狼と香辛料〈10〉 (電撃文庫)支倉 凍砂アスキーメディアワークスこのアイテムの詳細を見る |
「狼と香辛料(10)」支倉凍砂
いろいろあったが結果的にはエーブ、キーマンと共闘してイッカク騒動を乗り切ったロレンス一行。今回辿りついたのは、何気にエーブの故郷だったりするウィンフィール王国。
この国、羊毛の産地として数年前まで潤っていたのだが、新王になって以来ぱっとしない。羊毛の暴落と失政の結果、高名なブロンデル修道院までもが商人たちの標的になる始末。
そんな狩人たちの中でも世界最強と謳われる経済同盟・ルウイック同盟の一員・ピアスキーに渡りをつけたロレンス一行は、豪雪地帯の真ん中にあるブロンデル修道院に狼の骨を探しにいくのだが、そこにはとんでもない事件が待ち受けていて……。
いやー、面白い。修道院を経済的側面から見ての話の組み立てはこの作者ならでは。しかもそれが無理なくまとまっていて、プラスアルファでロレンスとホロの間にきっちり決定的なさざ波(矛盾でなく)をたてたりしていて、最初から最後まであますところなく面白い。
もうひとつ、このシリーズで忘れてはいけないのが「人々の暮らしぶり」。雪国で生きる町人や羊飼いたちの生活ぶり。食事や飲み物などが、リアルになりすぎない程度に描かれている(ライトノベルらしくぼかす程度に)。当時の……ってもちろん仮想世界なんだけど、中世的な意味での当時の世界へトリップするには良いのではないだろうか。
あ、ちなみにロレンスの戦いは今回も格好いいです。基本ヘタレなこの男が勇気を振り絞る姿には毎回感動させられる。