イチローと白鵬(2011.1. 1.)
年末に、偶然書店で見つけた『新・イチロー伝説』を楽しく読んだ。これはロバート・ホワイティングと芝山幹郎がイチローと過去の大選手を比較した対談集で、「クールな仮面をかぶっている点ではイチローはスティーブ・マックィーンと似ている」などの小ネタもなかなか面白かった。
ところで、元日のNHKはまさにイチローざんまいだった。深夜から早朝に掛けての『イチロー2244安打 全部見せます!』はさすがに途中でくじけたが、夜の『イチロー ぼくの歩んだ道~特別対談「大リーグの10年」with糸井重里~』はしっかりと見た。
その中で語られた、イチローが、シーズン最多安打の前記録保持者だったジョージ・シスラーの墓を訪ねたというエピソードは感動的だった。
彼が語るシスラーとの不思議な縁を聞いていたら、去年、連勝中の白鵬がやはり双葉山との縁について語っていたことを思い出した。思えば、イチローと白鵬は、メジャーリーグと角界という伝統のある世界では異邦人であり、単に偉大な記録に迫ったり更新しただけではなかったのだ。だからこそ、彼らは目に見えない先達との縁を心の支えにしたのだろう。
シスラーの孫が「イチローが祖父の記録を破れば祖父は忘れられてしまうかもしれないと恐れた」と語っていたが、それはまったく逆だ。ベーブ・ルースやタイ・カッブに比べれば地味なシスラーは、イチローによって再びその存在が注目されたのだから。白鵬の連勝中も、双葉山のほかに太刀山、梅ケ谷、谷風といった過去の名横綱の名がよみがえった。2人は記録を追うことで先達を球場や土俵に呼び戻したのだ。
【今の一言】今は大谷翔平がベーブ・ルースを呼び戻している。