田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『昼下りの情事』

2020-11-11 07:11:33 | 1950年代小型パンフレット

『昼下りの情事』(57)(1989.11.26.)

 私立探偵シャバッス(モーリス・シュバリエ)の娘アリアーヌ(オードリー・ヘプバーン)は、父親のファイルから、アメリカの富豪フラナガン(ゲーリー・クーパー)の資料を盗み読みむうちに、彼に恋をしてしまう。監督はビリー・ワイルダー。



 何十年ぶりかで封印が解け、せっかくリバイバル公開されたのに見逃して、結局ビデオで見るはめになった。とは言え、この映画を映画館で女性に囲まれながら見るのはちょっと照れくさい気もするので、一人でニヤニヤしながらじっくりと楽しめたことを良しとするか。何しろワイルダーとI・A・L・ダイヤモンドの脚本が、無理に背伸びをする若い女性の心理を巧みに描いていて、演じるオードリーがかわいく見えて仕方なくなってくるからだ。

 加えて、最初は老けが目立ってどうかなあと思わせたプレーボーイ役のクーパーと、ひたすら悲惨な犬と楽団とX氏とミシェルを対照的に見せることによって、違和感を緩和する巧みな演出、父親役のシュバリエの粋、しゃれたセリフや小道具、音楽効果も見事…と、この映画は、まさに小粋な映画の手本と言っても過言ではないのだ。

 ところで、初対面の時に、フラナガンに名前を聞かれたアリアーヌが「イニシャルはAだけど、アドルフでないことは確か」と答えるが、これはワイルダーとオードリーのナチス嫌いが象徴されたセリフとも取れる。

 *この後、『ビリー・ワイルダー 自作自伝』でこの映画に関する件を読んだら、いろいろと興味深いエピソードがあったことを知った。
・ワイルダーはフラナガン役に、クーパーではなくケーリー・グラントを起用したかった。
・この映画から、ワイルダー映画の共同脚本家が、チャールズ・ブラケットからダイヤモンドに代わったことで、作風に変化が起きた。
・この映画で、かつてエルンスト・ルビッチ、ジョージ・キューカー、ハワード・ホークスらが作った、泡がはじけるようなシャンパンコメディ(スクリューボールコメディ)を目指した。
・恋のベテランである遥か年上のプレーボーイが、ルーキーである少女に手玉に取られるというのは、初期の『少佐と少女』(42)『麗しのサブリナ』(54)にも通じる、ワイルダー好みのテーマだった。etc…。

なるほど。

『名画投球術』いい女シリーズ2「ちゃんと観たことありますか?」オードリー・ヘプバーン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f64acdf38588e036985f3da44701ca89

オードリー・ヘプバーンのプロフィール↓


ゲーリー・クーパーのプロフィール↓


モーリス・シュバリエのプロフィール↓


ビリー・ワイルダーのプロフィール↓

パンフレット(57・外国映画出版社)の主な内容は
この映画について/ものがたり/オードリー・ヘップバーン、ゲィリー・クーパー、監督ビリイ・ワイルダー/製作余話


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『おらおらでひとりいぐも』 | トップ | 『地上最大のショウ』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

1950年代小型パンフレット」カテゴリの最新記事