硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 終末を超えて。

2020-04-22 18:04:59 | 日記
澪はスイッチを入れなおすと、攻撃を仕掛けてくる巨神兵に向けて刃を振るった。草薙剣は巨神兵の槍を両断し、八咫鏡は巨神兵から放たれる炎を全て跳ね返した。
その光景は、一見、圧勝しているように見えた戦いであったが、澪自身にとっては終始不安定な戦いであった。それは剣道の試合と違って、鬼神の力いう他力が常に補助してくれていると感じていたからで、心技体が一体でないと、打ち込むときに感覚が鈍るという澪自身の心得に反していたからであった。それでも、自身と他力の力を信じて最後まで戦い抜き、巨神兵を殲滅した。
澪が来るまで、苦戦を強いられた自衛隊は、突然現れた謎の使者によって集結した戦いを唖然として眺めていた。

澪は息を整え、上空から街を見下ろすと、数時間前まで平凡な学生生活を送っていた街が灰燼に帰していた。悔しさは残る。それでも、被害の拡大は食い止められた。これ以上できる事はない。自身の強さも知った。戦いにも勝利した。しかし、なぜか幸福を感じることが出来なかった。

「家に帰ろう」

そう思った時、澪の前にオレンジ色の粒子が集合し、激しく発光すると、その中から人の影が現れた。
澪は再び剣を構え、攻撃に備えた。それは本能であった。
発光が収まると、銀色の髪、色白の肌、ギリシャ神話に登場する神々のような絹を纏い、両腕には金色の腕カバーをつけた、女性とも男性とも取れない『人』が現れ、その者の左手には剣が握られていた。