壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

清水

2011年08月21日 00時10分48秒 | Weblog
        石工の鑿冷したる清水かな     蕪 村

 この「石工(いしきり)」は、「石切人夫」のことで、したがって場所は、石切場と解するのが妥当であろう。また、装飾化されて表現されているが、
        水晶の山路わけゆく清水哉     蕪 村
 の句があるので、切り出されている石は、肌のなめらかな純白のもののような気がする。さらに
        石切の飛火流るゝしみづ哉     蕪 村
 の句もあるので、石工が仕事をしている身近に、清水がたたえられていると想像できる。

 「鑿(のみ)」は、石工(いしく)が石を細工する道具。たがね。

 季語は「清水」で夏。清水は、自然に湧く澄明の水。たたえているもの、流れているもの両方をいう。

    「石切場のすぐ近くに、清水がたたえられている。日盛りではあり硬い
     石を刻むので、鑿が火照ってくると見えて、一人の石工が仕事の手を
     止め、清水へ立ち寄ると鑿をどっぷりとその中に浸した。澄みきった
     水中、石床の上に寝かされている鑿の刃はきらきら光り、いかにも冷
     たそうに気持ちよさそうである」


      夏雲の先争はず流れゆく     季 己