田中雄二の「映画の王様」

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『アスファルト・ジャングル』

2019-01-29 16:26:01 | 1950年代小型パンフレット
『アスファルト・ジャングル』(50)(1994.10.21.)



 舞台はアメリカのある街。刑務所から出所した知能犯のドック(サム・ジャッフェ)は、賭博業者のコビー(マーク・ローレンス)に宝石強盗の計画を持ちかける。2人は、資金提供者のエマリック(ルイス・カルハーン)、金庫破りのルイ(アンソニー・カルーソ)、運転手のガス(ジェームズ・ホイットモア)、用心棒のディックス(スターリング・ヘイドン)、ボー(ブラッド・デクスター)、情婦のドール(ジーン・ヘイゲン)とアンジェラ(マリリン・モンロー)を仲間に引き入れ、強盗計画を実行に移すが…。

 宝石強盗をした犯罪者グループが、仲間割れの果てに破滅するさまを描いたハードボイルド劇。監督・脚色ジョン・ヒューストン、脚色ベン・マドウ、原作W・R・バーネット。モンローはこの映画あたりから目立ってきたようだ。

 この映画は、出来不出来の波が大きいヒューストンの作品の中では傑作の部類に入る…。いやいや、そんな表現では済まないな。この映画を今まで見ていなかった自分の怠慢を反省させられることしきりの大傑作だった。

 ヒューストンは、生涯異端を貫いたアウトロー的な映画監督だったが、この映画や、『マルタの鷹』(41)『黄金』(48)『白鯨』(56)『ロイ・ビーン』(72)『王になろうとした男』(75) といった、何かを成し遂げようとしながら、結局挫折してしまう男たちの、夢の空しさを描かせると天下一品だった。

 そこには、異端としてハードボイルドを装いながら、それとは相反するような、例えば、この映画のディックスが牧場を買い戻すことを夢見ているように、センチメンタルな部分も内包されている。だからこそ、見る者の琴線に触れるのだろう。

 【今の一言】この映画を見たきっかけは、クエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグス』(92)にあった。あの映画を見たときに、周囲のあまりの評判の良さに、釈然としない思いが残り、タランティーノが影響を受けたであろうこの映画を見てみたのだ。その結果、タランティーノがちゃんと過去の映画を勉強していることは分かったが、自分が釈然としない理由は、『レザボア・ドッグス』には、この映画のような、センチメンタルな部分が欠けているからだと納得したのだった。

マリリン・モンローのプロフィール↓

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