はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

密室殺人ゲーム2.0

2010-04-16 21:54:30 | 小説
密室殺人ゲーム2.0 (講談社ノベルス ウC-)
歌野 晶午
講談社

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「密室殺人ゲーム2.0」歌野晶午

 世に出回るミステリにはもう飽きた。ならば自分で作ってしまえ。頭の中で作るだけじゃ物足りない。ならば実際に人を殺してしまえ。
<頭狂人><044APD><aXe><ザンギャ君><伴道全教授>。奇妙なハンドルネームの5人は、夜な夜なチャットで群れ集い、互いが作成したリアルミステリを解き合い評価し合う。
 鬼畜上等。血の池地獄なんのその。ミステリジャンキーによる、ミステリのための殺人事件の数々の先に待つものとは……。

 前作「密室殺人ゲーム王手飛車取り」から何年になるのか、とにかくあれはすごい作品だった。まったく無関係の人間を、純粋に自らの楽しみのためだけに殺しまくる人たちしか登場しないので、面白い面白くないを語るのは倫理的にややこしい部分もあったが、おそらく歌野晶午以外の誰にも書けない、完全オリジナルのミステリであることだけはたしかだ。
 本作も、前作同様にすさまじい。鬼畜上等の精神にはまったく小揺るぎもなく、しかも前作からの引きがあるので、既読者にはさらなる罠が待ち受けている。
 人間味の無い新本格のミステリが嫌いな人には全力で回避してほしい物件だが、「面白ければいいっしょ」というリベラル派にはおすすめ。予想もつかないこみいったトリックの数々に、驚愕すること請け合いだ。