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はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

のうりん(2)

2011-12-01 20:13:21 | 小説
のうりん 2 (GA文庫)
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「のうりん(2)」白鳥士郎

 突如、県立田茂農林高校に転校してきた現役アイドル草壁ゆか・本名木下林檎。無愛想で、なぜか耕作に執心の彼女への特別授業は続く。
 大豆を植えたり、アヒルを育てたり、農業への愛を徐々にその身に蓄えていく林檎。耕作、継、農らとも打ち解け始めた彼女の農業高校ライフは急速に充実していく。基本勢いのあるおバカしかいない学校だということもあってか、日常は波乱万丈だけれども、とても楽しい。それに耕作もいるし……。

 耕作への彼女の執心の理由が明らかになる第2巻。
 うん、面白かった。胸に対する熱い漢どもの雄叫び、男同士の愛に対する腐女子の舌なめずり、金に執着する亡者の囁く声……農業のことを語りながらもなんだかまったくそんなふうには見えないキャラたちの大暴走が良かった。男塾とかカイジとか、とにかくパロディばっかりなので、感性が合うかどうかは人によると思うけど。
 あとは、上記したように、今回林檎の「理由」が明らかになった。別に特別なことではなくて、「ああやっぱりか」程度のものだったけど、前後の話の展開と、耕作の熱いハートが炸裂していて感動的に描けていた。そのあとの展開までは予想できなかったけど……まじ耕作かわいそう。

月見月理解の探偵殺人(2)

2011-11-29 15:35:50 | 小説
月見月理解の探偵殺人 2 (GA文庫)
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「月見月理解の探偵殺人(2)」明月千里

 あの事件からしばらくたった。都築初は、相変わらず妹とギクシャクしたまま、同級生の宮越さんとは普通に接するようになり、所属する放送部の京にこき使われるという普通の日々を送っている。あの狂気の少女・理解がいた頃とは違う平和な日々……。
 だがそれは、一人の少女の出現と共に壊れた。彼女の名は星霧交㖨(イスカ)。実の姉・花鶏(あとり)を殺すことを目的としているという彼女は、初と妹のいざこざの元凶である、初の父の死の訳を知っているらしい?
 動揺する初の前に再び理解が現れ、すったもんだの末、京も含めた4人全員が、「ノアズアーク」と呼ばれる怪しいシェルター施設に閉じ込められることに。そこにはすでに何人かの先客がいて、初らと共に、冷徹なルールに支配された脱出ゲームの参加者にされていた……。

 こ、このシリーズ続いてるのか……と変な感動を覚えた。いやだって、こんなアクの強い作品なかなかないぜ……? どういう人が読むの……? 
 まあ僕ですけど。
 ともかく、相変わらずクセのある作風だった。理解の他人に対する凶悪さは増す一方で、初はあんまりそれに対応できてなくて。宮越さんは可愛いなと思うけど、出番少なすぎて泣けた。イスカは……悪くないけど趣味でもないかな。無口少女とか食傷気味なんで。京はキャラづけがぶれてたかな。理解のせいだとは思うのだけど、豪放磊落キャラになりきれてなかった。
 あとはゲームなんだけど……無理矢理すぎじゃね? 内容も変に複雑にしてるけど、結局は人狼ベースのままだし。もうちょいひねりが欲しい。デスゲームものは好きなんで次巻も読むけどさ……もうちょいなんつうか……。

社会的には死んでも君を!

