7月23日、中国の浙江省温州で高速鉄道の列車が追突、死者43名、負傷者210名を出すと言う大惨事になった。事故は前を走っていた列車が雷のため停車したところに後続の列車が追突したという。後続列車の自動制御装置が稼働しなかったということだ。
中国の高速鉄度は、日本の新幹線やドイツなど複数国の技術に、中国独自の技術を加えて作ったもので、時速300キロ以上の早さが売り物になっているとのことだ。
JR関係者によると、中国の高速鉄道で日本の技術が採用されているのは車両だけで、信号などの運行システムは中国独自のものが使われているという。
この関係者は「パンタグラフの損傷など車両自体の問題でなければ、運行システムの不具合の可能性がある。衝突であったとすれば、車両ではなく運行システム上のトラブルとしか考えられない」と指摘する。
日本の新幹線の場合、輸送指令室による制御に加え、車両同士が一定の距離以上に近づかないために幾重もの対策が講じられている。「他に考えられるとすれば、レールなど構造物の問題もありうる。日本やドイツなど多くの国の技術の寄せ集めで作ってあるため、何が原因か解明するのは容易ではないだろう」と話す。
一方、国内外の鉄道に詳しい専門家によると、中国の高速鉄道では一つの路線に異なる方式の信号システムが使われている場所があるという。
この専門家は「列車同士が衝突や追突をしないため、一定の区間にほかの列車を入れないというのが世界共通の鉄道の安全の原則。今回の事故は、信号や制御システムに何らかのトラブルが起きた可能性がある」と指摘。複数のシステムの制御が適切だったかどうかもポイントとみる。
中国は、高速鉄道技術の特許をアメリカなどに申請する予定とのことだが、今回の事故で特許申請に大きな影響が出ることは間違いない。
また、消防隊や軍など救援隊が24日夕までに大破した車両の一部を重機で現場に掘った穴に埋めてしまうという奇異な行動に出た。
インターネット上では「車内には生存者がおり、遺体、遺留品もあるかもしれないのに、どうして急いで埋めたのか。最後まで探したのか」と反発する声が渦巻いている。
破損車両は事故原因の究明にも欠かせないが、24日深夜に温州で記者会見した中国鉄道省の王勇平報道官は、運転席など車両の先頭部分を地中に埋めたことを認めた上で、「危険回避の緊急措置だった」と反論した。車両落下地点の農地は激しい雷雨でぬかるみになっており、救援隊や車両を現場に入れるために必要な措置だったと釈明した。
しかし、こうした説明に対し、ネット上では「技術的な問題が引き起こした人災としての事故原因を隠蔽するためではないか」「安全性の向上のためにも事故車両は保存して徹底研究すべきだ」などとする声であふれている。ネットユーザーは当局の事故処理への疑念を深めているようだ。 事故車両は24日夕までにすべて撤去された。
「写真:脱線し高架から落下した高速鉄道の車両・朝日」