壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

駒迎へ

2011年08月24日 00時19分28秒 | Weblog
        町医師や屋敷方より駒迎へ     桃 青(芭蕉)

 駒迎えに、晴の召し出しの感じを生かして詠んだものである。由緒深い禁中の行事を、市民生活に引き下ろしたところに起こる距離感におかしみがあったのである。そしてそこに、芭蕉における談林的なものの芽生えも認められる。

 「町医師」は、町の開業医。お抱え医師に対し、地位が低かった。
 「駒迎へ」は、駒牽(ひ)きのとき、諸国から貢進(こうしん)する駒を左右の馬寮(めりょう)の官人が、近江国逢坂の関まで出迎えたこと。駒牽きは、八月十五日(のちに十六日)諸国から貢進する駒を、天子が紫宸殿(ししんでん)または仁寿殿(じじゅうでん)でご覧になった儀式。御料馬を決定し、式後、駒を公卿に賜るのが慣例であった。

 季語は「駒迎へ」で秋。

    「町医師のもとへ大名とか旗本とかいう屋敷方(やしきがた)から、
     馬を差し向けて迎えが来た。まさに“駒迎え”である。町医師に
     とって、これは、禁中から召され駒迎えを受ける駒に比すべき名
     誉なことである」


      少年の心の怒りか雲の峰     季 己