2011-11-27 01:56:04 | 小説
社会的には死んでも君を! (MF文庫J)
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「社会的には死んでも君を!」壱日千次

 とある男子高校生・薩摩八平には、ある呪いがかかっている。それはラブコメ現象と呼ばれるもので、転んだ拍子に女の子のスカートの中に頭を突っ込んでしまったり、何の気なしに頭をかこうとした手が女の子の胸にあたってしまうという現象だ。漫画や小説の中ではよくあることだが、現実で起こってしまうと当然リアルに変態扱いされてしまう。そのために八平は努力していた。各種漫画や小説で知識を蓄え、いつ何時強制力が働いても平気なように体を鍛え、運命に抗おうとしていた。中学時代は、力及ばずに変態の烙印をおされはぶられていた。
 そんな八平にも味方が一人いる。それは幽霊の香月だ。アイヌの着物のようなものを羽織ったこの美少女幽霊が、幽霊故の視界の広さで八平に危機を教えてくれる。まあもともとが、ラブコメ現象が起きるようになったのは香月が八平にとりついてしまったせいなので、当然の手助けといえばいえるのだが、八平は常に彼女の献身に感謝していた。ぶっちゃけ愛していた。他人からは見えも聞こえもしない存在である彼女と添い遂げようと心に決めてすらいた。たとえ周りからどんな目で見られようと。社会的には死んだとしても。

 序盤の無理矢理くさいハーレム展開な出会いシーンの連続と、地の文のくせがひっかかって、ちょっと読むのに手間取った。ストーカー気味の義姉や、思い込みマックスな級友、品行方正文武両道な生徒会長など、直球テンプレートなハーレム要員たちも鼻について、半ばまでは読むのをやめようと思っていた。
 後半になって香月の存在を揺るがす事件が起き、そこから一気にイメージが変わった。八平だ。魅力的な女性たちに慕われ好かれ、ふらふらしていた彼が、きちんと香月を愛していることが伝わってきたのが原因。一途にまっすぐに香月を求める彼がかっこよかった。もちろん、香月が受け入れてくれても、2人は愛を口にすることしかできないのだけど。そのもどかしさも含めて良い話だった。
 昨今の鈍感ハーレム体質主人公たちの作品群とは一線を画す本作。次巻にも期待です。

レイヤード・サマー

2011-11-24 19:48:29 | 小説
レイヤード・サマー (電撃文庫)
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アスキー・メディアワークス


「レイヤード・サマー」上月司

 黒瀬涼平のある夏の朝は、いつものように幼馴染の茜野々子の説教から始まった。可愛くて面倒見がよくて、誰からも愛される委員長な彼女との、とくに何事もない平和な日常は、一人の女性の登場で壊れた。
 流堂庵璃。怪我を負って倒れていた彼女を救った涼平は、その美しさと女っぽさにどきどきしながら一夜を過ごす。初めて出会ったはずの彼女はしかし、涼平の素性を知っていた。涼平がもうすぐ死ぬことまでも……。
 未来から犯罪者を追って来たという彼女は、涼平にその犯罪者に関わらないように告げる。
 狐につままれたような心持ちの涼平。しかし彼女の真剣さを信じた彼は、約束通り、犯罪者に関わらないようにしようと誓う。
 翌朝、彼が起きた時には彼女はいなくなっていた。
 そうか、彼女は犯罪者を探しに行ったのだ。
 ならば、彼女を助けねばならない。
 命を賭けた戦いに挑むことになった一高校生の涼平の、夏の日々。
 時間跳躍が描く、甘く切ない思い出を君に……。

 タイムスリップの考え方が珍しくて(SF界ではどうか知らないけど)、なんでも、時間は上書きされていくものらしい。つまり、積み重なっていく変革された未来の影響を受けない。ダメだった過去は、ダメなまま。
 でもそれって、ただの自己満足なのでは……。
 どれだけ頑張って過去に影響を及ぼそうとも、変わらない世界がきちっとある。それは悲しい。
 そんなお話。作者あとがきによると、庵璃が「わざと」涼平に語らなかった設定があるそうなのだけど、僕にはよくわからなかった。解釈も間違っている可能性はある。
 でもまあ、文句なく面白い作品。野々子の涼平への一途な想いや、それに答えられない涼平のまだるっこしさや、庵璃のまっすぐさ、最後のお別れシーンに至るまでが丁寧に描かれていて良かった。タイムスリップものに外れなし。彼らがいた夏の夜の匂いを思って切なくさせていただいた。

