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先週土曜夜に参加してきた、標記ディスカッション。
第5回目は、スペインの強さ、国のレベルについて。
※ ※ ※
【質問】
2000年の世界選手権のとき、スペインのような
フットサルをやっていたチームはなかったと思います。
それから2004年、2008年と時間が経つにつれて、
同じような戦術を取れるチームが増えてきたと思う。
そういう中で、情報はインターネットなどを通じて
すぐに広まっていくわけですが、スペインが世界の
トップレベルを維持するために、今後どのような
優位性を持って臨もうとしているのか教えてほしい。
【ホセ・プルピス フットサルタイ代表監督】
まず、私の考えをご説明したいと思う。
スペインとかブラジルには、まだまだ有利な部分は
残されていると思うのだが、彼らにとってここから
先の伸びしろという部分は非常に小さい。
他の代表チームと比べても、残された伸び幅、
向上の余地というのはだいぶ差がある(小さい)。
○
ただ、ある国の代表チームが、フットサルという
競技で成長していくためには、非常に重要な要素
がある。
短期的に他の国がブラジルやスペインに追いつくと
いうのは難しいとは思うが、その重要な要素という
のは、リーグ。リーグのレベルなのだ。
スペインリーグ、ブラジルリーグというのは、
世界最高峰のリーグで、そのリーグの有無こそが
両国と他国の代表チームの差につながっているのだ。
スペインリーグでは、毎試合毎試合が決勝戦だ。
スペインリーグでも非常に点差の開く試合はあるが、
ほぼ、全ての試合が、明日行われる(全日本選手権)
決勝戦、もしくはそれ以上のレベルだ。
非常にレベルの高い、僅差で力の差のないチーム同士が
対戦する試合が、毎試合毎試合、ほぼ毎週末行われる。
○
ひとつ例を挙げると、最近のアジア選手権の最後の試合。
あるアジアの国の代表監督が、試合をした後に私のところに
近寄ってきて言った。
「こんな緊張した、プレッシャーのかかる
試合は今まで経験したことがないよ。」と。
私は笑って、
「でもスペインリーグは、毎週末こうだよ。」と答えたのだ。
選手達も、毎週末ハイプレッシャーの中で試合を経験し、
それに慣れている。それこそが、スペイン、ブラジル両国と
他の国の間に横たわる、非常に大きな違いなのだ。
○
もちろん他の国にも、非常にいいチーム、いい選手というのは
いるし、いい指導者もいる。ただ、選手達は毎週末そういった
環境の中でプレーすることには慣れていない。
例えばポルトガルのリーグはどういう状態なのかというと、
年間4試合くらいしか、非常に厳しい試合というのは存在しない。
スペインリーグにいれば、30試合くらいの同じ厳しさを経験できる。
それが、恐らく一番大きな、違いなのだ。
スペインリーグでは、1位になるほどのチームでも、
もしかしたら明日最下位のチームに負けるかもしれない。
それが、スペインリーグなのです。
○
【ミゲル・ロドリゴ フットサル日本代表監督】
もうひとつ、非常に分かりやすい例があるのですけど、
今、プルピス監督が言ったような部分でしかスペインと
ブラジルは向上の余地がない。
それは何かというと、選手の質です。
選手の質の向上があるかどうか。
例えば日本代表であれば、まだまだ戦術的にも
伸び幅は非常にあると言える。
技術、戦略、メンタリティ、そういったものの
伸び幅がまだまだいっぱい残されている。
○
例えば一つの例として、セルジオ・ガルジェッリ
(前・府中アスレティック監督)の話をしよう。
彼は府中の後、ベトナム代表監督に就任したが、
その頃ベトナムはマレーシアに3-8で負けていた。
セルジオはその後ベトナムに行って、1ヶ月半の
トレーニングで、大差で負けた相手に6-3で
勝ち、初めてのアジア選手権出場を決めた。
それは何をやったかというと、戦術のちょっとした
調整、浸透と、セットプレー。その2つに着手した
だけで、これだけガラッと結果を変えることができた。
