治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

南雲明彦さんとのこと

2015-07-05 07:18:40 | 日記
花風社のHPに新刊情報アップしました。
さっそくご注文いただいた皆様、ありがとうございます。
修行のおともになる暑苦しいポストカードと一緒にお届けいたしますね。

さて、ご注文ともにいただくメッセージを見ていると

1 今まで南雲さんのことは顔と名前くらいしか知らなかった。楽しみ。
2 南雲さんと浅見さんの組み合わせは意外なんだかしっくりなんだか。
3 これを機会に南雲さんの過去の本も買いました!

というご感想をいただいています。
これにお答えするかたちで、そもそも今回の企画に至った経緯をお話しましょう。

まず1。名前と顔しか知らない状態。それは私も数か月前までそうでした。
というか、どっちかというと自分に関係ない人かと思っていました。啓発講演している? そもそも啓発嫌いのワタクシですから。
ただなんとなくツイッターとFBではつながっていたのです。個人的に言葉を交わすことはなかったんですけど、あるとき南雲さんが「愛甲さんと栗本さんに質問する会に行きたかったんだけど日程が合わず残念です」みたいなコメントをくれて、「あらこの人うちの本読んでるの?」と思ったわけです。

「南雲さんは意外と浅見さんと気が合うと思うよ」って教えてくれたのはギョーカイ人です。とはいっても、発達障害支援のギョーカイではなく出版業界の方です。「そうなんだ~」と思い、発言ににわかに注目しはじめました。そうしたら時々ブラック南雲(ブ)になってきついこと言ってました。私が気に入ったのはこれです。

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ブラック南雲発言その1

「ディスレクシアだから本は読めなくても大丈夫」という人がいたら、あまり真剣に話を聞かない方がいいですね。本の方がしっかり悩みにつきあってくれ、解決策を模索してくれます。
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そう。これを読んだとき、この人はギョーカイとも違うのかな、と思いました。ギョーカイだと「本は読めなくても大丈夫」「ディスレクシアの人に本を読めなんて差別」っていう方向に走るでしょ? そして読めない人がいるのをわかってください、とかそっちに行く。でも南雲さんはそうじゃないのかな、と。

そして読者2の方と同じように、私も南雲さんの本を遅ればせながら読みました。
こういうのね。



それまでこの本たちに私が手を出さなかったの、自分でわかります。
タイトルは「社会の理解ガー」だし、表紙はなんとなくタレント本みたいでしょ。いや、版元さんのお仕事にケチをつけるんじゃないですよ。浅見淳子が興味を持つ本ではないというだけ。でも目を引いた事実があります。「僕は、字が読めない。」は2009年出版で、南雲さんではなく作家の方が書いている。そして「LDは僕のID」は2012年出版、南雲さんご自身が書いている。

書字障害でしょ?
でも3年の間に自分で書けるようになったんだなあ、と思いました。
私はプロだからわかります。「LDは僕のID」は若書きのテイストがあるけど、それだけに自分で書いている感がいっぱい。そして内言語が育っている人の文章ですよ。たぶんこの人は自分で自分を鍛えてきたはず。

それにね、意外だったのは「LDは僕のID」には大地本と同じテイストがあったこと。
さっそく愛甲さんに「読んで」と言いました。愛甲さんも「なんか花風社の本みたい」という感想。そうなんです。パッケージにだまされてこの本を手にしていない皆さん、読むといいですよ。とくに大地ファンはね。実は南雲さん、修行系だったんですね。すでに2012年に修行系の本を書いていたんです。

そして今年、まだ寒いころ、初めてお会いしました。

寒い時期に寒い新潟から出てきた南雲さん。でも暑苦しかったですねえ。(ほめてます)

最初に会った時からお酒をいっぱい飲み、立派な酔っ払いにして新潟に送り返してしまいました。そしてそのうち、南雲さんが栗本さんに会いたいという希望を持っているのを知りました。そこで栗本さんと画伯に会ってもらうことにしました。

作家さんが書いた「僕は、字が読めない。」の方読むとわかりますが、読字障害と書字障害で、でもそれを知らずに二次障害になって、つらいつらい青春でした。ご家族もつらかったと思います。十七歳でひきこもって、同じ境遇で高齢ひきこもりになっている人も世の中には多いはず。だからこそ「これからの子どもたちに同じ思いをさせたくない」と今も講演や相談の活動を続けているわけです、南雲さんは。

一方で私は南雲さんのつらい青春時代について知っても「ああ、これからの子どもたちは同じ思いをしなくてすむなあ」と考えてしまいました。なぜなら今は「発達障害は治りますか?」があるし、黄色本も芋本もある。ラクになれる手段がいっぱいあるからです。十数年前の南雲家に花風社の本があればよかったのになあ、と思いました。

そんなこんなで

花風社の読者が今まで南雲さんの本を読んだことがないのも理解できるし、今度の組み合わせを意外に思うかもしれない、っていうのもわかります。
でも意外な組み合わせだからこそ、面白い本になっていますよ。

南雲さんは学習障害という一次障害にも、うつや強迫性障害という二次障害にも、真っ向から逃げずに立ち向かってきた人です。でもそのときに、栗本さんみたいな人と出会えていたらどんなによかっただろう、という思いがあり、それを子どもたちに届けたいと本を作ることになったのですよ。

栗本さんと一緒に立ち会ってもらった画伯には、今回アイコンを二種類作ってもらいました。普通バージョンの南雲さんとキラキラバージョンの南雲さんです。
南雲さんは決め決めのセリフを本の中でいっぱい吐いています(ブラック発言を含む)。そのときにはアイコンの目が光ります。

そんな仕掛けがしてあります。どうぞお楽しみに。

それと、脱がせても面白い装丁になっています。かわいい、っていうより面白い。デザイナーさんが今度の本のコンセプトをよくわかってくれてるなあ、と感心しましたね。

でも立ち読みで脱がさないでね。
ちゃんとお金を払ってから脱がしてくださいね。

詳細はHPをごらんください。
目次ものってます。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
注文させていただきました。 (nonmama)
2015-07-05 10:03:40
昨日本を注文させていただきました。届くのがとても楽しみです。息子は発達障害と診断されて今月で10年です。息子と同じ歳の大地くんの本をいろいろな思いで数年前に読んだことを思い出します。親が必死になることは当たり前ですが、それに着いてきた息子も修行系だったんだと今は思います。3年頑張って息子も字を書けるようになりました。新刊を読むのを楽しみにしております。学校の先生にもお渡ししたいと思います。
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子どもたちのお兄さん (浅見淳子)
2015-07-06 10:51:13
nonmamaさん、ようこそ。
私がこの本を作りながら思い浮かべた子どもたちの中には、もちろんnon君も入っています。私は修行系の子どもたちのお兄さん的存在になってもらえるなあ、と南雲さんに期待しています。字を書けない子には、書けるようにしてあげるのが支援ですよね。

またお越しくださいませ。
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