はたらく魔王さま!(3)

2011-11-09 01:10:47 | 小説
はたらく魔王さま!〈3〉 (電撃文庫)
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アスキーメディアワークス


「はたらく魔王さま!(3)」和ヶ原聡司

 六畳一間の人間界での魔王城の庭に、異界エンテ・イスラからのゲートが開いた。現れたのは小さな少女アラス・ラムス。彼女はたどたどしいながらも言葉を発することが可能だった。彼女は魔王のことをパパと呼び、勇者のことをママ呼んだ。
 芦屋やちーちゃん、何より当人同士が衝撃を受ける夏の暑い日、魔王と勇者とその仲間たちによる子育て奮闘記が始まった……。

 まさかの子育て編。
 まあこういう展開ってベタだけど、あまり異性として距離の縮まっていなかった魔王と勇者の間を接近させるにはいい方法かもしれない。実際、今回も魔王のいい奴っぷりは健在で、子育てがうまいとはお世辞にも言えないけれど、アラス・ラムスにもきちっと愛情を注いでいたし、あれやこれやで魔王・即・斬だった勇者の気持ちはかなりぐらついたようだった。
 でもそうなるとかわいそうなのがちーちゃん。彼女は今回も、昨今の女子高生にあるまじきスペックの高さを見せつけてくれたのだが、話の流れ上、魔王が勇者に持ってかれるフラグが立っちゃったので……。健気でいい娘なんだがなあ……。
 芦屋と勇者の同僚の梨香にも進展があった。魔王と勇者とアラス・ラムスの遊園地デートをちーちゃんも含めた3人で尾行している最中に、まさかのアドレス交換。芦屋のほうにはそんな気全然ないと思うんだけど、梨香が意識しまくりでやばい。この2人の関係が好きなので、今後も定期的に観測をしていきたい。
 今回は子育て中心なので、あんまりマグロナルドなお仕事してません。しょうがないんだけど、ちょっとさびしいね。アラス・ラムスを抱いているちーちゃんに対するみんなの反応は良かった。店長もいい反応だった。

妄想ジョナさん

2011-11-06 19:20:57 | 小説
妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)
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アスキーメディアワークス


「妄想ジョナさん」西村悠

 呼吸するように妄想を見るせいで、もはや現実と妄想の区別がつかない主人公は、大学生にして依然ぼっちだった。実際、電信柱を現実の女性と勘違いして恋に落ちるようなやばい人間とお近づきになりたい人はそうはいないと思うけど、あまりにもぼっちすぎた。かろうじて砂吹というスナフキンみたいなやつが勝手に部屋にあがりこんできて酒を飲んでいったりするくらいで、それ以外の人間とは没交流だった。
 そんな主人公に、転機が訪れた。妄想の中の巨大うさぎが着ぐるみを脱ぐと、そこには美少女がいて、彼女は自分が主人公の妄想であると告げた上で、彼の妄想癖をとっぱらい、真人間に戻る手助けをしてやるという。
 彼女の名はジョナさん。どっかのファミレスみたいな名前だけど美少女で、世界中のあらゆるものに興味津々で、常に主人公のために考え、行動してくれた。だからというか、いつのまにか、主人公は彼女に恋をしていた。報われぬ恋だと知りながら……。

