田中雄二の「映画の王様」

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『ウエスト・サイド物語』

2019-06-03 11:01:39 | 1950年代小型パンフレット

『ウエスト・サイド物語』(61)(2010.4.4.午前十時の映画祭TOHO・シネマズ六本木)

 久しぶりに大画面でこの映画を堪能した。線画が印象的なソウル・バスのタイトルデザインに序曲が重なる。やがて線画はマンハッタンの実景に変わり、俯瞰でニューヨークの風景が映される(旧ヤンキースタジアムも映る)。そして地上に降りたカメラは不良集団のジェット団を捉える…。

 ロバート・ワイズは俯瞰から降りてくるオープニングを、後の『サウンド・オブ・ミュージック』(65)でも使ったが、70ミリミュージカルとしてのスケールの大きさを感じさせる上では効果的だ。

 この映画は、社会派映画も得意な職人監督のワイズ、ジェローム・ロビンス振り付けによる圧倒的なダンス(マイケル・ジャクソンも影響を受けているのでは?)、そしてレナード・バーンスタインの音楽が見事に融合して生み出された奇跡の映画。

 その白眉は、それぞれの思いが別々の「トゥナイト」に乗って始まり、やがて一つになっていくクライマックスのカットバックだ。「トゥナイト」「マリア」「アメリカ」「クール」…の何と素晴らしいことか。

 とは言え、今回は「ロミオとジュリエット」を現代によみがえらせたアーサー・ローレンツの原作、アーネスト・レーマンの脚本、そしてダンスシーンを見事に映し取ったダニエル・L・ファップのカメラワークも素晴らしいと改めて感じさせられた。

 俳優陣は、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノはもちろんいいが、あまり語られないラス・タンブリン(後に日本の『サンダ対ガイラ』(66)に出た)も結構頑張っているぞと言ってあげたい気がした。

 そして、サイモン・オークランド(刑事)、ネッド・グラス(ドラッグストアの親父)など、踊らない脇役は目立つが、ちょっとかわいそうなのは、主役ながら歌は吹き替えのリチャード・ベイマー(トニー)とナタリー・ウッド(マリア)。2人はラスト近くでやっと芝居をさせてもらった感じだが、マリアがトニーの亡がらを抱いて「ドント・タッチ・ヒム!」と叫ぶシーンに、「私は歌わない。けれども私は女優よ」というウッドの意地を見た気がして感動させられた。

(追記)この映画の公開当時のパンフレットには「成功物語 おどろくべきミリッシュ社」というコラムが載っている。そのミリッシュ・カンパニーとは、ハロルド、マービン、ウォルターの3兄弟が設立した独立系の映画製作会社のこと。

 主にユナイトと提携し、『ウエスト・サイド物語』の他にも、『騎兵隊』(59)『お熱いのがお好き』(59)『アパートの鍵貸します』(60)『荒野の七人』(60)『噂の二人』(61)『非情の町』(61)『大脱走』(63)『ピンクの豹』(63)『生きる情熱』(65)『ハワイ』(66)『夜の大捜査線』(67)『華麗なる賭け』(68)『屋根の上のバイオリン弾き』(71)など、硬軟取り混ぜたいい映画を残している。


 

パンフレット(61・不明)の主な内容は
製作エピソード/あらすじ/ロケーションこぼればなし/アイデア・マン・ロケーションストーリー/成功物語おどろくべきミリッシュ社/ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ラス・タンブリン、リタ・モレノ、ジョージ・チャキリス/ちょっとした動きにも意味がある/ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス/ウエスト・サイド物語の音楽レナード・バーンシュタイン、スティーヴン・ソンドハイム、ジョニー・グリーン


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