七夕や秋を定むる夜のはじめ 芭 蕉
『赤冊子草稿』によると、野童亭での吟となっている。そうだとすれば、この家にあって、七夕の夜の気分を、十分に味わい得た、という挨拶がこめられていることになる。
この句は、七夕についての古来の情趣から一歩出て、七夕の季節の感じに直接ふみこんでゆき、昼はまだ残暑がきびしいが、夜に入ると一段とはっきり定まってくる秋意を、確かに把握した発想である。
芭蕉は、「はじめの夜」「夜のはじめ」の二案について迷っていた。『三冊子』によれば、
「折々吟じ調べて、数日の後に」「究(きわま)り侍る」
ということであった。この態度は、物の微に穿(うが)ち入る芭蕉らしさを見てとるべき好資料だと思う。
「秋を定むる」は、本格的な秋の気分を、はっきり感じさせるの意。
季語は「七夕」で秋。「七夕」というものの季節感をよく見定めている。
「七夕の夜は、天の川も一段と冴えて、秋になったことをはっきりと
感じさせるその第一夜である」
夜の秋の数珠お不動へ戻しけり 季 己
『赤冊子草稿』によると、野童亭での吟となっている。そうだとすれば、この家にあって、七夕の夜の気分を、十分に味わい得た、という挨拶がこめられていることになる。
この句は、七夕についての古来の情趣から一歩出て、七夕の季節の感じに直接ふみこんでゆき、昼はまだ残暑がきびしいが、夜に入ると一段とはっきり定まってくる秋意を、確かに把握した発想である。
芭蕉は、「はじめの夜」「夜のはじめ」の二案について迷っていた。『三冊子』によれば、
「折々吟じ調べて、数日の後に」「究(きわま)り侍る」
ということであった。この態度は、物の微に穿(うが)ち入る芭蕉らしさを見てとるべき好資料だと思う。
「秋を定むる」は、本格的な秋の気分を、はっきり感じさせるの意。
季語は「七夕」で秋。「七夕」というものの季節感をよく見定めている。
「七夕の夜は、天の川も一段と冴えて、秋になったことをはっきりと
感じさせるその第一夜である」
夜の秋の数珠お不動へ戻しけり 季 己