 妄想型主人公が本気で妄想なヒロインに恋をするとか救いがなさすぎる。
 だってわかるかい? いないんだぜ? どんなに彼女がかわいくても、健気でも、彼女との同棲が楽しかったとしても、でもいないんだよ!
 と、誰もがツッコむはず。主人公の電信柱の妄想に似ている安藤さんとの出会いにヤキモチを焼いてくれたり、学祭のゲーム研の無茶なイベントで共に知恵を絞ってくれたり、今日の夕飯は何にしようかとかいいながら手を繋いで帰ったり。かわいい。たしかにかわいい。一緒にいたい。この先もずっと暮らしていきたい。でも、そんな人はいないのだ。いないのに。
 いないはずのジョナさんとの別れ。これがすごく悲しかった。妄想から解き放たれる=ジョナさんは妄想なのでいなくなるというのがわかっていて、でも主人公にはもう妄想が見えなくなってきていて……。
 一連の流れが素晴らしかった。最後はちょっとあっさりだったかなとは思うけど、でもあれ以上は蛇足かもしれない。きれいな幕引きができて良かった。
 いずれにしろ、超がつくほどのおススメです。絶対に「なんだこの感動」と悔しい気持ちになるはず。是非是非!

レトロゲームマスター渋沢

2011-11-04 07:22:08 | 小説
レトロゲームマスター渋沢 (電撃文庫)
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「レトロゲームマスター渋沢」周防ツカサ

 桜台高校の、今は使われていない旧校舎の一角の、印刷室の奥の四畳半の一室が、不良の渋沢の隠れ家だった。14インチのブラウン管テレビと、昔のゲーム機やソフトを持ち込んで、放課後に遊び倒す。それが彼の楽しみ。
 楽園に、一人の少女が踏み込んできた。彼女の名前は早坂ちひろ。品行方正で真面目なクラス委員長の彼女は、渋沢を改心させようとやって来たはずなのだが、いつのまにかレトロゲーの虜になっていた。塾へ行くまでの2時間、毎日ゲームをするのが日課になった。
 家庭の方針でゲーム機なんかに触らせてもらえたことのなかった彼女は、実に楽しそうにゲームに取り組む。そこは昔のゲームだから数々の理不尽な仕打ちが振り掛かってくるのだけど、そのたびに彼女は悲鳴をあげつつ、でも再びコントローラを握る。その横顔を見るのが大好きな渋沢を師匠と仰ぎ、長く辛いゲーム道を邁進するのだ。

 そんな2人の日常系のお話。
 レトロゲーのタイトル自体は一度も出て来ないのだけど、スペースハリアーとかエキサイトバイクとか、明らかにそれとわかるような書き方をしているので、懐古厨も安心。さすがに古いといってもファミコンくらいまでなので、それ以前のものに関しては出て来ないけど、読者の世代的にも限界というところだろうか。
 いずれにしろ、楽しく読ませてもらった。ファミコンの2コンに向かって叫んだり、カセットの接触面に息を吹きかけたり、嘘テクに騙されたりとか、懐かしすぎた。若い世代のラノベ読みの人たちは、こういうのを読んでどう反応するかわからないけども。面白いんだろうか?
 ストーリー的には、渋沢と委員長の交流がメイン。秋葉や西園寺なんていう女子も途中参戦してくるけども、いなくてもいいと思う。渋沢と委員長「だけ」だからいいんだろうが! と声を大にして言いたい。
 今後は、たぶん委員長の家庭の事情が絡んでくるんじゃないだろうか。どうも厳しいらしいので、放課後の委員長の時間を潰しにきそう。親の目の届かないところで解放されきった状態で遊ぶという経験のない彼女から、渋沢との時間を取り上げそう。
 ……考えたら悲しくなってきた。作者さん、何とかしてください。

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2011-10-30 20:31:41 | 小説
僕は友達が少ない7 (MF文庫J)
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「僕は友達が少ない(7)」平坂読

