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核燃からの離脱

2016-12-28 10:02:56 | エネルギー
主演: メリル・ストリープ
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 福島第一原発事故は原発政策を進めている他国にとっても深い影響を与えた。ドイツ・イタリアは脱原発へと舵を切った。これは日本と同じく国連の定める旧敵国条項適用国であるので、核武装オプションがあり得ないことも影響していると思われる。イスラエルは国防上の理由から脱原発を決定した。
 ジミー・カーター元大統領は大統領在任中1977-81年に、構造や設計の複雑さから米国における再処理工場及び高速増殖炉を含む核燃サイクルからの撤退を決めた。カーターは海軍で原子力潜水艦ノーチラス号の設計を担当していた。米海軍は原潜や原子力空母を保有しているので、核技術については詳しい。米原子力規制委員会への人材供給源ともなっている。カーターは1977年日本に対し、日米再処理交渉を通じて日本の核燃サイクル撤退を要請している。これに日本側は抵抗した。当時の大統領補佐官ズビグネフ・ブレンジンスキーがカーターに対し、日本側の意向を伝え説得した。実質的には米国側が日本に主張させ、カーター大統領を翻意させたと推定される。
 結果、アメリカはウラン濃縮設備維持しつつも、Puを抽出する再処理施設はすべてを廃止した。オバマ大統領はエネルギー省サバンナリバーサイトのMOX燃料工場計画を、総工費見積もりが当初の50億$から170億$に拡大したことを理由に凍結した。一方、日本では六ケ所村に再処理工場を稼働させつつあるが、高速増殖炉もんじゅや常陽も含めて事故で頓挫中である。その惨状であるにも関わらず、すべてMOX燃料を使用する「大間原発」を電源開発㈱が建設中である。大間原発施主である日立製作所には元経産省事務次官が社外取締役として天下りしている。天下りというのは収賄の先物取引に過ぎない。
 原子力発電に経済的な利点はない。石油でウランを掘削し、エネルギー置換をしている分、損失が大きいとされる。あえて原子力をエネルギー源とする価値があるのは長距離・長時間潜行する潜水艦だけである。その潜水艦も核ミサイルを搭載して、敵国付近の公海を巡回するという核戦略の一翼を担っているから存在しているに過ぎない。原子力潜水艦は蒸気循環を利用するので、蓄電だけで動作する潜水艦よりも静音性に劣り、長距離航行を前提としない限り軍事的優位性が失われている。
 英国核燃料会社は福島第一原発によって日本の原子力政策の不透明感が増すなか、中部電力など10社とのMOX燃料契約を白紙撤回した。セラフィールド再処理工場も閉鎖予定としている。英国学会は2012年ICRPと分かれて独自の研究を進めている。
 日本は米露仏と原子力協定を締結している。フランスは「ド・ゴール主義」に基づき、大国の狭間で一定数の核武装を実現して主権を保持する狙いがあったと思われる。米日間の力関係を鑑みれば、日本側に核燃政策において自主的な権利が存在するとは考え難い。米国から提供されたウラン燃料の所有権は米国側にあるとされる。抽出したPuについても、同じであろう。
 核兵器保有国は核武装する上でウラン濃縮施設を維持しなくてはならない。ウラン濃縮設備を稼働させ続けるためにウラン燃料需要先として原発が利用され、高速増殖炉で再使用する事を名目に、原発が生み出す使用済み核燃料からPuを再処理抽出を目指してきた。
 2012年8月15日「第3次アーミテージレポート」が発表された。「東京とワシントンは、フクシマからの広範な経験を生かしながら、この分野で同盟関係を活性化し、安全な原子炉の設計と健全な規制業務の普及を世界的に促進することにおいて指導的役割を再び演じる必要がある。」と日本側に原子力政策の維持を求めている。
 核弾頭は5年程度でアメリシウムが増加してγ線が増える上に、不測の核連鎖反応の発生や、爆縮時の不均一発生などによる威力低下のため交換が必要だと言われる。つまり核武装国家は持続的に純度が高いPu239を欲っする。米国はPuの再処理から撤退した。属領植民地にPu抽出や生成作業を行わせていたとしても不思議ではない。
 U235の濃縮時よりもPu239抽出時の方が比較にならないほど環境を汚染する。それはワシントン州ハンフォード核施設の汚染状況を見れば一目瞭然である。ハンフォード汚染除去には12兆円の費用が必要だとされている。
 六ケ所村再処理施設は2008年稼働停止しているが本格稼働すれば、千葉県付近まで海洋汚染されることが、海流調査で分かっている。現在、福島第一原発事故を迎えた後となり、すでに酷い海洋汚染が起きてしまった。もはや、核を使用したエネルギー源に頼るべきではないことは明白である。米国の核武装に依存する外交戦略も見直すべきである。すでに手遅れでは有るが、すべての核無き世界を前提に国体も産業も生活も構築しなおすべきである。

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