壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

詠むる

2011年08月26日 00時05分35秒 | Weblog
        詠むるや江戸にはまれな山の月     桃 青

 「詠(なが)むる」は、つくづくと眺める意。
 「山の月」といったのは、伊賀山中の月を指したもの。

 平凡で何の奇もない句である。ただ、「江戸」に「穢土(えど)=けがれた国土。この世」が掛けられており、「江戸にはまれな」というあたりに、談林的な発想をうかがうことができる。
 『蕉翁全伝』に、「桑名氏何某ノ催ニ応ジ、渡部氏ノ方ニ会あり」として、この句が掲出されている。延宝四年(1676)帰郷の時の作という。

 季語は「月」で秋。

    「江戸を遠く離れ、久方ぶりに故郷へ帰ってみると、何もかも物珍しい感が深い。
     折しもこの世ならぬ清らかな月が山の上に昇ったが、これもまた人家の混み合
     うほこりっぽい江戸とは違った趣で、つくづくと見守られることだ」


      ちぎり絵のやうな蝶来て処暑すぎし     季 己