 小鳩の誕生日も無事に終わって、次はいよいよ学園祭。紆余曲折の末に、映画をとることなった隣人部の面々。 
 意外な才能を発揮した夜空の良脚本をもとに作品を作ろうとするのだが、まず配役で揉めに揉めた。夜空は小鷹と一緒に主役とその親友役を分担したい思惑で、でもそれに納得がいかないメンバーからブーイングの嵐。夜空は必死に、自分と小鷹が幼馴染であることを強調しまくってなんとか乗り切ろうとしたところ(学園を舞台にした友情もので、主人公と親友が幼馴染だったから)、「あんたと小鷹が昔友達だったとか、そんなことはどうでもいいのよ」と星奈に一刀両断。
 いや本当に、今回は夜空さん最低でした。小鷹と2人きりで映画にいったりお茶したりと、部活以外でも頑張っていたのに、最終的にはさまざまなからみから、星奈にあっさりと6馬身ぐらい出し抜かれた。かわいそうすぎる。僕は星奈派なのでいいんだけど……にしてもこれは……。
 それ以外だと、けっこう理科ががんばっていた。いやあ、もともと頭の良く空気を読める娘ではあるのだけど、自分の売り込みどころを見つけた感じ。本当、いい表情してた。もちろん夜空星奈にはかなわないのだろうけど、ぐらっとくるレベルではあった。
 あとは新キャラが2人ほど。一瞬すぎて話にもならなかったけど、次でちゃんと出てくるのかね? 話的には佳境が見えてきたのだけど……。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(上)

2011-10-29 00:23:08 | 小説
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(上) (MF文庫ダ・ヴィンチ)
岡田麿里
メディアファクトリー


「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(上)」岡田麿里

 小学生だったあの頃。僕らは友達だった。町の外れの山の中に秘密基地を作り、「超平和バスターズ」なんて名乗って集まっては遊んでいた。
 西洋人とのクォーターで天真爛漫朗らか少女のめんま。
 整理整頓好きで、万事においてしっかりしていないと気に入らないあなる。
 体が小さくて騒いでるだけのぽっぽ。
 頭も顔も良く、運動神経もあって家柄も良いユキアツ。
 真面目でおとなしく、絵を描くことの好きな鶴子。
 5人はリーダーのじんたんを中心にした花びらのようにそこにあった。じんたんは頭もよくて運動神経もあって、行動がいちいち派手で面白くて、皆から愛され、信頼されていた。
 楽しかったあの頃……。

 だけど今や、6人はバラバラになってしまった。あなるは高校デビューでびっちになった。
 ぽっぽは高校なんていかず、バイトをしては海外を飛び回っている。
 ユキアツは相変わらずスペックが高いまま、しかし常に斜に構え、何事にも嫌味をいわずにはすまないいけ好かない男の子になった。
 鶴子はユキアツと同じ学校に通い、彼女ではないけど常に彼の側にいて、痛々しい彼のことを案じてばかりいる。
 めんまはあの夏に死んだ。山の中の足を滑らせ、帰らぬ人となった。
 そしてじんたんは……あれからひきこもるようになった。外に出る気力がなくなった。一度出ないようになると、世間の目が怖くなった。知人と出会わぬよう、外出するときは変装するようになった。
 僕達は……変わってしまったんだ……。
 
 めんまがじんたんのところへ化けて出たところから話は始まる。
 じんたんは高校生(不登校だけど)になっていて、めんまはあの頃に比べるとちょっと成長しているように見えた。でも彼女は死んでいて、その姿はじんたんにしか見えない。でも彼女はそこにいて、嬉しげに楽しげに、じんたんに話しかけてくる。体は大人で、でもおつむはあの頃のままで。
 自分だけの現実をどう処理すればいいのか、じんたんは思い悩んでいた。自分は狂ってしまったのか。そうでないとして、これからいったいどうすればいいというのか。
 同じクラスのあなるがじんたん宅へプリントを届けに来た。ふと訪れた山の中の秘密基地には外国帰りのぽっぽが住んでいた。道端で、ユキアツと鶴子に出くわした。何かのスイッチが入ったように、奔流のように、過去の人物がじんたんの周りに出現しだした。
「ただねー、たぶん。お願いを叶えてほしいんだと思うよ。めんま!」
 めんまが何を願っているのかもわからないままに、じんたんは再び集まった超平和バスターズたちと共に謎に挑む。めんが何を望んでいるのか。自分たちにはめんまに何ができるのか。何がしたかったのか……。

