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被曝労働問題

2016-12-22 10:43:11 | エネルギー
原発ジプシー (講談社文庫)
講談社


 チェルノブイリ作業員の中には疲労感、頭痛、関節痛などで4人に1人が労働不能になった。脳の萎縮による 記憶障害や言語障害を引き起こし、死亡した作業員の脳からも放射能の蓄積が見られた。「リクビダートル」と呼ばれたチェルノブイリ収束作業員は、慰労金や障害補償が支給され、医療費も無料であり、勤労時間によってはアパートが支給された。「赤旗賞」「レーニン賞」などの勲章が贈られた者もいる。
 初期の福島第一原発収束作業に動員された延べ人数は廃棄された防護服から勘案して48万人と推計される。
 福島県川俣町バイク店経営者による証言によれば、2011年3-7月まで福島第一原発で収束作業に従事し500mSv超被曝した21歳の作業員が自宅で心筋梗塞で死亡しても、報道もされず警察による司法解剖もされない。福島第一原発構内における最悪の汚染地帯では、およそ1Sv/hまたはそれ以上であり、未登録の労働者が強制労働させられている。彼らは大阪などで集められ、使い捨ての労働者として扱われている。3号機に赴いた作業員がその一帯を見たときには、1~2Sv/hの瓦礫であふれていたが、翌朝には完璧に綺麗になっていた。それは非常に繊細な作業となるため、人の手で行われる必要があった。使い捨ての労働者が死ぬまで監禁され、労働を強制され、「行方不明」として扱われていたと言う。警察は福島第一原発20kmの領域の境界内の警備は放射線のレベルを知らされておらず、多くの警官がなくなったが、その死は決して報道されない、とのことである。
 「吉田調書」によれば、消防隊やレスキュー隊の活動はあまり効果がなく、最も線量の高い時の消防車注水作業は南明興産(東電フュエル)、瓦礫撤去はゼネコンの間組(安藤ハザマ)が行ったとされる。間組は一朝有事とあらば決死隊を組織して送り込む社風がある。間組50代社員7人が3月15に現地入りして瓦礫撤去作業を行っている。
 「ヤクザと原発 福島第一潜入記」を著したフリージャーナリスト鈴木智彦によれば、福島第一原発労働者の日当1万円から多くて1万5千円だったという。危険でないという建前なので、危険手当が支給されていない。10次下請けで働かされている人もおり、中抜きされている。中には日当7千円の作業員もいるとの証言もある。いわき市などの地元業者では高線量なので5万円でも請け負わないと言う。
 東京電力は名目上三次下請けしか認めていない。 実際には東京電力の次に日立GEもしくは東芝が下請けし、その次が一次下請けとなっている。福島第一原発構内で作業員が死亡した際に、東京電力は記者会見で「東京電力としては三次下請けより先の作業員については関知しない」と明言した。
 電力会社が組織暴力団と深い関係にあり、最下層下請け労働者の供給を組織暴力団の手配師に頼ってきた歴史がある。被曝労働の実態こそがマルクスの説いた資本主義市場における労働における疎外なのではなかろうか。


原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録
現代書館

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