硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「スロー・バラード」

2020-10-08 17:34:15 | 日記
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「勝負事は引き際を間違えたらあかん。無駄に争ったら負けや」

 その事があってから、俺はひろゆきを尊敬するようになり、休みの日もちょくちょく遊ぶようになった。そして、学校とは違うひろゆきの新たな面を知って、さらに親交を深めていった。
 ひろゆきの事で一番驚いたのは、オヤジさんが、大きな会社の重役で家は裕福だったのにもかかわらず、バイトをしていた事だった。バイトしてるから、てっきり、家、大変なのかなと思ってたけど、大きな間違いだった。
 そして、もう一つは、バイト先で知り合ったという、8コ上の彼女がいた事だ。その彼女の車に乗せてもらって、ひろゆきと俺とで、遊びにいった事もあった。ひろゆきは、大人の女性にも、動じることなく、同級生と話すようにしていて、俺は緊張しっぱなしだったのに、彼女の前で、「彼女、紹介したろか。ええ娘おるで。はよ童貞卒業しとけよ」って、言われて、恥ずかしくなって、「俺は、まだいいよ」って、見栄を張ってしまったけど、はるか先をゆく、ひろゆきの事をすごく羨ましく思っていた。

 でも、高3の秋にオヤジさんの仕事の都合で突然転校する事になって、それからは音信不通になった。クラスの違ったひろゆきは何も告げずに転校してしまったけど、それも、ひろゆきらしいなと、思った。

ひろゆきは、今も、俺のはるか先を行ってるんだろうな。