田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「午後のロードショー」『天河伝説殺人事件』

2021-09-20 07:14:16 | ブラウン管の映画館

『天河伝説殺人事件』(91)(1991.4.20.松竹セントラル)

 内田康夫の原作を市川崑が映画化。能楽の世界で起きた連続殺人事件に、紀行ライターの浅見光彦(榎木孝明)が挑む。

 市川崑が、『幸福』(81)以来、久しぶりに撮った現代劇。従って、こちらの期待も大きかった。ところが、よく言えば、いかにも崑タッチの映画に仕上がっているとも言えるが、少々意地悪く見れば、「何だ、金田一耕助シリーズと同じじゃないか」ということになる。

 そして、もうそれほど映画を撮る時間が残っていない老匠が、再び角川のお抱え監督になる余裕はないばずだ。言い換えるなら、一ファンとしては、市川崑にこういう便利屋みたいな仕事はもうしてほしくないと思うのだ。

 確かに、相変わらず役者の使い方や映像処理は見事だと思うが、それは、こちらが過去の金田一耕助シリーズを見慣れているから、という一種のノスタルジーを刺激しているからであって、特に驚くべきものではない。

 日本映画の現状を考えれば、ベテランはこうした形でしか映画が撮れないという事実はあるにせよ、このシリーズが監督・市川崑のエピローグでは何とも寂しい気がする。出来れば違った形の映画で、何とかもう一花咲かせてほしいと願わずにはいられなかった。

【今の一言】角川サイドは、浅見光彦ものでシリーズ化をもくろんでいたようだが、その後の角川春樹の逮捕に始まる内部の混乱の影響もあり、結局この映画だけで終わっている。

 市川崑はこの映画の後、『四十七人の刺客』(94)『八つ墓村』(96)『どら平太』(00)『かあちゃん』(01)と、時代劇と金田一ものを交互に撮ったが、実質的な遺作は結局セルフリメークの『犬神家の一族』(06)だった。

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「ザ・シネマ」『キャノンボール』

2021-09-19 07:15:12 | ブラウン管の映画館

『キャノンボール』(81)(1981.1.12.日比谷映画)

 アメリカ大陸を東から西へと横断する公道ラリーレース。賞金目当てのレーサーたちがあの手この手でゴールを目指す。

 予想以上に楽しめた。例えば、『八十日間世界一周』(56)『おかしなおかしなおかしな世界』(63)『素晴らしきヒコーキ野郎』(65)『グレートレース』(65)などにも通じる面白さがあった。

 多彩な出演者たちは、ピーター・フォンダを除けば(彼の時代はもう終わったのか…)、それぞれの個性を生かしているし、『007』『アラビアのロレンス』(62)などのパロディや楽屋落ち的な趣向で楽しませる。

 ハル・ニーダム監督、バート・レイノルズ主演のコンビとは『グレートスタントマン』(78)以来の再会となったが、相変わらず快調なテンポで見せてくれた。

 冒頭の、一見散漫になりかねない、雑多な登場人物の登場シーンも飽きずに見させるし、1時間半あまりという上映時間の短さも手伝って、全体にスピード感があふれている。

 最近は、この映画のような、ただ面白いだけというコメディ映画は珍しい。コメディと言いながら過度に風刺を込めたりするものだから、心の底から笑える映画が見当たらない。

 別に、それが悪いというわけではないが、何も考えずにただ笑えるだけの映画も必要だ。不安定な時代故、風刺を利かせたコメディが作られる必然性は分かるが、現実が不安定だからこそ、せめてコメディ映画を見るときぐらいは、心の底から笑いたいと思うのだ。

 多彩な出演者の中で、最も目立っていたのは、誰あろう“やぶにらみ"の名脇役ジャック・イーラムだった。しばらく姿を見なかったので、知らぬ間に死んでしまったのでは…などと思っていたら、この映画では、見事にレイノルズらを食っていた。狂った医者という役はまさにイーラムにぴったり。健在ぶりを知って思わずうれしくなった。

 ラストのNGシーンは、恐らく香港映画や『チャンス』(79)あたりからヒントを得たのだろう。そう考えると、『チャンス』が、最近稀な出来のいいコメディだったことに、改めて気付かされた。

【今の一言】と、40年前の自分は書いているが、久しぶりに見たら、あまりの能天気さ(例えば、飲酒運転はもう笑えない)に、途中で見るのをやめたくなった。



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『ウエスト・サイド物語』エトセトラ

2021-09-18 13:30:11 | 映画いろいろ

 2012年7月、渋谷ヒカリエの「東急シアターオーブ」のこけら落とし公演は、本場ブロードウェイから招いた「ウエスト・サイド・ストーリー」だった。「レッツエンジョイ東京」で、ヒカリエのオープンまでのリポート記事を書いていた関係で、珍しく『DANZAダンツァ』というバレエ情報誌に紹介記事を書いた。

