壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

妙義山

2011年08月30日 00時00分14秒 | Weblog
          妙義山
        立去ル事一里眉毛に秋の峰寒し   蕪 村

 上の句が非常に長くなり、かつ、漢語調で表現されている。けれども言葉そのものは漢語ではない。漢語調によって、全体に漢詩的な風趣が添えられ、それが南画的奇峰の打ち並んだ妙義山の実景に適合している。

 「立去ル事一里」も、麓を曳かずに屹立している妙義山の実状をあらわしている。直下にあった時には、山の全貌は眺め渡せなかったのである。
 「眉毛に」は、いわゆる「眉毛に迫って」であって、「打ち仰ぐ」気持がこめられている。

 季語は「秋の峰」で秋。

    「妙義山の麓から一里ほど歩み離れて振り返れば、己の眉より高く
     全貌が眺められる。晩秋の空に峰々が堂々とそびえ立っているが、
     いかにも寒々としたありさまである」


      がりがりの人ゐて秋の妙義山     季 己