goo blog サービス終了のお知らせ 

映画の王様

映画のことなら何でも書く

『大統領とハリウッド-アメリカ政治と映画の百年』(村田晃嗣)

2020-03-18 09:03:52 | ブックレビュー

 D・W・グリフィスの『国民の創生』(1915)のリンカーンを皮切りに、ハリウッド映画は、実在と架空を交えながら、大統領を描き続けてきた。本書は、ルーズベルト、ケネディ、レーガン、そして現在のトランプといった歴代の大統領を軸に、政治と映画との相互作用について書かれている。

 興味深い内容ではあったが、映画に対する思い入れがあまり感じられず、ただタイトルと簡単な内容を羅列しているだけ、という印象を受けた。唯一気になったのは、『デーヴ』(93)の基になったという『お化け大統領』(32)だった。 

 筆者が大学教授であり、蓮實重彦や四方田犬彦を引用するところに、映画関連本としての限界や、映画学術書的な線を狙った本書の特徴が表れていると思った。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『昔の映画をビデオで見れば』(90)『映画を見るたびにぼくは少年に戻って行く マイ・ティージング・ハート』(92)(武市好古)

2020-03-11 09:55:36 | ブックレビュー

 『昔の映画をビデオで見れば』(90)『映画を見るたびにぼくは少年に戻って行く マイ・ティージング・ハート』(92)

 前者は往年の名画をビデオで見直した際の感慨をまとめたもの。後者はキネマ旬報に連載されたコラムをまとめたもの。

 どちらも発売時に読んでいたのだが、何度か本を整理する際に手放していた。久しぶりに古書店で見掛け、懐かしくなって読み直してみた。一度手放した本を、再び購入するほどばかばかしいことはないのだが…。

 筆者は『マイ・ティージング・ハート』の中で、映画を見る際は「あ・こ・ぎ」が不可欠だと説いている。

 それは「あこがれ、こだわり、ぎんみ」のことで、すなわち「映画にあこがれる精神、映画にこだわる好奇心と実行力、映画を自分のセンスで吟味する能力を持つこと。この三つを持つことができたら、即プロの観客」とのこと。

 自分自身を振り返ってみると、確かに、最近「あこがれ」は感じなくなっているかなと思う。

 それにしても、この人(大林宣彦監督もそうだが)のゲイル・ラッセルに対する思い入れはすご過ぎるのだが、自分が知らない時代について書く時には、こうしたリアルタイムの思いが記されたものが参考になるのだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『天切り松 闇がたり 5 ライムライト』(浅田次郎)

2020-03-08 20:05:49 | ブックレビュー

 ブックオフで見付けた短編集の中の一編「ライムライト」を読む。

 1932(昭和7)年、喜劇王チャップリンの来日に際して、軍部による暗殺が計画された。彼の命を救うため、義賊・安吉一家が動き出す。五・一五事件とチャップリン来日を背景に、いかにも浅田次郎らしい、強引な泣かせ話を作り上げているのだが、作為の跡が見え過ぎて鼻につく。

 チャップリンと五・一五事件については、『チャップリンを撃て』(日下圭介)と『5月十五日のチャップリン』(川田武)が、推理小説の形を借りて詳細に描いている。

『淀川長治の証言 チャップリンのすべて』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1b90f2a7d3da72c38d9332f11b50328

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『アメリカ映画製作者論』(森岩雄)

2020-03-05 11:58:39 | ブックレビュー

 筆者は東宝(PCL)のプロデューサーで、戦前のエノケン(榎本健一)のオペレッタ映画や、戦後の『ゴジラ』(54)の製作に大きく寄与したことでも知られている。

 本書は、プロデューサーの視点から見た「ハリウッドを中心としたアメリカ映画産業の変遷」に始まり、D・W・グリフィス、セシル・B・デミル、ルイス・B・メイヤー、チャールズ・チャップリンが個別に語られている。

 これほど人間味にあふれ、同情的なグリフィスとデミルの評伝は初めて読んだし、メイヤーを語りながら、そこにアービング・サルバーグ、デビッド・O・セルズニック、ドア・シャリーを絡ませる人間関係の妙の描き方も秀逸。製作者と演技者との間で葛藤するチャップリンという視点も新鮮だった。

 今から55年も前の本だが、教えられることも多い。何より文章が平易でとても読みやすい。この人の書いたものをもっと読みたいと思わされた。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「隅田川絵巻」

2020-03-02 08:28:57 | ブックレビュー

 先日の「新美の巨人たち」(テレビ東京)で、昭和初期に活躍しながら、24歳で謎の失踪を遂げた版画家・藤牧義夫の「隅田川絵巻」を紹介していた。

 毛筆と墨で描かれたこの絵巻は全4巻・全長50メートルに及ぶ超大作。並べてみると、遠近法や省略、誇張、主観といった映画的な手法を用いているのがよく分かる。今は群馬の館林美術館に保存されているという。一度見てみたいと思った。

 興味が湧いて藤牧のことを調べてみたら、『君は隅田川に消えたのか -藤牧義夫と版画の虚実』(駒村吉重)という、ミステリータッチのノンフィクションが出版されていることを知った。読んでみようかな。

https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/index.html?trgt=20200229

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ジーンズの誕生」(長谷川正)

