じました。そして、今のままではいけないんだなとも思いました。それで、きっぱりとあきらめが付いたかと言えば、そうでもないですけど、少しだけスッキリしました)

そうか。なるほど。先輩の背後に見えた色が、見たことのない色だったのは、そういう理由だったんだ。しかし、綾乃は本当に凄い人だ。もし私が、好きな人から、ゲイだって告白されたら、すごくショックだろうし、話しかけられても、耳に入ってこないような気がする。その点、綾乃は、変わりなく先輩と話し合えたというのだから、そのコミニュケーション力には感動してしまう。

(失ったものも大きいけれど、得るものが沢山あったみたいだね。綾乃の言葉に、勇気をもらえたよ)

(こちらこそ背中を押してくれてありがとう。けど、ヒドく傷ついてますwww)

こんな時、なんて言葉をかけてあげればいいんだろう。変な優しさは余計に傷つけてしまうだろう。賢者は思い悩む者に対して、なんて声をかけるだろう。その時、ハッと思い出す。迷わず画面に文字を打つ。

(ゲーテ曰く、泣いてパンを食べた者でなければ、人生の本当の味は分からない)

(??)

やっちゃった! 焦りに焦る。

(ごめん。つい)

(wwwwwww)

(ゲーテって言う人の言葉なんだけど、ふいに浮かんで)

(きらららしいねwww 何となく意味は分かるから大丈夫だよ)

(ごめん)

(たしかにいい経験だったよ。それからね、帰りの電車の中で、偶然にも先輩の彼女って言われてた人にも会って、話を聞くことが出来たんだ。だから、当時のもやもやした気持ちはなくなったし、考え方も少し変わった気がする)

心に余裕がないと、辛い出来事をよい経験に置き換えることは出来ない。綾乃は、急成長しかけている。

(すごいね綾乃! それに比べて、私は全然駄目だ)

送信と同時に、返信が来る。

(それから、もう一つ報告があります)

えっ。なに。なんだろう。鼓動が早くなる。思わず体を起こし、なぜか正座をしてしまった。

恋物語。98

2021-08-21 21:44:46 | 小説
母との会話によって、自分でも驚く位に泣いて、不安になっていた川島君への想いを取り戻した。しかし、その想いが、みんながよく言う、愛するという気持ちであるのかが分からない。
人生において、大切なものは何かと問うとき、人々は様々な回答をする。
その中でも、愛が、もっとも大切だとしたら、私にとって、愛は曖昧なものでしかないから、いったい何を大切にすればいいのかが分からなくなってしまう。
愛を語る人たちは、どれほど真実の愛を知っているのだろうか。
もし、皆が愛を知っているとするなら、チャペルで、神に愛する事を誓った夫婦が、なぜ離婚してしまうのだろう。
愛を歌った人たちが、不倫をするのはなぜだろう。
それが、愛だからだろうか。だとしたら、愛とは傷つけあう行為なのだろうか。
「真の愛の道は決して平坦ではない」
シェイクスピアはそう言ってたけれど、今の私には、それが理解できない。
川島君への想いは真の愛? 難しく考えすぎ? 好きって言う気持ちは間違いないのに。
私は、どうして複雑に考えすぎるんだろう。
しっかりしろ! 私!

ベッドに寝転がり、天井を見つめる。心配しなくてもいい事まで心配をしている。それもよく分かっている。でも、考えてしまう。
綾乃は、ちゃんと告白できただろうか。川島君は私の事をどう思っているだろうか。
二人がつき合うことになった時、二人に対してちゃんと微笑むことが出来るだろうか。

試験が近いというのに、とんでもない沼に嵌ってしまったなと後悔。しかし、何もしないで後悔するよりは、前向きだ。

ピロロン! 

LINEの着信で我に返る。今は見たくないなと思いながら、重い腕を伸ばし携帯を取る。
画面を見ると、綾乃からのLINE。報告します。で始まる長文。見ないわけにはいかない。
恐る恐るLINEを開くと、そこには、とても悩んだことの分かる、彼女の想いが詰まっていた。

恋物語。97

2021-08-20 20:10:46 | 小説
(あれから、いろいろ考えたんだ。好きな人にも告白したよ。それで、分かったのは、川島君はやっぱり友達なんだよ。イイヒトだし、話してても楽しいから、つき合ってもいいかなって、ちょっと思った。でも、好きだった人と、話をしてみて、気付いたんだ。私、まだ、知らない事が多いって。わたし頭悪いでしょ。だから、今、受験に専念しなければ、その先の世界を知ることが出来ないんじゃないかって。それに、恋愛と勉強を両立できるほど、器用じゃないから、川島君の気持はすごくうれしいけど、今の私じゃ、川島君の気持に応えられない。だからごめん。)

なるほど。と、しか、言いようがない。想定内の事だけれど、胸は痛い。でも、平川綾乃は今までとは違って、しっかり前を向いていて、バスケの試合の時みたいに、一生懸命ゴールを目指している。
そんな彼女の足を引っ張ってはいけない。と、自分に言い聞かせる。けど、少しだけ抵抗してみたい。

(胸が痛い)

(本当にごめんなさい m(__)m )

ああっ、これは本当に無理なんだなぁ。

(うそだよwww)

(いじわる)

(平川の気持ちはよくわかったよ。僕たちはまだ、何も知らない。それはすごく共感できる。だから今は、お互い、受験にベストを尽くそう。)

(ありがとうございます。)

(なんで急に他人行儀なんだよw)

(いや、ここはきちんとしておかなければと思いまして)

(www)

(バカにしてる? )

(してないよw )

(分かってたよ。川島君そんな人じゃないもの)

ああっ、こういう所、キュンってするんだよなぁ。ずるいよ平川。

(大学に合格したら、マックでお祝いしよう)

(そういう時は、リストランテ・アサヒナで、ディナーでしょwww)

(お金ないのを知ってるくせに )

(うそでーす! )

この距離でいい。平川綾乃は、もう、次のゴールを目指してるんだから。
僕も、告白出来て、少しもやもやが晴れた。

(じゃあ、マックでお祝いね。スベったら、知らないから)

( (´・ω`・)エッ? )

(知りませんよwww とにかくベストを尽くせ! )

(分かった。ベストを尽くすよ。色々ありがとうね)

(うん。僕も良い経験になった。じゃあ、再び数学の勉強に没頭するよ)

(おおおおおっ。まじめーww)

(うるさいよwww)

(おじゃましましたwww じゃあ、また学校で)

(うん。平川も参考書、開けよ! )

( (‘’◇’’)ゞ )

( (`・ω・´)ゞ )


携帯を元の場所へ戻し、天井を見上げて大きなため息を吐く。もう一度、これでいい。と、自分に言い聞かせ、シャーペンを手に取る。

「整数cが5以上の時、pはqである為の必要条件ではない。なぜならば・・・・。」

うん? なるほどな。僕が友達以上と思ってても、それが、恋人になる為の必要条件ではなかったんだな。

恋物語。96

2021-08-19 20:47:07 | 小説
「整数cが5以上の時、pはqである為の必要条件ではない。なぜならば・・・・。」

プヨッ! LINEの着信。画面を見ると、平川綾乃の名前。
心拍数が上がる。ちょっと震える手。シャーペンを手放し、携帯を掴んで、LINEを開く。

(何してる? )

(数学の勉強)

(まじめーww)

(何言ってんだよ。試験まで残り僅かでしょ。)

(冗談だよw)

(どうしたの?)

(・・・。)

(なんだよ)

(・・・・・・。)

(なんなんだよwww)

(LINEで済ませていいのかなって思うんだけど)

ああっ。ついに来たか。最後の審判。

(何のことだよw)

(いじわる)

(wwwこんな時ぐらいしか、マウント獲れないし)

(ちがいない)

(その自信もここまでだな)

( \(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ? )

(なにとぼけでるんだよw)

(すいません)

(wwwそれで、なんでしょう)

そこから数分、LINEが途絶える。画面を見ながら、平川綾乃が何を伝えようとしているのか、いくつかのワードを考えて、衝撃に備えた。ためらっているなら、その答えは・・・・・・・。
プヨッ! 返信が来た。しかも、長文だ。

恋物語。95

2021-08-16 19:57:06 | 日記
「泣いてるの? なにか傷つけるような事、言ったかな? 大丈夫? ごめんね。えっと・・・、これ使って。」

彼はリュックサックから、ティッシュペーパーを取り出し、私に差し出した。
私は私を責めて泣いているのに、なんて優しい人なんだろう。
私なんか、彼の足を引っ張るだけかもしれない。

「ごめんなさい。自分が情けなくって・・・・・・。」

「ううん。誤る事なんてない。村主さんの気持ちはすごくわかってた。ただ、こうやって逢っくれるだけなのに、僕の事を好きでいてくれて、将来の事まで考えてくれてた。それは、すごくうれしかった。だから、知っておいてほしかったし、共に人生を歩むことになれば、乗り越えていかなければならない壁が、ある日突然現れるかもしれない。その時、事実を知らなかったら、ただ傷つくだけだと思ってたから、できるなら傷つけたくないなって。」

