絶対的な強さを持つ澪の父、須佐之伊佐木は、代々伝わる須佐之神社の神主である。神社の境内には住まいが在り、道場があった。彼の父や祖父も剣道を嗜む者であったが、表立った舞台には一切出ず、須佐之の噂を聞き、道場に訪れた者だけが通う、剣道を志す者のとっては最適な環境であった。
その様な環境の中で、鍛錬を重ねてきた澪が、その実力を世に知らしめたのは、小学生低学年の頃であった。それまで無名であった澪は、相手に、有効すら取らせず、圧倒的な強さを持って全国制覇を成し遂げ、完全勝利を目の当たりにした関係者は、神童現ると、言い立てた。しかし、なぜか、翌年からは地区予選すら勝ち抜けなくなり、誰もが、手のひらを返したように、口にせずとも全国優勝はまぐれだったと感じていた。
勿論、澪自身も違和感があった。勝てなくなったことに悔しさも感じていた。決められていた技が決められない。どんなに練習を重ねても、一本を決めたいときに、身体が動かなくなる。何が足らないのか理解できず、何度も剣道をやめてしまおうと思った。竹刀を取らない日もあった。しかし、揺らぐ気持ちを抱きつつ、練習を重ねていくうちに、いつしか不思議と勝ち負けにこだわらぬようになって、純粋に剣道を楽しむ境地に至っていた。
過去の栄光を早々に放下した澪は、中学卒業後、優勝にこだわらない公立高校の剣道部に所属し、時々顔を見せる剣道部の顧問から、筋は良いと褒められるだけで、満足した。
もちろん、筋が良いと褒められたのは、自宅には道場と、剣道愛好家が集っていて、休日には稽古をつけてもらえていた成果であったといえる。
その様な環境の中で、鍛錬を重ねてきた澪が、その実力を世に知らしめたのは、小学生低学年の頃であった。それまで無名であった澪は、相手に、有効すら取らせず、圧倒的な強さを持って全国制覇を成し遂げ、完全勝利を目の当たりにした関係者は、神童現ると、言い立てた。しかし、なぜか、翌年からは地区予選すら勝ち抜けなくなり、誰もが、手のひらを返したように、口にせずとも全国優勝はまぐれだったと感じていた。
勿論、澪自身も違和感があった。勝てなくなったことに悔しさも感じていた。決められていた技が決められない。どんなに練習を重ねても、一本を決めたいときに、身体が動かなくなる。何が足らないのか理解できず、何度も剣道をやめてしまおうと思った。竹刀を取らない日もあった。しかし、揺らぐ気持ちを抱きつつ、練習を重ねていくうちに、いつしか不思議と勝ち負けにこだわらぬようになって、純粋に剣道を楽しむ境地に至っていた。
過去の栄光を早々に放下した澪は、中学卒業後、優勝にこだわらない公立高校の剣道部に所属し、時々顔を見せる剣道部の顧問から、筋は良いと褒められるだけで、満足した。
もちろん、筋が良いと褒められたのは、自宅には道場と、剣道愛好家が集っていて、休日には稽古をつけてもらえていた成果であったといえる。