『バンド・ワゴン』(53)(2011.2.6.市川コルトンプラザ)
今年の午前十時の映画祭の第一弾。この映画の名シーンを最初に見たのは、75年3月21日に丸の内ピカデリーで見た『ザッツ・エンタテインメント』(74)の中で。本編とは、85年10月25日に銀座文化で初対面。併映は、ジーン・ケリー、フランク・シナトラ主演の『錨を上げて』(45)だったから、今から思えばぜいたくな組み合わせだった。
製作アーサー・フリード、脚本ベティ・カムデン、アドルフ・グリーンというスタッフは、ジーン・ケリーの『雨に唄えば』(52)と同じ。片やサイレントからトーキーへの移行期の映画界を、こなた変革が求められた演劇界を背景に描いた“バックステージもの”という点でも共通している。
ところが、『雨に唄えば』の面白さに比べると、この『バンド・ワゴン』の方は、自分にとっては今一つという感じがした。落ち目の映画スターをフレッド・アステアが演じるという楽屋落ち的な設定の妙、脇役のナネット・ファブレイ、ジャック・ブキャナンなどもいい味を出してはいるのだが、ビンセント・ミネリの演出に切れがなく、映画全体として見ると締まらないところがあると感じたのだ。
何より相手役のシド・チャリシーとアステアとの踊りのリズムやテンポが合っていない気がして、やっぱりアステアにはジンジャー・ロジャースなのかな、などとも思った。そして今回、およそ20数年ぶりの再会となったわけだが、残念ながらそうした印象が拭われることはなかった。
ところで、ミッキー・スピレインのハードボイルド小説をモチーフにした劇中の「ザ・ガール・ハント・バレエ」は、マイケル・ジャクソンの「スムース・クリミナル」のミュージックビデオに大きな影響を与えているという。
フレッド・アステアのプロフィール↓
パンフレット(53・国際出版社)の主な内容
解説/歌曲集/梗概/一九五四年にMGMが贈る豪華多彩なラインアップ/「バンド・ワゴン」の鑑賞(大黒東洋士)/TOPIC/この映画を構成する人々フレッド・アステア、シド・チャリシー、オスカー・レヴァント、ナネット・ファブレイ、監督ヴィンセント・ミネリ