 というわけで、「あの花」ノベライズ、読みました。
 この作者の岡田なんとかという人は知らないけど、文章の破綻もなく、普通に読めました。もちろんストーリーは知っているので、どきどきとかわくわくはないのだけど、アニメでは語れないような細部のディティールまでが読めるのは良かった。視点変化の多さはアニメ原作のせいだと思うけど、そこだけ落ち着かなくて気に入らなかった。
 相変わらずじんたんはヒッキーで後ろ向きでうざいけども、でも、それだけめんまは彼にとって大事なものだったんだと思うたびにじんわりきます。僕は、僕も強い人間ではないので、彼の気持ちはよくわかります。そんなに簡単に切り替えることのできない想いってあるんだよ。何年経っても、何十年経ったって、忘れられない傷ってある。
 この話は、「じゃあな」の物語なんです。大事なあの娘にきちんとできなかったお別れをするための。そうして再び前を向いて歩いていくための。
 上巻では、ユキアツの例のあれがばれて、めんまの存在を認知させてってところまで描かれています。下巻は当然の買い。もう一度、あの別れのシーンを堪能したいと思っています。

魔法科高校の劣等生(2)

2011-10-26 23:57:11 | 小説
魔法科高校の劣等生〈2〉入学編(下) (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキー・メディアワークス


「魔法科高校の劣等生(2)」佐島勤

 優等生の一科と、落ちこぼれの二科。優劣がはっきりわかるということは、いいことばかりではない。悪いことも当然あって。
 二科生ながらも卓越した戦闘能力とうさんくさい魔法技術を身に着けている司波達也は、風紀委員になってそうそうに剣道部と剣術部の争いに巻き込まれ、これが10数人にも及ぶ武闘派生徒たちとの大乱闘になるも、あっさりと単独で鎮圧。内外にその実力を見せつけた。
 圧倒的な力の差は、一科生から恨みを買い、同じ二科生からも反感を受けることとなった。そしてそれは、魔法を使ったトラップなどの嫌がらせとして、具体的な行動を伴って表れた。
 深雪や周囲の心配をよそに、しかし達也は涼しい顔。もともと他人のことなど信用も期待もしていない彼は、相手の魔法式や行動を予測し、すべての罠をすいすいと回避していく。それがまた嫌味で、恨み妬みの連鎖は繋がっていく。
 そんな折だった、壬生が話しかけてきたのは。彼女は剣道部に所属する剣道小町で、先の剣術部との争いの発端である。達也の実力を買い、仲間にならないかと持ちかけてきた。一科生と二科生の間にある不当な溝を埋めようという彼女は、なんとなんとの女闘士で、しかもその背後には、怪しげな団体の影までもがチラついているのだった……。

 話題のネット小説の下巻。
 相変わらずの達也無双で、最初から最後までなんの危なげもなく敵を打倒していく様が嫌味というか出来レースすぎてカタルシスに欠けた。スカした態度もそうだけど、やっぱりこいつは他人に嫌われる要素の密度が濃すぎる。彼を兄としてではなく一人の男として愛している妹の深雪が匂い消しをしてくれるから見られるものの、そうでなかったら読んでいないかもしれない。それぐらい鼻につく。数多の無双系の主人公の中でもトップクラスにいらつく。
 まあでも、話としては面白かった。まさかの全共闘……といってしまうと語弊があるけど、壬生の背後にいるのはまさしくそういう組織だった。「落ちこぼれが知恵と勇気で優等生を凌駕する話」なんかじゃ全然なかった。タイトルで騙されすぎていた。そしてなるほど、これは熱く面白い。ラストの解決方法がぬるいような気もしたけど、この先シリーズを読んでいこうと思わせてくれた。
 説明過多についても、上巻で魔法部分については説明していたので、本巻はすっきり読めた。次が楽しみ。