北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんの父滋さんが亡くなった。40年以上、滋さんと二人三脚でめぐみさんなど17名の被害者を返すよう活動を続けてきた妻早紀江さん(84)は大きな喪失感を抱いているとのことだ。
今年2月、拉致被害者の有本恵子さんの母嘉代子さんが94歳でなくなり、被害者の親は、恵子さんの父有本明弘さん(91)と早紀江さんの2人になった。
関係者は、何としてもめぐみさんを早紀江さんの手元に戻してやりたいと言い、もちろん、有本さんについても同じだろう。
横田滋さんの死去に接し、安倍晋三首相は、「断腸の思いだ。本当に申し訳ない思いでいっぱいだ」と述べた。
安倍首相は、北朝鮮による拉致問題を解決することを自身の政治の信条とし、それを訴えて首相の地位に就いたと言っても過言ではない。
2002年の小泉純一郎首相がピョンヤンに赴き、5人の被害者の帰国を実現した際には、副官房長官として首相に随行した。
しかし、安倍氏が第一次、第2次と約8年7カ月首相を務め、2回目から今日まで憲政史上最長の首相となり充分時間があったのにも関わらず、拉致問題は一向に進展しないばかりか、むしろ後退しているのが実情だ。
最も、解決に向け接近したと思われるのが、2014年5月に日本と北朝鮮の政府間協議で確認された「ストックホルム合意」だが、これもその後の日朝関係の悪化により反故にされている。
安倍首相の北朝鮮政策は、ずっと圧力をかける手法が多く、先の米朝首脳会談後は、交渉は無条件でよいと伝え軟化政策に変わっており、それが逆に北朝鮮に甘く見られる結果を招いている。
とにかく、安倍首相は北朝鮮との接触もままならない状態の中で、先にはアメリカのトランプ大統領に仲立ちを懇請せざるを得ないという有様だ。
このままでは、来年9月に任期を迎える安倍首相にとって、最早残された時間はそれほど多くはない。
せめて次期内閣に引き継ぐまで、交渉再開のきっかけだけは作っておかなければならない。それがせめてもの故横田滋さんらへの償いになるだろう。「関連:6月6日」