不意をつかれた。
意識の外からの一撃だった。
肺腑をえぐるようなスパイスの香り。
乾いた喉を刺激してやまない濃厚なルー。
飲み込むどころか水を口に含む暇すら与えられず、ひたすらにむせながらカウンターに沈んだ。
吉野家T店
半年以上前につぶれたはずのこの店が復活していることに驚いて、思わず店内に足を踏み込んだ。「吉野家なのにカツなあげくカレー」という語感がなんとなく気に入ってカツカレーを頼んだところ、専門店並みの激辛いカレーが出てきた故の惨事だ。
誰に予想ができたことだろう。早い安いうまいがモットーの吉野家で、明らかに辛口とわかるカレーが出てくることを。冷静に見てみればメニューにはしっかりと中辛の文字が書かれたいたが、それにしたって辛すぎる。僕は半ば本気で店員の陰謀を疑った。
たったひとりの僕のための、ピンポイント爆撃。
となれば、負けるわけにはいかないのだ。男として。人間の尊厳にかけて。視界の端で親子連れがびっくりしていたが、へこたれるわけにはいかなかった。
圧巻だった。一滴の水すら請わず、ひたすらにがっついた。渇しても盗泉の水は飲まずというが、その気持ちだった。カツとルーとライスの配分を完全にコントロールしきったパーフェクトな試合運びで、僕はそいつを克服した。
「……ありがとうございました!」
気圧されたような店員の声が、今も耳に残っている。
意識の外からの一撃だった。
肺腑をえぐるようなスパイスの香り。
乾いた喉を刺激してやまない濃厚なルー。
飲み込むどころか水を口に含む暇すら与えられず、ひたすらにむせながらカウンターに沈んだ。
吉野家T店
半年以上前につぶれたはずのこの店が復活していることに驚いて、思わず店内に足を踏み込んだ。「吉野家なのにカツなあげくカレー」という語感がなんとなく気に入ってカツカレーを頼んだところ、専門店並みの激辛いカレーが出てきた故の惨事だ。
誰に予想ができたことだろう。早い安いうまいがモットーの吉野家で、明らかに辛口とわかるカレーが出てくることを。冷静に見てみればメニューにはしっかりと中辛の文字が書かれたいたが、それにしたって辛すぎる。僕は半ば本気で店員の陰謀を疑った。
たったひとりの僕のための、ピンポイント爆撃。
となれば、負けるわけにはいかないのだ。男として。人間の尊厳にかけて。視界の端で親子連れがびっくりしていたが、へこたれるわけにはいかなかった。
圧巻だった。一滴の水すら請わず、ひたすらにがっついた。渇しても盗泉の水は飲まずというが、その気持ちだった。カツとルーとライスの配分を完全にコントロールしきったパーフェクトな試合運びで、僕はそいつを克服した。
「……ありがとうございました!」
気圧されたような店員の声が、今も耳に残っている。