「・・・私なんかと・・・・・・・。」

「私なんか、じゃないよ。僕は村主さんのその真っ直ぐな所が本当に好き。だから、村主さんが引き返せなくなったときの事を考えると、今以上に踏み込めなかったんだ。」

そこまで考えていてくれたなんて。私は本当に彼を好きでいて、いいんだろうか。

「加持君。」

「なに? 」

「私は、加持君の事、好きでいていいの? 」

「うん。もちろんです。社会にある見えない壁を、僕と一緒に乗り越えていってくれるなら。」

「僕と一緒に」と、言う言葉に力が湧いてくる。大丈夫だ。私、加持君の事がこんなにも好きなんだから。

「私、加持君と共に乗り越えていきたい。ついていっていい? 」

そう言うと、彼は恥ずかしそうに微笑んで、私の方に右手を伸ばした。

「これからも、よろしくお願いします。」

テーブルの上に残されたパンケーキとピザとポテトの上で、加持君の手を、初めて、しっかりと、握った。

私は、この先、どんなことがあっても、絶対にこの瞬間を忘れない。


恋物語。94

2021-08-15 20:33:29 | 日記
「差別とか同和問題って、知らない事の方が多いんだね。SDGsを議題に、生徒会で話し合ったけれど、起源の事なんて誰も言わなかったなぁ・・・。加持君はすごいね。」

「そんなことないよ。ただ、父さんや母さんから、差別を受けた話を聞いていたから、当事者としてよく理解しておかなければって思っただけだよ。でも、SDGsだって、表向きはクリーンに見えるけれど、権力を持つ人たちが言い出した事だから、誰かに不利益が生じるんじゃないかと思ってる。権力者や大人のいう事を鵜呑みにしちゃいけない。自分の頭で考えなければ、「ケガレ」っていう呼称でひとくくりにされた人達みたいに、アイデンティティーを否定され、時代に翻弄されてしまうことになりかねないと思う。」

一口飲んだホットココアの味がしない。私は加持君の言葉にうちのめされてしまった。
彼が、懸命に話してくれたのに、言葉が出てこない。
なにか、言わなくちゃ。

「・・・・・・。加持君。タイムスリップして、時の権力者を正さなければ差別ってなくならないものなの? 沢山の人が、話し合い、理解を深めていると思うのに・・・・・・。」

「そうだね・・・・。時を遡る事は出来ないけれど、先人たちの努力の積み重ねで、少しづつ改善されてきているとは思う。でも、完全に無くなる事はないんじゃないかとも思う。それは、差別と言うものの本質が、学校でのいじめや、SNS上での誹謗中傷と同義だと思うから・・・・・・。もし、この世界から差別をなくそうとするなら、ちょっと難しいかもしれないけれど、僕たちや、ずっと年下の子達や、これから生まれてくる子たちが、いじめなんて無意味なんだという価値観を獲得できれば、その時、初めて、お互いが自由を認め合う社会になるんじゃないかと思う。」

自然と涙がこぼれてくる。私はなんて浅はかな人間だったんだろう。


恋物語。93

2021-08-14 19:58:10 | 日記
「凄くおおまかに説明したけれど、歴史って、時の権力者の都合のいいように改ざんされているから、正直な所、真実は分からない。でも、差別の歴史は、間違いなく、差別を受ける者が権力者の都合のいいように翻弄された歴史であるから、その時間の中では、差別を受けてきた人たちの中にも、権力者に対して、反骨精神を抱き、反発する人も多くいた。それは、ある面では、差別をなくすための運動に繋がってゆくんだけれど、逆に、差別が複雑化した原因でもあるんだ。それはさっき説明したように地区って、大昔から差別の対象として存在し続けていたから、地区以外の人達は、そこで生活しているすべての人を、良く理解しないまま、ちょっと違う人達なのだ、という認識が出来上がっていた。それを逆手にとって、恐怖という力で、利益を得ようとする人たちが出てきたり、地区出身でもないのに地区出身者だと名乗り、見えない恐怖で利益を得ようとする人も出てきてしまって、悪いイメージばかりが浸透していってしまったともいえるんだ。そして、逆に、制度によって改善がなされるようになると、悪いイメージの方が強いから、一部の人達からは、なぜ、あんな人達を優遇するんだって、批判される事にもなった・・・。差別の起源が、人種起源なのか、職業起源なのか、食や文化の違いからなのか、宗教的思想の影響なのか、経済的思想なのか、被支配階級の分裂政策の為なのか、はっきりはしないけれど、差別をなくそうとするなら、タイムスリップして、最初に、差別化を図った権力者を正すしかないかなって思うんだよ。」

普段はあまり話さない加持君が、一気に、それも熱く語ってくれて、とても驚いたけれど、もっと、日本史をしっかり勉強しておけば、彼の話をより深く理解できたのにと、今更ながら後悔した。