2020-02-29 15:15:53 | ブックレビュー

 今日の「チコちゃんに叱られる!」で「なぜジーンズは青い?」をやっていた。見ながら、師匠・長谷川正が『西部劇通信51号』(80)に書いていたコラム「ジーンズの誕生」のことを思い出した。

 写真はリーバイスを履いた『ジャイアンツ』(56)のジェット・リンク(ジェームズ・ディーン)。子どもの頃、近所の洋品店で初めてジーパンを買った際に、おまけでこの写真をあしらったカレンダーをもらったことを覚えている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『雨あがる 映画化作品集』(山本周五郎)

2020-02-21 09:02:12 | ブックレビュー

 ラインアップは、『赤ひげ診療譚』から「狂女の話」=『赤ひげ』(65・黒澤明)、 『五瓣の椿』から第六話=『五瓣の椿』(64・野村芳太郎)、「深川安楽亭」=『いのちぼうにふろう』(71・小林正樹)、『季節のない街』から「街へゆく電車」=『どですかでん』(70・黒澤明)、「ひとごろし」=『初笑いびっくり武士道』(72・野村芳太郎)と『ひとごろし』(76・大洲斉)、「雨あがる」=『雨あがる』(99・小泉堯史)。

 別々に読んでいたものを、まとめて読めるのが、こうしたアンソロジーの効用。映画と原作のつながりや違いを知るには便利な一冊だ。昔の監督たちは、本当に周五郎の小説が好きだったんだなあ、と改めて思う。

 もし、第二弾が出るとしたら、「冷飯」「おさん」「ちゃん」=『冷飯とおさんとちゃん』(65・田坂具隆)「その木戸を通って」=(93・市川崑)、「町奉行日記」=『どら平太』(00・市川崑)あたりを入れてほしい。また、テレビドラマの原作になるが「人情裏長屋」もぜひ。

『赤ひげ』と山本周五郎原作映画1
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/155329009d0d95e785d4aced7ca898e9

『赤ひげ』と山本周五郎原作映画2
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f6dd0ca1574fbed6a5436e5ba1323fde

「ダメな人間ばかり出てくる映画を観て安心したい」黒澤明
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5b428edd45778476ab0530bc08c0ef67

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『HEY!スピルバーグ』(小林弘利)

2020-02-17 09:22:36 | ブックレビュー

(1988.5.)

 これは、まさに映画狂にしか書けない話であり、現在の映画界を支えるスピルバーグを、1938年のハリウッド(『風と共に去りぬ』『オズの魔法使』『駅馬車』などが製作真っただ中)にタイムスリップさせるという突拍子もないアイデアを生かして、見事に映画への愛を語っている。それを自分と同年代の人間に書かれてしまった喜びと悔しさが同時に浮かんできた。しかも表紙の絵は和田誠だ。うらやましい限り。

 この小説の“現在”で描かれるのは、『1941』(79)の製作風景だ。俺はこの映画は失敗作だと思うのだが、作者は、この映画はスピルバーグ、ジョン・ランディス、ジョン・ベルーシらの友情の結晶であり、昔のハリウッド映画に対するオマージュを込めた傑作だと捉えている。

 このように、映画とは、人によって見方や捉え方が異なる。それが厄介である半面、楽しいとも言えるのだが、そこに共通するのは“映画への愛”なのだ。そんな、ちょっと気恥ずかしいことを改めて感じさせてくれた。で、もしこの小説が翻訳されて、スピルバーグが読んだら…などと考えてみるのも楽しい。

【今の一言】これは、タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にも通じる、作者の夢を反映させたパラレルワールド話だといえる。作者自身がアナザーストーリーを考えていたらしい。

もうひとつの HEY! スピルバーグ 
https://note.com/etandme/n/n360d7f2221d4
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ふしぎな名画座』(赤川次郎)

2020-02-14 13:49:14 | ブックレビュー

 先日読んだ『銀幕ミステリー倶楽部』に、本書所収の「ローマの休日」届が入っていたので、懐かしくなって再読してみた。

 探しても決して見つからない不思議な「名画座」。そこでは誰か一人のために、懐かしい映画が上映される。そこで見た映画は、人によってはいい方にも悪い方にも作用する。

 「逢びき」のあとで、「天使の詩」が聞こえる、「非情の町」に雨が降る、「コレクター」になった日、「ドラキュラ」に恋して、「もしも…」あの日が、お出かけは「13日の金曜日」、「間違えられた男」の明日、そして「ローマの休日」届、という名画をモチーフにした9話からなる短編集。

 さらっと軽く読めてしまうところがこの人の真骨頂。これはこれで立派な才能だと思う。

『銀幕ミステリー倶楽部』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2cc6fd0ce447d11574526def358ac7d2

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『キネマの神様』映画化

2020-01-31 10:17:35 | ブックレビュー

 先日、原田マハの傑作小説『キネマの神様』を山田洋次監督が映画化するというニュースが流れた。

 けれども、原作の、大手企業を辞めた39歳独身の歩が、映画雑誌「映友」の編集部に採用され、ひょんなことから、映画狂の父のブログをスタートさせると、それが評判となって…という設定とはまるで違う話になるようだ。一体どうなるのだろう。

『キネマの神様』公式サイト
https://movies.shochiku.co.jp/kinema-kamisama/

『キネマの神様』(原田マハ)を再読
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8028269b0cf5e5baa9d099d34fda3589

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする