『情婦』(57)(1986.2.4.銀座文化)
未亡人殺害の容疑者レナード(タイロン・パワー)は、老弁護士ウィルフリッド卿(チャールズ・ロートン)に弁護を依頼する。だが、レナードの妻クリスティーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が証人として出頭し、驚きの証言を行う。
先にテレビでドラマ版の「検察側の証人」を見てしまったので、話の大筋は分かっているのに、さすがはワイルダー。ストーリーを知ろうが知るまいが(もちろんこの映画の場合は知らないに越したことはないのだが…)、最後まで飽きることなく見せられてしまった。
何より素晴らしいのは、ロートン、ディートリッヒ、パワー、エルサ・ランチェスターという俳優陣。ドラマ版でも、ラルフ・リチャードソン、ダイアナ・リグ、ボー・ブリッジス、デボラ・カーといった芸達者が演じていたが、どう見てもこの映画の方が上である。役者を生かすワイルダーの演出のうまさがここでも証明される。
加えて、原作や戯曲にはないシーンを作ってストーリーに膨らみを持たせ、ロートン演じる弁護士の日々の生活、ランチェスター演じる看護婦とのやり取りなどの、細かい描写を積み重ね、葉巻や薬、片眼鏡といった小道具を巧みに使いこなす。まさに名人芸である。
チャールズ・ロートンのプロフィール↓
タイロン・パワーのプロフィール↓
ビリー・ワイルダーのプロフィール
パンフレット(58・松竹事業部(MARUNOUCHI SHOCHIKU NO.11))の主な内容
お願い!/解説/巧緻な演出になるクリスティの法廷ドラマ(植草甚一)/ものがたり/この映画の御理解をお助けするために/オールド・ベイリー(中央刑事裁判所)について/アガサ・クリステイ素描/四つの素晴らしい魅力(南部圭之助)/マレーネ・デイトリッヒ、タイロン・パワー、チャールス・ロートン、ビリイ・ワイルダー(監督)/「情婦」に寄せられた著名人のアンケート
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