田中雄二の「映画の王様」

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『イースター・パレード』

2020-12-22 07:59:21 | 1950年代小型パンフレット

『イースター・パレード』(48)(1993.11.25.)



 20数年ぶりにこの映画を見直すきっかけになったのは、和田誠演出、構成の音楽ライブ番組「ソング・イズ・ユー」。その中で歌われたアービング・バーリン作曲の「イースター・パレード」が耳に残ったからである。

 この映画は、戦後、日本で公開された最初の本格的カラーミュージカル映画なので、当時の淀川長治先生や双葉十三郎さんの批評を読むと、彼らがいかに熱狂的にこの映画を迎え入れたのかが分かってほほ笑ましくなる。

 また、この映画は、当初はジーン・ケリーとジュディ・ガーランドの共演で撮られる予定だったのだが、ケリーがけがをして、そのピンチヒッターとして、当時半引退状態だったフレッド・アステアが起用されたらしい。そして、これが、図らずも、この後訪れる“MGMでのアステア”という第二次黄金時代の端緒となったのだ。

 もし、ケリーが予定通りに演じていたら、戦後のアステアの活躍はなかったかもしれないし、ハリウッドミュージカルも全く違う方向に進んだかもしれない。そう考えると、両者の縁の不思議さを感じる。

 また、この映画のガーランドは、抜群に歌がうまくて可憐なのだが、彼女は終生自分の容姿にコンプレックスを抱き、それが薬物中毒の原因の一つにもなったのだという。さらに、この映画は、ガーランドの夫のビンセント・ミネリが、彼女との不仲が原因で監督を降り、振付師出身のチャールズ・ウォルターズが引き継いで完成させている。

 そんな歴史の裏側を知って見ると、アステアとガーランドが「イースター・パレード」(本当にいい曲だ)を歌いながらアベニューを行くラストシーンが、楽しいだけではなく、より感慨深いものとして映り、思わず涙ぐんでしまった。

https://www.youtube.com/watch?v=lYac9O3GYTM

フレッド・アステアのプロフィール↓


ジュディ・ガーランドのプロフィール↓

パンフレット(50・東宝事業部(Hibiya Theatre.No.21.))の主な内容
解説/梗概/イースター・パレード(秦豊吉)/IRVING BERLIN'S EASTER PARADE(佐藤邦夫)/イースター・パレードの美しさ(岡田恵吉)/イースター・パレードの味(淀川長治)/イースター・パレードを観て(矢田茂)/蛇の穴


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