田中雄二の「映画の王様」

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『タバコ・ロード』

2019-03-27 11:29:56 | 1950年代小型パンフレット
『タバコ・ロード』(41)(1992.1.)



 1930年代の米ジョージア州を舞台に、不毛の土地に生きる極貧の農民一家の暮らしを、皮肉とユーモアを交えながら描く。アースキン・コールドウェル原作の舞台劇をジョン・フォードが映画化。日本では製作から47年たった88年になってようやく公開された。

 この映画が戦後も公開されなかった理由は、アメリカの貧困や猥雑さを描いているからだという。つまり日本人にアメリカのいいイメージだけを植え付けたいと考えた進駐軍にしてみれば、この映画は教育上よろしくなかったというわけである。

 その理由にはあきれるが、その半面、「こういう映画にこそフォード本来の魅力が…」というのは、年月を経た今だからこそ言えるセリフなのかもしれないとも思った。何故なら、もし当時ちゃんと公開されていたとしても、失敗作として捉えられていたのでは…と思えるほどの異色作だったからである。

 フォードの映画にしては珍しく、感情移入しにくい貧しくぐうたらな一家が描かれ、ストーリーもあちこち横道に逸れ、真正面から「お見事!」とは言いにくい映画なのである。ところが、その端々に散りばめられたフォード独特のユーモアとペーソス、あるいは見事な映像美に乗せられて、結局は、何かいいものを見せてもらったような気にさせられる。ある意味、名監督とは希代のペテン師なのかもしれないと思わされた。

ジーン・ティアニー



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