自宅の「お風呂」と「温泉」の違いとは?
そこで、温泉療法専門医(早坂 信哉)が解説した記事をご紹介します。
記事(2021年11月9日 msnライフスタイル)によると
『◆家のお風呂と温泉の違いは? 温泉にしかない健康効果
飲食店の規制も緩和されるなど、やっと外出できるような雰囲気になってきました。自宅で過ごす時間が長かった分、温泉にでも行ってみたいなと思う方も多いのではないでしょうか?
多くの人々の心を引き付ける温泉ですが、温泉療法専門医としては、温泉には自宅のお風呂にはない2つの魅力があると思います。それは豊富なミネラル分と、温泉ならではの環境です。
▼温泉に含まれる大量のミネラル分「温泉法」という法律では、温泉について定義されています。温泉水1kg当たり1g以上のミネラル成分が含まれていること、という基準です。通常の家庭の湯船には約200kgのお湯が入っていますので、家庭の湯船に換算すると200g以上の物質が溶け込んでいるということになります。
一般的な入浴剤は1回あたり30g程度であることと比べても、この量がいかに多いかがお分かりいただけるかと思います。たくさんのミネラル成分が溶け込んでいる分、水道水の沸かし湯に入浴するのと比べ、体が温まりやすく血流が非常に良くなることが様々な実験からわかっています。
それだけ温泉はただのお湯以上に入浴効果が高いということです。
▼温泉の環境による解放感や感動例えば大自然の中の絶景の露天風呂に入浴すると、自宅では得られないような開放感や感動を覚えます。内風呂であっても、天井の高い浴室の大きな浴槽で入浴すると、とても贅沢な気分を味わえると思います。
実際に大きな浴槽に浸かった場合はリラックスの脳波であるアルファ波が強く現れたという実験結果もあるくらいです。
◆温泉で免疫力が高まるというのは本当か
温泉で免疫力は上がるのでしょうか? この答えは「高い確率でYes」です。今日ほど免疫力が注目される前から、温泉医学の研究者たちは温泉の持つ、免疫力を上げる力に着目して研究をしていました。
例えば、
・北海道登別温泉の研究:ナチュラルキラー細胞の一過性の増加
・北海道国立弟子屈病院の温泉の研究:一部リンパ球の増加
・岡山大学三朝分院の温泉(温泉プール30分、温泉吸入、温泉泥パック):一部リンパ球の増加
・石川県和倉温泉、岐阜県下呂温泉の研究:ナチュラルキラー細胞、一部リンパ球の増加
・大分県湯布院の研究:毎日温泉に入る小学生は、一般小学生と比べて20%風邪を引きにくいとする疫学調査
などが報告されています。
これらの理由として最も考えられるのは、温泉の持つ強い「温熱効果」です。
自宅の沸かし湯でも温熱効果はありますが、温泉にはたくさんのミネラル分が含まれているため、体を温める作用ははるかに強くなっています。 そのため、自宅よりも温泉の方が免疫力を上げる力が強いと考えられています。
また温泉の高い温熱効果は、自宅のお風呂よりも血流の改善を促します。免疫系では、免疫細胞が作られる場所と実際に機能する場所が体内では離れていますが、血流が良くなることで免疫細胞が体内を効率よく循環するようになり、免疫機能が向上すると免疫学では考えられています。
◆温泉地の自然環境も免疫力を高めるのに一効果
また、温泉地の自然環境や、温泉施設そのもののしつらえなども、免疫力によく影響すると考えています。温泉は自然豊かな森の中や、空気のきれいな海岸や山岳にあることも多いです。
例えば森の中の温泉に滞在すれば、知らぬうちに温泉浴だけでなく、同時に森林浴もできていることになります。
森林浴についても多くの医学研究がされており、森林に滞在することで、木々が発散するフィトンチッドというすがすがしい香り成分がナチュラルキラー細胞などの免疫細胞を増加させることが明らかになっています。
また、海岸沿いにある温泉にはタラソテラピー(海岸療法)としての効果もあり、自律神経や気道の調子を整え、免疫力を上げると考えられています。
リラックスするには視覚的な情報もとても重要です。景色の美しい露天風呂、きれいに整えられた落ちついた雰囲気の温泉施設で、広々とした浴槽に入浴すると、それだけで心からほっとくつろぐことができるでしょう。
リラックスし、しっかりとくつろぐことで、ストレスや不安が軽減されれば、免疫力を高めることにもつながります。
◆温泉で免疫力をアップさせる3つのコツ
温泉で免疫力を効率よくアップさせるにはいくつかのコツがあります。
1:適温の湯温にほどよく入る熱すぎる、または冷たすぎるなど、刺激の強すぎる温泉は、免疫力を高める目的では避けたほうがいいかもしれません。
過去の研究結果では、熱すぎたり冷たすぎたりする温泉では、むしろ免疫系は抑制気味になったという報告があります。熱すぎる、冷たすぎるということは、体にはストレスになるためです。
また、長く入り過ぎるのは、体には負荷となって免疫の面でいえば逆効果です。欲張らずに額に汗をかいたら湯船から一旦出るようにしましょう。
2:リラックスできる環境や施設を選ぶ温泉が所在する自然環境にも気をつける必要があります。例えば森の中や海岸沿いにある温泉はより免疫力を高めると考えられるでしょう。また都市部であっても、滞在していてリラックスでき心地が良い温泉施設を選ぶと良いでしょう。
3:温泉地の軽いアクティビティも併用する温泉地に滞在したら、温泉に浸かるだけではなく、例えば温泉地でのウォーキングや周遊観光など軽いアクティビティを併用するといいでしょう。
筆者も調査に参加している環境省の「新・湯治」効果測定調査では、軽いアクティビティに参加した人の方が、ストレスが減ったり疲労が回復するなど、体調が良好になった人の割合が高かったことが報告されています。
免疫力の仕組みは複雑で、その機能を向上させることは一筋縄ではいきません。しかし温泉を上手に使うことによって免疫力は高めていくことができると考えられます。
浴室内ではマスクができませんので、咳をするときはタオルや手ぬぐいで口を覆うなど温泉エチケットが必要ですが、広々とした浴室では 感染症のリスクは取り立てて高いとは考えにくい環境です。
冬に向かって新型コロナの再流行や今年はインフルエンザなども心配されていますが、自分が心地良いと感じる温泉地へ出かけ、欲張りすぎずに温泉を楽しむことは、感染症に負けない体づくりにも有効です。上手にリフレッシュして、心身の健康状態を維持していきましょう。』
あーー温泉に行きたくなて来た。。。