雨の日や世間の秋を堺町 桃 青
「堺町(さかいちょう)」という名を掛詞的に生かしたところに、談林的な発想があった。そのような遊びの間隙に、実際の事象を感合してゆく気分がおのずとあらわれており、貞門の名辞的発想とは性格を異にしている。
「堺町」は、江戸の盛り場の一つ。今の蠣殻(かきがら)町の北、芳(よし)町に近いあたり。はじめ遊里、後には芝居町として繁盛した。ここでは、「秋を」をうけて「堺」に境界線を画している意を掛けて用いている。
秋の雑の句。「秋」を、侘びしさをさそうという前提のもとに扱っている。
「秋雨がしとしとと降って、世間一体は沈んだ気分に閉ざされている日も、
この堺町は、外のそうした世間とは打って変わって、別世界のように賑
わい栄えている。堺町の名にふさわしく、まったく世間の秋と一線を画
した世界だ」
ゆく夏のしづかなる色白湯にあり 季 己
「堺町(さかいちょう)」という名を掛詞的に生かしたところに、談林的な発想があった。そのような遊びの間隙に、実際の事象を感合してゆく気分がおのずとあらわれており、貞門の名辞的発想とは性格を異にしている。
「堺町」は、江戸の盛り場の一つ。今の蠣殻(かきがら)町の北、芳(よし)町に近いあたり。はじめ遊里、後には芝居町として繁盛した。ここでは、「秋を」をうけて「堺」に境界線を画している意を掛けて用いている。
秋の雑の句。「秋」を、侘びしさをさそうという前提のもとに扱っている。
「秋雨がしとしとと降って、世間一体は沈んだ気分に閉ざされている日も、
この堺町は、外のそうした世間とは打って変わって、別世界のように賑
わい栄えている。堺町の名にふさわしく、まったく世間の秋と一線を画
した世界だ」
ゆく夏のしづかなる色白湯にあり 季 己