○
基本的にはほとんど白紙状態のチームに、
そういったことを伝えて形を作るのであれば、
それによって得られる成果というのは非常に大きい。
そこにこそ、指導者の質、監督の手腕というものが表れる。
なので、日本でも指導者、監督の養成ということが急務だ。
それによって、国内のそれぞれの指導者が見ているチームの
レベルがガーンと、一気に上がる可能性があるからだ。
1回天井に到達すれば、そこから先、チームが違いを
見せていくのは、個々の選手の質ということになる。
○
もう1つ別の例を挙げよう。
11年前のイタリア、ヘスス・ベラスコという監督がいた。
今、スペインでセゴビアの監督をやっているが、
彼はイタリアで何年も監督をやってきた人だ。
スペインではかつて2部リーグの監督をやっていた。
パドマというチームの監督をしていたとき、リーグの
ファーストラウンドで1勝しか挙げていないチームだった。
それが最終的にはプレーオフに進出し、準決勝まで勝ち進んだ。
それは戦術、攻撃・守備両方の戦術を伝え、戦術の
コンセプトを植えつけて、セットプレー、プレスの
かけ方。それをグループ戦術として、皆が理解できる
ようにトレーニングをした。最大限の伸び幅まで持って
くるトレーニングを通じて、準決勝まで進むことが出来た。
○
フットサルというのは、戦術次第で非常に力を伸ばす
ことの出来るスポーツだ。そういうゲームであるからこそ、
白紙状態の選手達、土壌に情報を植えつけていけば伸び幅は
計り知れない。
なので、皆さんのような、フットサルの指導に関わる
皆さんが、いろんなことをきちんと吸収して伝えられる
ようになることが重要なのだ。
今もう日本サッカー協会でも、フットサルの指導者ライセンス
制度が始まっているけれども、今後もっともっと本格的なものも
出来ていくはずだ。指導者向けの著作なども作っていく予定だ。
他にも、学校の体育でフットサルをプレーできるような環境を
作っていくことも重要なのだが、何よりも指導者の皆さんが
いろいろ情報を得て、レベルアップしてもらうことが重要だ。
まさに先ほどの質問にあったように、何年か前と比べると、
どんどんどんどんと同様のレベルにあるチームが増えている。
これはフットサルにとっては嬉しい状況といえる。
○
リーグのあり方についても、プレーオフのように
順位のかかった熱い戦いが続くということが重要だ。
ここで質問したいが、皆さん来季のFリーグで、
名古屋が優勝すると思う人は手を挙げてほしい。
(ほとんどの人が挙手)
...これは何というか、ワクワク感があるだろうか。
それではプレーオフシステムを考えてみよう。
大阪とか町田が、もしかしたらリーグで勝つかも
知れない、と思える人は手を挙げてほしい。
(半分くらいの人が挙手)
もしかしたら、あるかも知れない。
○
だからこういう状況、プルピスさんが先ほど言われた
スペインリーグの生きるか死ぬかのような激しい試合を
たくさんやることは、全体のレベルを上げることにつながる。
今、日本サッカー協会の方でも、検討しているところだ。
育成年代のルールについても、同様に検討しているところだ。
自分としては、こういったことについての修正というか提言、
働きかけをしていくことは、日本代表を率いて結果を残して
いくこと「以上に」(注:強調)重要なことだと思っている。
何故かというと、今ここにいるスタッフの関心事は、
トップチーム、代表チームを強くすること以上に、
育成が大事だと共通して思っているから。
どういう状況が大事かというと、優れた知識を持った指導者
たちが、切磋琢磨して厳しいレベルの試合を作っていくこと。
それが、自ずとレベルを上げていくし、良い環境につながる。
それによって、日本サッカー協会が自分に何億円の報酬を
支払ってくれるのか分からないが、期待しています。(笑)
※ ※ ※
(この稿、終わり)
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同時通訳のお二人に感謝します(-_-;