東急シアターオーブ 開業セレモニー ジョージ・チャキリス
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/13528

映画『ウエスト・サイド物語』(61)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cc16d5603be54b5a22e6e792b79285c3

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映画の中で歌うスターたち

2021-09-18 07:11:30 | 映画いろいろ

『ディア・ハンター』(78)
 ビリヤードをしながらフランキー・ヴァリの「君の瞳に恋してる」を歌う、マイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スタン(ジョン・カザール)、スティーブン(ジョン・サベージ)たち。彼らはまだベトナムを知らない。
「Can't take my eyes off you」in 『The Deer Hunter』Bar Scene
https://www.youtube.com/watch?v=AcxhOzCmB6g

『バックマン家の人々』(89)
 妻(ハーレイ・ジェーン・コザック)とよりを戻したい夫(リック・モラニス)が歌うカーペンターズの「遥かなる影」
「Close to You」in 『Parenthood』Rick Moranis
https://www.youtube.com/watch?v=mWiyER6n6Lk

『天使のくれた時間』(00)
 パラレルワールドに迷い込んだ男(ニコラス・ケイジ)が、もう一人の自分がいかに妻(ティア・レオーニ)を愛しているかを知るデルフォニックスの「ララは愛の言葉」
「La La Means I Love You」in『The Family Man』Nicolas Cage
https://www.youtube.com/watch?v=JSo1pcqz-oM

『イエスマン YES”は人生のパスワード』(08)
 ビートルズがコンサートをやったことがあるハリウッド・ボウルに侵入したジム・キャリーとズーイー・デシャネルが「キャント・バイ・ミー・ラブ」を歌う。
「Can't Buy Me Love」in『Yes Man 』Jim Carrey&Zooey Deschanel
https://www.youtube.com/watch?v=O8gBbWuHpLw

『ブラック・ウィドウ』(21)
 偽の父と娘(デビッド・ハーバー、フローレンス・ピュー)をドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」が結び付ける。
「American Pie」in「Black Widow」David Harbour&Florence Pugh 
https://www.youtube.com/watch?v=w7ee9Zksop8

 

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新作映画の公開『ウエスト・サイド・ストーリー』ほか

2021-09-17 14:06:27 | 新作映画を見てみた

 

『ウエスト・サイド・ストーリー』予告編
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1292948

 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 』が、何度かの公開延期を経て、ようやく10月1日から公開される。一方、こちらも何度も公開が延期になっているトム・クルーズ主演の『トップガン マーヴェリック』は、11月19日の公開が予定されていたが、またもや来年に延期になった。

 とりあえず、スピルバーグがリメークした『ウエスト・サイド・ストーリー』は12月10日、クリント・イーストウッド監督・主演の『クライ・マッチョ』は来年の1月14日公開予定が出たが、これらも今後どうなるかは分からない。

 映画宣伝の会社は、何度も公開日が変わるから、その都度ポスターやチラシを刷り直したり、関係各所に変更を伝えなければならなくなるわけで、これもまた大変だ。

 誰のせいでもありゃしない。皆コロナが悪いのか…。(「悲しき願い」)

 

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「金曜ロードショー」『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』

2021-09-17 08:02:21 | ブラウン管の映画館

『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97)

これは進化なのか、それとも退化なのか
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/280d946b3f2ee6e198696071b7022989

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「BSシネマ」『スペシャリスト』

2021-09-17 07:49:32 | ブラウン管の映画館

『スペシャリスト』(69)

伊、仏、モナコ、西独の合作という多国籍映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/da14190fdc974ad0125ef23687ddd6a4

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「午後のロードショー」『アルカトラズからの脱出』

2021-09-17 07:15:52 | ブラウン管の映画館

『アルカトラズからの脱出』(79)

「ドジャースは2年前にロスに移ったぜ」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e9300229025e98f9c597e549b78b5823

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「海風」(風)

2021-09-16 12:27:45 | 音楽

 伊勢正三とフォークデュオ「風」を組んだ大久保一久が亡くなった。風には、「22才の別れ」「あの唄はもう唄わないのですか」「ささやかなこの人生」などの名曲があるが、自分が一番好きだったのは、高校生の時に聴いた「海風」(77)だった。

 この頃から、AOR、フュージョン、クロスオーバーなどと、音楽が細かく分類され始めたが、その先駆けのような曲。今聴いても、とても77年のものとは思えないようなかっこいい曲だ。

https://www.youtube.com/watch?v=_Ob8__zE6oY

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【ほぼ週刊映画コラム】『レミニセンス』

2021-09-16 07:17:50 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
記憶にまつわるSFラブロマンス
『レミニセンス』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1292572

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